© 2022 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

写真拡大

最新主演作『コヴェナント/約束の救出』が公開中のジェイク・ギレンホール。ガイ・リッチー監督による社会派ヒューマンドラマは、ジェイク演じる米軍曹長のジョン・キンリーと、彼がアフガニスタンで部隊を率いる過程で知り合ったアフガン人通訳アーメッドとの絆を描いている。情に厚い熱血漢から、つかみどころのない飄々としたキャラクターまで、自在になりきるジェイクの出演作を振り返らせていただきたい。

© 2022 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

父は映画監督、母は脚本家と映画にゆかりの深い家庭で育ったジェイクは、姉マギーとともに父の監督作品に出演し、10代からキャリアを開始している。SFスリラー『ドニー・ダーコ』(2001)では精神科に通う高校生の主人公ドニーを演じ、一躍期待の若手俳優として注目を集めることとなった。

世界的な実力派俳優として地位を確固たるものにしたのは『ブロークバック・マウンテン』(2005)だろう。ワイオミング州の山中で羊の放牧を行う季節労働者として出会ったイニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク)がともに惹かれ合い逢瀬を重ねる20年を描くラブストーリーは、今もなお絶大な人気を誇っている。同性間の関係がタブー視されていた時代・環境にあって、寡黙で無骨なイニスと比べるとジャックは幾分陽気で大らかにも見えるが、思うように会えない焦燥感を募らせていく。「いっそ別れられたらいいのに」とイニスに想いをぶつけるシーンは、ジェイクの演技を象徴する激しさと脆さがぶつかり合い、見る者の心を大きく揺さぶることとなる。

以降、『ジャーヘッド』(2005)ではサム・メンデス、『ゾディアック』(2007)ではデヴィッド・フィンチャー、『プリズナーズ』『複製された男』(ともに2013)ではドゥニ・ヴィルヌーヴと、現在も第一線で活躍する大物監督とのタッグも多く、常にオファーが絶えないジェイク。多面的かつ豊かな情感が、静かに、しかしふんだんに発揮されているのは2009年の『マイ・ブラザー』だ。

デンマーク映画『ある愛の風景』(2004)をアイルランドの名手ジム・シェリダンがリメイクした本作で、戦地での壮絶な体験によりPTSDを患う兄サム()を慮る弟トミーをジェイクが演じている。家族想いで実直かつ正義感溢れるサムに対し、前科のあるトミーは一見破天荒だが、温かく優しいハートを持つ青年だ。『コヴェナント/約束の救出』と同様にアフガニスタンの過酷な戦場での出来事を写しながら、一度傷ついた兄弟や家族の絆を取り戻していく様を丁寧に追う秀作では、エンドロールで流れるU2の「Winter」も冷え切った心を癒すような温もりに満ちている。

挫折や喪失からの再起、再生やサクセスという極めて映画的で普遍的なテーマを、それぞれ異なるアプローチで立体的に体現するのもジェイクの特色と言えるだろう。

学歴や仕事に恵まれなかったルー(ジェイク)が、ひょんなことから映像パパラッチとして成り上がっていく『ナイトクローラー』(2014)は、瞳に宿る狂気が秀逸。最初は気弱で卑屈だったルーは過激なスクープに取りつかれ、常軌を逸脱していくが、副社長に任命されたリック(リズ・アーメッド)がいくら払ってくれるのかと問うと、”Pick a number.(君が値段を決めろ)”と返す。笑顔を浮かべているが、全くほほ笑んでいない瞳は、こちらの生気が吸い取られてしまいそうなほどの威力がある。

減量で役に臨んだ『ナイトクローラー』とはまるで別人の『サウスポー』(2015)は『イコライザー』シリーズのアントワン・フークア監督によるアツすぎるボクシング映画だ。ライトヘビー級王者のビリー(ジェイク)はライバル選手の挑発に乗ったことがきっかけで、最愛の妻を喪ってしまう。自暴自棄に陥り、娘とも引き離されてしまったビリーは、再びリングへ立つためにトレーナーのティック(フォレスト・ウィテカー)に教えを乞う。

正統派のワンス・アゲインものにおいて、見事な体の作りこみはどんなセリフよりも雄弁。マッチョに見えても、ひとたび突けば壊れてしまいそうなギリギリの精神状態を巧みに表現している。なお、2024年3月21日よりAmazonプライムビデオにてされる『ロードハウス/孤独の街』では格闘家出身の用心棒という役どころ。こちらもパンプした肉体と鋭いアクションが楽しめそうだ。

