中国政府は不動産開発と公共投資に依存した経済成長モデルからの脱却を模索している。写真は上海市の高層ビル群(イメージ)

中国政府は2024年のGDP(国内総生産)成長率の目標を「5%前後」とし、2023年の目標と同水準に据え置くことを決めた。そんななか、海外のエコノミストの一部が「達成は困難」との見方を示している。

スイス金融大手UBSは3月7日、中国のマクロ経済分析に関する説明会をメディア向けに開催。同社のアジア経済調査チームを率いる中国担当首席エコノミストの汪濤氏は、その席で次のように述べた。

「中国の不動産市場は不安定な状況が続き、相当な下振れリスクが存在する。われわれは、2024年のGDP成長率を4.6%とする(1月時点の)予測を維持する」

政府の経済対策に力不足感

汪氏の分析によれば、3月上旬の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で打ち出された中国政府の経済対策は比較的マイルドであり、短期的な景気テコ入れよりも中長期的な経済構造調整を重視している。

言い換えれば、不動産開発や地方政府の債務拡大(による公共投資)に大きく依存した過去の経済成長モデルから、新たな産業体系の構築を含む新時代の成長モデルへの転換が、中国政府にとっての優先課題だ。

しかし前年並みのGDP成長率を維持しつつ、経済の成長エンジンを切り替えるのは容易ではない。それゆえに汪氏は、2024年の政府目標の達成について「ややハードルが高い」と見ているのだ。

UBSの調査チームが中国経済の先行きに関して最も懸念するのは、不動産市況の低迷にいまだ底打ちの気配がないことだ。それは中国経済の成長の重石になるだけでなく、デフレ圧力を増大させる。


不動産不況の長期化は中国経済の成長の重石になっている。写真は経営危機に陥った不動産大手の恒大集団が建設するマンション群(同社ウェブサイトより)

それでも、「不動産市況がさらに(大幅に)悪化するか、(中国社会の不安定化につながる)リスク事象が噴出しない限り、中国政府は不動産業界に対する追加支援に踏み切らないだろう」と、汪氏は予想する。

なぜなら現在の不動産不況は、中国の人口構成の高齢化や住宅在庫の過剰、不動産デベロッパーの過剰債務など、複数の構造的要因が絡み合った結果だからだ。いかなる対策もリスクや痛みが避けられない。

住宅在庫の買い上げも一案

「中国政府は、このような(不動産市場の)構造変化の現実を受け入れるべきだ。市況の低迷が(社会不安を招きかねない)過度な調整につながるのを防ぎ、不動産以外の業界や企業、市民生活に及ぼすマイナスの影響が拡大しないよう、何らかの手立てが必要だ」(汪氏)


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その具体案としてUBSは、(国有銀行などへの指導を通じた)不動産デベロッパーに対する資金繰り支援の拡大や、(デベロッパーが予約販売した)新築マンションの購入者への物件引き渡しを着実に進める金融支援などを挙げる。

さらにUBSは、不動産デベロッパーが抱える住宅在庫を政府が買い上げ、中低所得層向けの公営住宅として活用することも提案した。

(財新 駐香港記者:王小青、劉悦鈴)
※原文の配信は3月7日

(財新 Biz&Tech)