70代、ひとり暮らしでも「食器はたくさん」。“だれにでも開かれた家”の工夫とは
今、団地での暮らしに注目が集まっています。「リノベーションすることで割安感のある好みの住まいになる」「建物がある敷地が広くて緑が豊か」といったことがおもな理由。
家族と一緒だったり、ひとり暮らしだったり、さまざまな年代、ライフスタイルの方の団地住まいの実例を紹介している『団地で見つけた身軽で豊かな暮らし方』より、声楽家として活動する服部雅子さんの団地での暮らしをご紹介します。
夫婦の寝室を介護や医療スタッフの「控室」に
服部さんの住まいは、家族で暮らしていた分譲団地。服部さんが58歳のとき、夫が病に倒れ、手術を受けたものの重篤な後遺症が残り、介護が必要な状態に。1年半ほど入院したのちに、要介護5と認定された夫を自宅で介護しようと決意しました。介護のために大規模なリフォームを経た家の中は、夫を見送ったあとも暮らしの変化に合わせて、柔軟に変わり続けています。
要介護5だった夫の生活は、服部さんはもちろん、多くのスタッフ(訪問介護士、訪問歯科、訪問理学療法士など)の力で成り立っていました。
「寝室として使っていたキッチン脇の一室を開放して、皆さんの控室に。この家は仕事がしやすい、って喜んでくださいました」
現在は仏間に。一室丸々あいているので収納家具も置いています。
古くなったつくりつけ天つり収納も再利用
キッチンの天つり収納を修理した際、もともとついていた戸棚を再利用(写真は現在の天つり収納)
「丈夫だし、もったいないでしょ。取っ手が下になっていたから天地を引っくり返して、今は床に置いてます(笑)」
家族が集まると大にぎわい!昔も今も、食でつながる
自室の隣には三男、少し離れたところに長男家族や二男家族も。「だれにでも開かれた家」だけに集まりやすいのです。
服部さんが、ひとり暮らしでもたくさんの食器を持っているのは、いつも人が集うから。この日は長男の裕さんとランチです。
「息子たちが来る日は、好きだったものをよくつくります」
家族や友人が来たら大テーブルでにぎやかに
韓国やアメリカでも暮らしていましたが「不思議と現地のだれかに料理を教わった覚えはない」のだとか。息子さんたちの好物は服部さん得意のミートローフやクラムチャウダー。
「家族が多いから大きい器が多いんです」。クリスマスにぴったりなトナカイとモミの木の大皿はアメリカで買ったもの。「あとでちゃんと見たら、日本製だったんですけどね(笑)」
お取り寄せの水は、置き場所のワゴンごと玄関で出迎え
「夫は病院に通算1年半、自宅で6年半。8年もの間、経管栄養だけで食事ができなかったんです。だからせめて、お水ぐらいはおいしいものを飲ませてあげたくて」
知人の紹介で取り寄せるようになった鹿児島の水は、今も買い続けています。キャスターつきの収納ワゴンに載せて、キッチンに置いていますが、届いたときはワゴンごと玄関で出迎え、配達の人にのせてもらうようにしています。
ワゴンの下には乾物などの食材が。韓国で買ったポジャギ(風呂敷のようなもの)を目隠し代わりに。