故・ジャン=マルク・ヴァレ監督による『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(2014)で演じたのは、突然妻を交通事故で失うが、涙を流すこともできなかったデイヴィスというエリート・ビジネスマン。自分の無感覚にうまく向き合えないデイヴィスは、時に破壊衝動に駆られながらも、カスタマーサポートセンターを通じて知り合ったカレン(ナオミ・ワッツ)と彼女の一人息子クリス(ジュダ・ルイス)と交流を育んでいく。クリスのお気に入りであるロックバンド、Freeの「Mr. BIG」をヘッドホン越しに大音量で聴きながら、地下鉄の車内、ホーム、街中から車道へと踊り回るシーケンスは一切セリフがないが、弾けるような表情と体の動きが痛快でスリリング。『わたしはロランス』(2012)『ブルックリン』(2015)などを手がけたイヴ・ベランジェが撮影監督を務めていることもあり、全編にわたり瑞々しい映像のタッチと、ジェイクの表情の変化がマッチしている。

世界的ファッション・デザイナー、トム・フォードによる長編映画2作目となる『ノクターナル・アニマルズ』(2016)はラグジュアリーな世界観が堪能できるサスペンス・ミステリー。裕福な生活を送るアート・ディーラーのスーザン(エイミー・アダムス)の元に、永らく音信のなかった元夫のエドワード(ジェイク)から彼の書いた小説『ノクターナル・アニマルズ』が送られ、「感想が欲しい」旨の手紙が添えられていたことから物語が動き出す。スーザンの記憶の中のエドワードは純朴な学生時代から、その後に起こる出来事により憔悴しきった表情やミステリアスな姿まで変貌を見せている。

ちなみにビューティブランド「トム フォード ビューティ」では、フォードにゆかりのある男性の名前を冠した口紅のコレクションが一時期販売されており、その一つが「ジェイク」というカラーだった。脇を固めるキャストもマイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アーミー・ハマー、ローラ・リニーなど「トム フォード ビューティ」のフレグランスのように濃厚で、リッチな趣に耽溺することができる。

コメディでもサスペンスでもアクの強いキャラクターがハマるジェイクの存在感はスーパーヒーロー作品でも例外ではない。(MCU)『スパイダーマン』シリーズ2作目である『ファー・フロム・ホーム』(2019)ではヴィランとなるミステリオ/クエンティン・ベックを演じた。ピーター(トム・ホランド)は研修旅行先のヨーロッパでベックと出会い、亡きトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)の面影をベックに見出すが、後にベックの正体がペテン師だと判明する。ロンドンでの最終決戦にてミステリオは命を落とすが、ここからスパイダーマンは更なる騒動に巻き込まれていく。

© 2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: © & 2019 MARVEL.

しかし劇中では敵対関係にあった2人の、撮影現場やプライベートでの仲良しぶりはファンも知るところ。『ファー・フロム・ホーム』以前からジェイクはホランドに夢中だと、撮影中は仲良しが高じて、笑いが止まらなくなるもあった様子。一方、ホランドもジェイクとともに、プライベートジェットの機内でペットボトルをホルダーに投げ入れて大騒ぎする動画をにアップし、「夫が恋しい」とコメント。ジェイクの誕生日には、寄り添う2人のをアップし、キャプションを「#husbandgoals(理想の夫)」で締めくくるなど、世界中のファンを沸かせる術を心得ている。

© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

マイケル・ベイ監督による『アンビュランス』(2022)では白昼のロサンゼルスを舞台に、救急車で逃走する銀行強盗犯ダニーを演じた。豪快過ぎるカーチェイスや斬新なアングルやカット、『トップガン マーヴェリック』(2022)などでおなじみローン・バルフによる劇伴など技術面も刺激的な本作で、ジェイクはアクション俳優としての新たな境地を開拓。『コヴェナント』や『ロードハウス/孤独の街』以降は、ガイ・リッチーとの再タッグでヘンリー・カヴィルとのや、ハリソン・フォード主演で映画化された『推定無罪』(1990)のTVシリーズ化がApple TV+で、その他も数作品が控えている。

また、近年は映画監督としても躍進する姉マギーの作品にも出たいと所望しており、マギーの長編監督への起用があるかいなか、関心が寄せられている。

© 2022 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ジェイク・ギレンホール主演最新作『コヴェナント/約束の救出』は公開中。

Source:,

The post first appeared on .