子どもが独立して家族の人数が減ったり、生活スタイルが変化したりすると、家の住み替えを検討する人も少なくありません。61歳の金子敦子さんは、23年前に郊外の88平米のマンションから都心の52平米のマンションに住み替え。今も、夫と20代の娘と家族3人で暮らしています。金子さんにコンパクトに快適に過ごす工夫と、住み慣れた家のリフォームについて聞きました。

「ないと困る」ものはなかった

コンパクトなマンションへの住み替えを機に、多くのものを手放しました。ベッドやタンス、天井まで届くような本棚などの家具だけでなく、ひな飾りや大きな羽子板、お客様用の布団や器などの出番が少ないものも譲ったり、処分したり。

【写真】自分で塗ったカラフルなドア

初めは「ないと困るかな」と思っていましたが、まったく問題ありませんでした。本は好きなものだけ手元に残して、できるだけ図書館を利用すればいいし、家族が泊まりに来たらホテルに泊まってもらえばいい。それ以来、暮らしているなかで必要ないと思ったら、どんどん手放すようになりました。

車も、家電も手放して問題ない

引っ越しで手放したものといえば、車もそのひとつ。都心に住んでいるとたいていの場所は徒歩や電車で行けるし、駐車場代や維持費もかさみます。娘が小さいころは車が必要な機会が多かったので、カーシェアリングサービスを利用していましたが、今はそれもやめました。春は桃の花を見に、夏は桃狩り、秋はぶどう狩りと、年3回、山梨県に遊びに行くのが恒例なのですが、レンタカーを借りています。

家電で手放したのはプリンター。インクをストックしたり、替えたりするわずらわしさから解放されました。今、必要なときはコンビニのネットプリントを利用します。トースターやコーヒーメーカーも処分。パンは魚焼きグリルで焼けばいいし、コーヒーは手でいれるほうが、楽しくておいしいです。

「あって当たり前」と思わないこと

ほかになくしたのは、ごみ箱。以前は洗面所や、クローゼットのある部屋に置いていましたが、今は1か所だけ。使っていなかった箱をふたつ廊下に並べて、燃えるごみと、プラスチックごみを分けています。ごみが出たらそこに捨てに行けばいいだけだし、各部屋から回収する手間も省けます。

家族はだれも履かないし、来客も少ないので、スリッパもなしに。トイレにも置いていませんが、掃除がしやすくて、見た目もすっきり。また、乾きが遅いバスタオルもやめてフェイスタオルだけにしたら、洗濯物の量も手間も、収納スペースも大幅に減りました。

「あって当たり前」にとらわれずになくしてみると、不便どころか、気持ちも暮らしも楽になるし、節約につながることも。今は固定電話をなくすかどうか検討中です。

収入があるうちに改装して住み慣れた家に変化を

以前からキッチンの使いづらさや、うす汚れた壁や床が掃除してもきれいにならないのが気になっていました。考えてみれば、住み始めて23年も経てば古くなるのは当たり前。家族で「年金生活になったら思いきれなくなるだろうし、やるならまだ収入がある今のうちに」「どうせやるなら少しでも早いほうがいいね」と話し合って、3年前に、ほぼ家じゅうをリノベーションしました。

知識がなかったので、マンションリノベーションの本を参考に、さまざまなショールームを回りました。実際に見たり、触れたりするとイメージがわくのでおすすめです。

ただ、壁紙やタイルなど、ひとつひとつ選ぶと思いのほか時間が必要で、やると決めてから完成まで1年ほどかかりました。悩みすぎて眠れなくなったこともあったほど(笑)。

床は床暖房対応のフローリング材に張り替え。キッチンと洗面所、トイレはグレーのフロアタイルにしました。

洗面所の壁は意見が割れたけれど、結局、私の希望で黄色に。「やさしい色だね」と好評です。

オールステンレスのキッチンカウンターも初めは反対されましたが、今は家族の大のお気に入りに。

よくお客様にびっくりされるのがドアの色。これは全部私が塗りました。8年前にリビングダイニングの壁を塗ってから、楽しさに目覚めて。まわりにシートや養生テープを貼ったり、ペンキがのるようにやすりをかけたり、2〜3回重ね塗りしたりと意外と手間はかかりますが、その分、仕上がったときの喜びもひとしお。家族も喜んでくれました。

お金はかかりましたが、毎日過ごす場なので満足度のほうが大切。これからも少しずつ手を加えながら、気持ちよく暮らしたいです。