GIフェブラリーS(東京・ダート1600m)が2月18日に行なわれる。

 ダートの頂上決戦となるが、昨年の覇者で、昨年度のJRA最優秀ダートホースに輝いたレモンポップは不在。芝のGI馬2頭に加え、地方の実績馬も参戦するとはいえ、やや寂しいメンバー構成となった。日刊スポーツの松田直樹記者がその背景について語る。

「昨年に続いて、今年も前年の覇者がいないGIとなりました。その昨年の勝ち馬レモンポップは、海外GIのサウジC(2月24日/サウジアラビア・ダート1800m)へ。1着賞金1000万ドル(約15億円)といった世界最高賞金を誇るレースで、5着の賞金でさえ100万ドル(約1億5000万円)という高額です。

 つまり、5着でもフェブラリーSの1着賞金(1億2000万円)を優に上回ります。金銭面の魅力が大きく、フェブラリーSと同時期に行なわれることを踏まえれば、有力馬がそちらに目を向けるのも仕方がないことと言えます」

 松田記者は続けて、今年のレースについての見解を示す。

「昨年の掲示板(5着以内)組の出走は、2着に入ったレッドルゼル(牡8歳)1頭。所属の安田隆行厩舎のラストGIということもあって、応援したい気持ちもありますが、さすがに8歳となると、さらに"上"を望むのはどうか......。

 翻(ひるがえ)って、これまで1月下旬か2月の頭に行なわれていた地方交流GI川崎記念(川崎・ダート2100m)が、今年から4月開催へ移行。中距離上位層の適鞍がこの時期になくなり、その路線の馬たちに加え、サウジCの出走がかなわなかった非招待馬たちも、この舞台に挑んできました。断然の存在がいないなか、大混戦の様相を呈しています」

 そうした状況のなか、人気になりそうなのはGIチャンピオンズC(12月3日/中京・ダート1800m)と、地方交流GI東京大賞典(12月29日/大井・ダート2000m)で連続2着となったウィルソンテソーロ(牡5歳)あたりか。ただ、上がり馬に、地方の実力馬、未知なる魅力のある芝GI馬の存在もあって、人気は割れそうな雰囲気だ。

 また、過去の結果を振り返ってみれば、1番人気は安定した成績(過去10年で5勝、2着2回、3着2回)を残しているが、伏兵の台頭も頻繁に見られる。本命不在で激戦の今年は一段と波乱ムードが漂う。

 そこで、松田記者は「混戦だからこそ狙いたいのは、一芸に秀でた馬」と言って、2頭の穴馬に目をつけた。

「まず期待したいのは、末脚非凡なタガノビューティー(牡7歳)の上位食い込みです。

 前走のGIII根岸S(1月28日/東京・ダート1400m)では13着と惨敗を喫しましたが、序盤3ハロンが35秒8という通過時計を見て、同馬の出番はないと思いました。なにしろ、この時計は過去10年で最も遅いものでしたから。そのうえ、スタートで若干つまずいていました。

 そうして、勝ち馬エンペラーワケアをはじめ、中団前目で運んでいた馬でさえ、上がり35秒台の脚を使えたレースとなっては、さすがに出番がありませんでした。実際、4角10番手以下にいた馬の最上位は、13番手にいたアルファマム(8着)。明らかに、前残りによる展開負けと言えます。


フェブラリーSでの大駆けが期待されるタガノビューティー。photo by Sankei Visual

 過去、フェブラリーSには賞金除外で出走できませんでしたが、昨春のリステッド競走・コーラルS(3月11日/阪神・ダート1400m)の勝利を皮切りに、地方交流GIかしわ記念(5月4日/船橋・ダート1600m)で2着、GIII武蔵野S(11月11日/東京・ダート1600m)でも2着となって賞金を加算。今年は順当にゲートインとなりました。

 この中間は、1週前の栗東Cウッド、最終の栗東坂路と、追い切りではともに前走以上のタイムを計時。東京・ダート1600mの舞台も、3勝、2着3回、3着2回と好相性です。2走前の武蔵野Sではメンバー最速の上がりをマーク。同レース3度目の出走で、自己最高の2着となっています。

 7歳となりましたが、衰えは見られません。ペースの上がるGIなら、巻き返しも十分に可能。大駆けがあっても不思議ではありません」

 松田記者が注目するもう1頭は、明け4歳の上がり馬だ。

「当初除外対象でしたが、賞金上位馬が次々に回避したことによって、出走のチャンスを得たオメガギネス(牡4歳)です。全5戦のキャリアはメンバー最少。完成度の低さは陣営も認めるところですが、スケール感はGIでも見劣らないものがあります。

 2走前に今回と同じ舞台のリステッド競走・グリーンチャンネルC(10月9日/東京・ダート1600m)を完勝。不良馬場だったとはいえ、開催最速タイムをマークしました。好位追走から上がり最速の脚を使えるのですから、その潜在能力は本物です。

 前走のGII東海S(2着。1月21日/京都・ダート1800m)出走は、グリーンチャンネルCを使ったあとの反動を考慮してのローテ変更(当初は武蔵野Sを予定)。今回はそこから中3週となりますが、軽快な動きを見せています。

 除外の可能性がありながらこの馬を選択したクリストフ・ルメール騎手も、最終追い切りのあと、上々の評価を与えています。あっと驚くシーンがあってもおかしくないでしょう」

 今年最初のGIレース。混戦を断つのは、ここに挙げた2頭か。いずれにしても、どの馬にもチャンスがあり、オイシイ配当をもたらしてくれる一戦であることは間違いない。