Amazon Web Services(AWS)が2024年3月5日に、クラウドのユーザーが別のサービスに移行する際にかかる転送料を廃止することを発表しました。

Free data transfer out to internet when moving out of AWS | AWS News Blog

https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws/free-data-transfer-out-to-internet-when-moving-out-of-aws/

AWS follows Google in announcing unrestricted free data transfers to other cloud providers | TechCrunch

https://techcrunch.com/2024/03/05/amazon-follows-google-in-announcing-free-data-transfers-out-of-aws/

Amazon agrees to waive egress fees for disgruntled users • The Register

https://www.theregister.com/2024/03/05/aws_data_egress/

今回のAWSの決定は、ユーザーがクラウドサービスを別のものに乗り換える際にかかる転送料、いわゆる「データエグレス料金」を無料化することを目的として2024年1月に発効され、2025年9月12日から適用される欧州データ法の規定に基づいたものです。

AWSは発表の中で、「私たちは、AWSからのデータ移行を含めたお客様の選択肢を重要視しています。インターネットへのデータ転送料金の免除は、欧州データ法の定める方針に従い、世界中のすべてのAWSのお客様が、どのAWSリージョンからでもご利用いただけます」と述べました。

2024年1月には、AWSに先駆けてGoogle Cloudが同様に転送料を無料化しています。

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欧州データ法はEU域内における競争を活発化させることを念頭に置いたものでしたが、AWSの今回の措置はGoogle Cloudと同様に世界的に実施されるものであり、この点は注目に値するとIT系ニュースサイトのTechCrunchは述べました。

TechCrunchはまた、AmazonがGoogleの動きに追随したことで、同じくクラウドサービスを手がけているMicrosoftも同調する可能性が高いの予想を示しています。

AWSは以前から月100GBまでのデータ転送を無料化しており、90%のユーザーにとってはこれで十分だったとしています。また、今回の転送料の撤廃では、無料分を超えたデータ転送が必要になった場合、AWSが事前の承認後に転送のための一時的なクレジットを発効することで対応するとのこと。その後、ユーザーは60日間の猶予期間の中で転送を完了させる必要があります。

Google Cloudでは、移行後のアカウントを閉鎖しなければならない一方で、AWSは移行後もアカウントを保持することができます。この点について、AWSは「アカウントの閉鎖やAWSとの関係の変更は一切必要ありません。いつでもお戻りください。もちろん、同じAWSアカウントが複数回の申請をされた場合は、改めて精査させていただきます」と説明しました。



クラウドの移行に多大なコストがかかる「クラウドロックイン」の問題に関しては、EUだけでなくイギリスの競争・市場庁(CMA)も調査を進めていますが、Microsoftなどが世界的なデータエグレス料金無料化の動きに倣えば、規制当局の負担はさらに軽くなります。

その一方で、コスト的な問題が解消されても、クラウド企業が競合サービスとスムーズに連携できないように自社製品を設計している技術的障壁の問題が残るため、「規制面での逆風が今後も続く可能性があります」とTechCrunchは指摘しました。

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