久保建英、三笘薫に続くのは? 欧州での活躍を予感させるJリーグのアタッカー5人
Jリーグの海外移籍候補3〜FW編
現在、欧州トップリーグで多くの日本人選手が名声を高めているが、そのほとんどが「Jリーグ出身」である。プロサッカー選手としての原点があるからこそ、ケガで長期離脱したり、監督との軋轢でくすぶったり、たとえ逆境に遭っても乗り越えることができる。プレーヤーとして環境に適応し、アップデートできるのだ。
Jリーグは、なかでも「崩す仕事」をするアタッカーの「金脈」と言える。
久保建英(レアル・ソシエダ)、三笘薫(ブライトン)、堂安律(フライブルク)、伊東純也、中村敬斗(スタッド・ランス)、相馬勇紀(カーザ・ピア)など、日本人は「(スピード+技術)×コンビネーション=機動力」でサイドから崩し、ゴールに迫れる人材に恵まれている。肉体的資質もあるのだろうが、そうした技を極めることを好むプレーヤーが多いのだろう。
昨シーズン途中には北海道コンサドーレ札幌の左利きサイドアタッカー、金子拓郎がクロアチアの名門ディナモ・ザグレブへ移籍し、シーズン終了後にはアルビレックス新潟のドリブラー、三戸舜介がオランダのスパルタ・ロッテルダムに移籍した。この傾向は続いており、欧州のクラブに選手を売り込む代理人も、まずはそういう選手をリストに入れるほどだ。
では、次に欧州に飛躍するJリーグのアタッカーは誰か?
久保、三笘に続く人材は、さすがに枯渇しつつあるか。遠藤渓太(FC東京)、中島翔哉、安部裕葵、前田直輝、松尾佑介(浦和レッズ)、食野亮太郎(ガンバ大阪)など、"出戻り組"が多くなっている。彼らのプレーも楽しみだが、「次の飛躍組」というわけにはいかない。
そんななかで、外国人とも真っ向勝負でやり合えるアタッカーは、サガン鳥栖の長沼洋一(26歳)だろうか。昨シーズンは、右アタッカーとしてキャリアハイの10得点を記録した。しかし最大の特徴は、ゴール感覚よりも、サッカーセンスにある。
両サイドバック、左アタッカー、ウィングバック、シャドーなど複数のポジションを担当。局面を制する力は卓抜で、まだ底が割れていない。ディフェンスの網を潜る推進力があり、鞭がしなるようなシュートを両足で打て、ヘディングの当て勘や強さも備えている。プレーメイクやクロスの精度が上がったら、ポジションに関係なく「最優良物件」になるだろう。
【覚醒が待たれるトップ下のふたり】
一方、純粋なサイドアタッカーとして昨シーズン、最も可能性を感じさせたのは、FC東京の俵積田晃太(19歳)だ。
昨季、サイドアタッカーとして最も可能性を感じさせた俵積田晃太(FC東京) photo by Yamazoe Toshio
俵積田はトップスピードでボールを扱う能力に優れ、すでに自分のドリブルの形を持っている。老練なディフェンスに体をぶつけられながらも、前へ入っていく姿は頼もしい。昨年10月のG大阪戦では、自陣からボールを持ち込み、ふたりにマークにつかれながらひっくり返し、ゴールへ持ち込むと、そのまま叩き込んだ。
一方、トップ下もJリーグが多くの人材を生んできたポジションだ。中村俊輔、小野伸二、本田圭佑、香川真司、清武弘嗣、そして鎌田大地を次々に輩出。昨シーズン途中も、新潟の伊藤涼太郎がベルギーのシント・トロイデンに新天地を求めている。
ただ、続く世代は伸び悩んでいるか。
鹿島アントラーズからFC東京に活躍の場を求めた荒木遼太郎(22歳)は2021年、10得点を挙げてベストヤングプレーヤー賞を受賞した。非凡なシュートセンスだけでなく、近い数のアシストも記録。真価を発揮できたら、Jリーグの主役に躍り出てもおかしくなかった。
鳥栖からJ2いわきFCでの挑戦を選んだ西川潤(21歳)も、才能だけで言えば、レフティアタッカーとして本田や久保に次ぐレベルにあった。2019年のU−17ワールドカップの輝きは幻ではない。多くの指導者が、「大化け」を信じて起用してきたが、継続的なプレーを示せず、「回路をつなげられず」に苦しんでいる。カテゴリーを落とし、試合を重ねるなかでの覚醒が待たれる。
ふたりは「元・天才」で終わるのか、「欧州の日本人スター」に飛躍するか。それだけの落差があることを感じさせる素材であることは確かだ。
最後にストライカーだが、このポジションは伝統的に人材豊富とは言えない。
アジアカップの日本代表だった細谷真大(22歳)は、数少ない「物件」か。昨シーズンも所属する柏レイソルでリーグ5位の14得点を記録しており、欧州挑戦はパリ五輪もあるだけにタイミングの問題だろう。ディフェンスの裏に抜け出す駆け引き、ダッシュ力、フィニッシュ精度などは、Jリーグの日本人FWでは群を抜いている。
ただし代表戦ではポストプレーなどで粗が見えた。ワントップのタイプではない。その点はチームの戦術次第だが......。
川崎フロンターレからヴィッセル神戸に新天地を求めた宮代大聖(23歳)は、サッカーセンスでは日本人FWとして図抜けている。かつての柳沢敦、あるいは大迫勇也に近い存在で、「ポストプレー」「サイドに流れる」「中盤に落ちる」のどれにも適応し、起点になれる。技術精度も高く、そのシュートはJリーグでも際立って美しい。
課題は、どのポジションも器用にこなせる分、皮肉にもストライカーとしての怖さに欠ける点だろう。得点への荒々しさが出てこないと、FWでの欧州挑戦は苦しくなる。結局、エゴがぶつかり合うポジションなのだ。
他には、爆発力では鳥栖の横山歩夢(20歳)が面白い。G大阪の坂本一彩(20歳)も選手間で評判が急上昇中の若手だ。さらにJ2になるか、横浜FCの森海渡(23歳)、ロアッソ熊本の道脇豊(17歳)というストライカーも、非凡さを感じさせる。