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世のハイスペックな男女は、一流企業に勤めてバリバリ稼ぐ。何も苦労もせずに働き、華やかな印象だ。

だが、そんな一流企業を辞める人も多く存在する。では、なぜ彼らは退職という道を選んだのだろうか?

そこにはその業界、その企業に勤めた人にしかわからない、光と闇が広がっていた。

Vol.6では、国内の大手食品メーカーを取り上げる。

同業界は食という生活必需品を扱うため、不況に強いといわれる。有名企業、老舗メーカーも多く、就活生からは“安定した就職先”として人気を集めているが…。

その実態は、どうなっているのだろうか?

取材・文/風間文子

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「外科医は親の死に目に会えると思うな」覚悟を決めて消化器外科を選んだが、現実は予想を超えて…




【今回の取材対象者】
名前:工藤七苗さん(仮名、34歳)
職歴:大手菓子メーカー(11年)⇒健康食品メーカー
当時の年収:700万円
最終学歴:MARCH



老舗の大手食品メーカーに就職した結果…


「なんで私は、毎日のように塾に通うの?」

七苗さんが小学生の頃に、母に投げかけた質問だ。

「なんでって…。お母さんは、あなたに幸せになってほしいの。いい大学に入れば大手企業に就職できる。そうすればあなたの人生は安泰よ」

母は、笑顔でそう答えたという。

25年も前の話だが、工藤七苗さんは受験に熱心な母親の影響を受け、将来誰もが知る一流企業に就職することが“勝ち組”の条件なのだと考えるようになった。

母親が勧める中高一貫校を経て、大学はMARCHに進んだ。

大学では経済学部に在籍し、ゼミでは金融系分野を学んだが、いざ就職活動が始まると、金融業界とは無縁の業種を探していた。

「大学で同じゼミだった同級生はメガバンクや損保、証券会社などを志望するなか、私は金融の仕事に興味が持てなくて…」

そこで関心を抱いたのが食品メーカーだった。

「食品は子どもから大人まで、誰もが口にする。商品によっては家族や友人との思い出の味となり、次の世代に受け継がれていく。それって夢があるし、社会にも貢献できると思ったんです。

業界には消費者のためにより良い商品を提供したい、そんな志の高い人たちが多くいて、自分にとっても刺激になるのではという期待もありました」

そして彼女は東証プライム上場の、それこそ誰もが知る、歴史ある大手食品メーカーに新卒で入社した。それには母親も喜んだという。

財務省の法人企業統計調査結果によると、2008年からの食品メーカー等、食料品製造業の売上高営業利益率(本業による収益力や経営効率の良し悪しを判断する指標)は緩やかな上昇傾向にあり、コロナ禍で一時減少するものの、持ち直している。

直近では原材料高騰によるコスト増の影響が懸念されたものの、たいした問題ではなかったようだ。

また『日本食糧新聞』(2024年2月28日掲載)によると、24年3月期の第3四半期決算で、上場大手食品メーカー30社のうち28社が営業増益で着地する見通し。通期では過去最高益を見込むメーカーも相次ぐと報じている。

“安定の食品メーカー”は健在だった。

一方、七苗さんは新卒で入社した食品メーカーを昨年末に退職していた。勤続11年、そこで退職を決断した真相に迫る。

なぜ、11年も勤めた食品メーカーを辞めたのか!?

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