人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている54歳のRitaさんは、SNSでも留学生活の様子を紹介していることで人気です。そんなRitaさんが感じた、スペインならではの魅力的なサービスについて紹介してもらいました。

美術館やコンサートの無料開放や低価格の席がある

日本からスペインへやって来た2年前。生活環境も販売しているものも日本を基準に考えてしまい、比較をすることが多々ありました。そんなスペインで暮らして、とくに日本では経験できない大きな魅力について紹介します。

スペインには数多くの美術館・博物館がありますが、ほとんどの施設では無料で入館できる時間帯があります。毎週月曜日の18時以降、毎週日曜日の午後など、市民も観光客も自由に出入りできるよう解放されているのがこの時間帯です。その時間になると、長蛇の列ができることもありますが、見たい場所がいくつもあるからこそ、入館料10〜15ユーロ(1670〜2505円)が無料になるのはうれしいサービスですよね。

また、オペラやフラメンコなどが大劇場で開催される際は、ホールの後部席には低価格の席が用意されていることが多いです。たとえばVIP席が3万円前後でも、後部席は数千円で購入が可能。こちらは歌劇や舞踏を学ぶ学生たちがお財布を気にせずに見られるように配慮された席と聞いています。ステージよりずいぶん遠い距離になりますが、一般客でも購入は可能です。

入りやすいリサイクル店がたくさんある

マドリードの街を歩くとリサイクル店を頻繁に見かけます。店舗が譲り受けた古着やアクセサリーなどが販売されていますが、とてもきれいに陳列され、見慣れたメーカーや新品同様のものもあり目移りします。

1着2〜15ユーロ程度(335〜2500円程)。サイズも色柄も豊富で、幅広い年齢層の人たちが出入りし、「あのブランドは若い人たちが入るお店だから」といった遠慮もいりません。また店舗内にはリサイクルボックスも配置され、こちらも常にあふれている状態。スペインの人達も留学生仲間も、再利用が当たり前の日常になっています。

スーパーや野菜や果物を量り売りで購入できる

大型スーパーでも小売店でも、野菜や果物は1個単位で量り売りされています。売場近くにある“量り”に買いたいものを乗せ、商品に提示されている番号を入力するとバーコードつきのシールが印刷されます。そのシールを商品または持ち帰り用のビニールに貼り、レジへ行けば会計もあっという間。

ゴロゴロと山積みされた棚から好きな大きさや好きな鮮度を選ぶことができるので、今日使いたいから柔らかめのトマト、家にまだ少し在庫があるから小さめのジャガイモなど、用途に合わせてひとつずつ選べることもうれしいです。

スーパーには自由に使えるパンのカット機がある

大型スーパーによくあるのがパンのカット機です。バケット型でも丸型でも買いたいパンを自分で機械に入れ、カット幅を選ぶときれいに仕上がります。自宅で散らかることもないのでうれしいサービスです。

売場近くには使い捨てのビニール手袋やあき袋も置かれ、セルフサービスが徹底されています。大きめのパンを買う人はほとんどの人が利用していて、とても便利に感じます。

テラス席のお店がたくさんあって開放的

年間の日照時間が約3000時間といわれるスペイン。澄んだ青空の日が多く、どのレストランも屋外の席が大人気です。歩道に隙間があればテーブル・椅子が用意され、店内の席はガラガラなのにテラス席ばかりが混雑しています。

陽が出ているから、風が気持ちいいから、そんなふうに常に自然の中にいるのが当たり前で、日焼けも排気ガスも誰も気にしていません。陽射しを浴びると不思議に気持ちが前向きになり、太陽の大切さを改めて感じます。夏は24:00頃までテラス席が混雑しているのもスペインらしい風景です。

スペインは人との距離が近くて温かさがある

最後になりますが、スペインは人の距離が独特に感じます。近所でも、レストランで隣になった人とも、街で目が合った人とも、とくに知り合いではないのに、HOLA(こんにちは)と挨拶を交わすのがスペインの日常。

また、道で転んだときには一気に人が集まり「大丈夫?」「痛い?」「どこ行くの?」と声をかけてくれたり、駅の階段下でスーツケースを運んでいると必ず「上まで運ぶよ任せて!」と助けてくれます。衣服店で洋服を見比べていると真横の人が「あなたはこっちの色の方がいいわよ!」ということなんかも。国籍も年齢も関係なく距離が近く、その人懐っこさは心を明るくする不思議な力があります。

時代の変化とともに、新しいものやシステムが取り入れられ、また、人との距離もつかず離れずが礼儀のように思われることが多くなりました。でもスペインに住んで感じる魅力は、変わって欲しくない人情が残っていることです。他人の困りごとも決して見逃さず、みんなが近づいて騒いでくれる光景に出会うたび、スペインの“当たり前”に、どこかホッとする気持ちがします。