ジェットスター・ジャパンは顧客同士の縁結びイベントを行った過去がある。労使関係の縁結びのできる時は来るのだろうか

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 ジェットスター・ジャパンのパイロットと客室乗務員で組織される労働組合「ジェットスター クルー アソシエーション(JCA)」と会社の労使交渉は、ストライキに発展するなど、両者の主張の一部は解決に至らず平行線をたどった。
 コロナ禍で疲弊した航空業界では収束とともに、航空旅客が予想以上に伸び、職員のマンパワーが追い付かない事例も発生していた。そのような環境の中、残業代の一部未払いという事象(※1)を残したのがストライキを伴った2023年末の労使闘争だった。(※1 残業代の一部未払いはシステムの不具合によるものと、後述のジェットスター・ジャパン「記者レク」で説明があった。2024年4月20日編集部追記 記事公開時、「職員のワークロードが高くなり、残業代の一部未払い〜」と記述しましたが、職員のワークロードの高さと残業代の一部未払いに因果関係は認められないため、削除しました。2024年4月23日編集部追記)

 ストライキの突入で始まった年始繁忙期であったが、2024年元日の能登半島大地震の影響を考慮し、組合は翌日にストを中止した。それから3か月に満たない3月下旬。今度は、組合員1名に対する会社側の懲戒処分通知(※2)が引き金で、再度ストライキを実施すると組合は会社に申し入れた。実際はどのような状況であったのか。以下に、経緯、現状、そして解決に向けた取り組み方とライバル会社の動向について取材をもとに解説する。(※2 記事公開当初、当該組合員1名に対する“懲戒処分”を“解雇”と表記していましたが、誤りだったため訂正しました。以下同。2024年4月20日編集部追記)

◆ジェットスター労使交渉の経緯

 ジェットスター・ジャパンにおける労使交渉が表に出たのは、2023年5月にさかのぼる。労働者側(と言っても、組織したのはパイロットの運航乗務員と客室乗務員の一部のみであり、地上職員は含まれていない)は、労働条件の改善や賃金未払いの改善を求め、ストライキなどを通じてその要求を主張してきた。

 本稿の執筆を開始した、3月下旬時点での労使交渉は、会社側が組合員1名に対して行った懲戒処分の取り消しを求め、3月29日10時からストライキに入ることを会社に事前通知(※2024年4月23日追記 記事公開当初「経営側は経営環境の変化や競争の激化を背景に、労働条件の見直しを進めようとした」と記述しましたが、3月下旬の労使交渉の争議ではありませんので削除訂正しました)。

 しかし、《明日3/29のストライキは中止致します。会社がスト参加者に対して懲戒処分を検討する可能性があると言われてしまい、まずは組合員の安全を守ることが最優先であると判断いたしました。》(JCAのXへのポストより引用 ※3)とあるとおり、ストライキはいったん中止された。この状況下で、双方は相互理解に乏しく、解決の糸口が見えにくい状況にあった。

◆会社側の「奇襲」

 解決には双方が譲歩することが不可欠なのであるが、会社側は一歩も引かなかったように見える。会社側が団体交渉真っ盛りの3月29日正午開始の「記者レク」と称した記者会見の開催招集を報道陣にメール送信した。

 それは開始時間の何と1時間7分前という急なことだった。都内千代田区での開催であり、複数の報道機関は駆け付けることができたものの、これほどまでの急な開催は、異様な出来事だ。この訳を知るのは、もう少し後のことになる。筆者は都内在住であったので、執筆の手を止め会場にたどり着くことができた。この記者レクの様子をお伝えしたい。

 登壇者は、ジェットスター・ジャパン執行役員構造改革室人事・IT統括田中正和氏と人事本部長森川秀樹氏の2名であった。この記者レク開催にあたって、ムービーとスチール(静止画)の撮影全般が禁止されており、記者がPCへ会話内容を打ち込むカタカタという音だけが小さく響く状況の中で始まった。