ESSEonlineで2024年4月に公開された記事のなかから、ランキングTOP10入りした記事のひとつを紹介します。

画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。年金暮らしの小笠原さんは、自他ともにみとめる節約家で、1日1000円というルールで生活をしています。そんな小笠原さんの節約を意識した食事について紹介します。

※記事の初出は2024年4月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

節約家が食べる「粉もの」レシピ

お好み焼きやもんじゃ焼き、パンケーキ、クレープにガレットなど、「粉もの」料理やスナックは人気ですね。だいたいが卵や乳製品が入っています。節約家の私も朝に「粉もの」を食べることもありますが、卵も牛乳も入れない、安価な「粉焼き」をよくつくります。なかでも、薄力粉やてんぷら粉などよりは全粒粉が好きで、粒子の荒い粉を水で溶いて焼くのが好きです。ふくらみがない点では、ニラの入らないチジミに近いかとも思いますが、味つけもしない点が風変りだと思います。

「えー? まずそー」。だいたいの方がそう思われるかもしれません。粉の素朴な味が私は好きなのです。粉には深ーいところに味わいがあると思っています。

これを時々ご飯代わりに、そう、ナンのように食べる「粉焼き」が好物です。バターが入っていると風味も口当たりもまろやかになるし、栄養価も高めますが…なにしろ高価です。私はむしろこのモソモソして食べにくい粉焼きの、「手ごわい」生地の食感を、楽しみたいのです。

パンをほとんど買わなくなった理由

市販のパンでも、白くて柔らかい日本の食パンではなく、黒くて固いドイツ式パンが、私の絶対的好みです。「食は脳にあり、食は想像にあり」とは自説ですが、『アルプスの少女ハイジ』にでもなったような気分になれるからかもしれません。ハイジは、焼きたてのふわふわパンをペーターと一緒に牧草地で食べたそうですが、小麦粉よりライ麦や雑穀の生産が土地柄なら、実際は黒パンのことが多かったことでしょう。

近頃、新しいパン屋に行くと、バターたっぷりのデニッシュタイプが多く、しかも一個の値段がどんどん高くなっていくので、節約家の私はほとんどパンを買わなくなってしまいました。それで「小笠原式粉焼き」一筋になっていったのです。

ところで全粒粉焼きにしても、黒(ライ麦)パンにしても、私はオリーブオイルをつけて食べることがあります。オリーブオイルもわが家の経済状況からいえば高価ですが、ほかの油は一切使わず、すべてオリーブオイルに統一してシンプル化を図りつつ、体を気遣っているつもりです。シンプルイズベストです。

それでも主食はお米を食べるほうが安上がりに

とは言うものの、普段の私はご飯が主食です。それはパン食と米食を比較した場合の調査結果をうけて、お米を日常食にするのが、いちばん経済的と知ったからです。その米食に比べれば、全粒粉は高価です。薄力粉などよりも高いので、じつはぜいたく品です。ですから「粉焼き」も、毎日はできません。

それにしてもお米だって、決して安いものではありません。そこで、麦を半分混ぜることにしています。昨今注目の「もち麦」ではありません。できれば「もち麦」も試したいけれど、「押し麦」は、キロ約300円に対し、「もち麦」はほぼ倍額だからです。

甘みもない麦を半分も白米に混ぜるというのは、口当たりがそれほどよくなく、好みがわかれるところです。私の場合は、「麦めし」が、絶品「麦とろ」の食材だと想像し、麦ごはんもおつなご飯ものだと思って食しています。「食は想像にあり」です。

それに「押し麦」にも慣れると、やはり「手ごわい」ところに愛着を覚えるようになるものです。五穀米などが出回るようになったのも、栄養価以外に、柔な食感より、手堅い味わいがあるからではないでしょうか。

このところのマイブームご飯は、「ゴボウご飯」や「昆布ご飯」や「ショウガご飯」といった混ぜご飯。麦風味を緩和するのではなく、麦めしの「渋さ」を強調したいゆえに混ぜ込んでいます。

献立は前日に決めておく

ところで、そうした献立は前日に立てておくのが私の決まりです。「食は脳にあり」ですから、栄養を重点的に考えたメニューを抜かりなくメモして、毎晩調理台の上に置いて寝ます。翌朝、それを見てササッと食事を用意すれば、寝ぼけていてもきちんとした食事が採れると思います。昼食も迷うことがありません。

メモは高齢化した私の、大切な伴侶です。買い物にいくときもメモを準備し、それ以外のものは買わないよう、メモを見ながら少しばかりの商品を、一服の清涼剤のように求めて時を満喫するのです。