大谷翔平

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 11分にわたる「会見」で、大谷は身の潔白を訴えた。と同時に、苦楽をともにした水原氏への複雑な思いも口にしていた。事案は今後、捜査当局に委ねられ、並行してMLBの調査も進んでいく。新天地1年目のスターにとって、この上ない試練となるのは間違いない。

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 水原氏の賭博騒動が発覚してから5日後、日本時間26日の午前6時45分から会見は始まった。

「事前に球団側は、大谷は声明を読み上げるだけで質疑応答はない、また撮影も禁止すると伝えてきました」

 とは、出席した記者。

「バックネット裏にある会見場の入口には長蛇の列ができており、報道陣が入場できたのは開始の10分前。警備員に誘導される際にも『撮影機器を持ち込まないように』と、厳しいチェックを受けました。出席者は80人ほどでしたが、こんなに緊張感に包まれた大谷の会見は初めてでした」

大谷翔平

水原氏から事実を打ち明けられた大谷は…

 ここで大谷は、臨時通訳に就いたウィリアム・アイアトン氏同席のもと、持参したメモに目をやりながら話し始めた。

〈一平さんは僕に「賭博に関与しているのではないか」という取材の依頼があることを話していなかった〉

〈はじめに僕の代理人には「友人の借金の肩代わりとして支払った」という風に一平さんは話していた〉

 こうした不適切な振る舞いを明かしながら、「すべてがウソ」だと気づいた経緯を述懐したのだった。

〈試合後のチームミーティングで彼は全部英語で話していたので、僕は完全には理解できず、何となく違和感があった〉

〈彼は僕に対して「ホテルに帰った後で二人で話したいので待ってくれ」と言っていたので、僕は待つことにしました〉

 ホテルで水原氏から「巨額の借金」「勝手に口座から送金」などと打ち明けられた大谷は、代理人のみならず弁護士にも連絡し、「これは窃盗と詐欺なので、当局に引き渡す」との報告を受けたという。

いかなる罪に問われるのか

 水原氏がいかにして大谷の口座に無断でアクセスできたのかは依然、謎なのだが、カリフォルニア州弁護士の資格を持つ東町法律事務所の村尾卓哉弁護士が言うには、

「州法の違法賭博罪の量刑は、1000ドル以下の罰金または6カ月以下の禁固となります。さらに水原氏が、大谷選手の口座管理権限を持たずに不正アクセスして胴元に送金した場合は窃盗罪、口座管理権限を持った上で送金すれば横領罪となり、いずれも州法において1万ドル以下の罰金または3年以下の禁固刑となります。また連邦法における通信詐欺罪ということも考えられ、その場合には20年以下の禁固刑または25万ドル以下の罰金という極めて重い罰則が定められています」

 水原氏の身柄について、米国の法律に詳しい青山学院大学教授の浜辺陽一郎弁護士は、

賭博罪自体は軽犯罪であり、また水原氏に証拠隠滅や逃亡の恐れがなければ通常、逮捕はされません。ところが窃盗罪となると罪が重くなり、今回は金額も大きいため、もし水原氏が捜査から逃げ続けているとすれば逮捕せざるを得ないでしょう」

 会見の冒頭、大谷は水原氏について「信頼していた方の過ち」に「悲しいというかショック」を感じているとしながら、終盤では「ショックという言葉が正しいとは思わない」「今はそれを言葉にするのは難しい」と吐露するなど、元相方の行為を一刀両断できない苦悩が見てとれた。

懸念は「リハビリ」

「Full-Count」編集部の小谷真弥氏は、

「臨時通訳となったアイアトン氏は現在、球団編成部に属して選手育成を担っています。日本語に堪能で、かつて前田健太投手の通訳を務めていました」

 としながら、

「プレー以外で大谷選手の身の回りに精通する水原氏の代わりが務まる人物は、なかなか探し出せないと思います。例えば昨年、右肘をケガした時も、大谷選手が抱える肘の違和感がエンゼルスのコーチ陣には伝わりにくかったのですが、英語が流暢で経験豊かな水原氏が間に入ることで、その感覚を的確に伝えることができました。また日頃の練習でも携帯端末で映像を撮影、打撃や投球を数値化して球団と共有していました。大谷選手は来季の二刀流復帰を目指しますが、あるいは投球のリハビリで影響が出てくるかもしれません」

“唯一無二の存在”は、あえなく自滅してしまったのだ。

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「週刊新潮」2024年4月4日号 掲載