2023年の日本はWBC優勝に始まり、バスケのW杯では48年ぶりに自力での五輪出場権を獲得、ラグビーのW杯でも奮闘を見せた。様々な世界大会が行なわれ、スポーツ界は大いなる盛り上がりを見せた。そんななか、スポルティーバではどんな記事が多くの方に読まれたのか。昨年、反響の大きかった人気記事を再公開します(2023年5月15日配信)。

※記事内容は配信日当時のものになります。

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2022年に開催されたアマチュアボディコンテストの最高峰「オリンピア アマチュア ジャパン2022」で最年少出場(当時18歳2カ月)を果たした山下桃伽さんにインタビュー。

フィットネスシーンで注目を集める彼女だが、中学生までは運動とは無縁な生活だったという。彼女はなぜトレーニングに目覚め、どのようにバキバキのボディを手に入れたのか?


「オリンピア アマチュア ジャパン2022」に高校3年生で出場した山下桃伽さん 写真提供/山下桃伽(以下同)

●きっかけは「デブ」のイジリ

ーー「オリンピア アマチュア ジャパン2022」出場当時は高校生だった山下さん。すさまじいボディですが、子どもの頃から運動をしてきたんですか?

山下桃伽(以下、同) 中学校では美術部で、高校では部活に入ってませんでした。部活以外でもほとんど運動することはありませんでしたね。

ーー信じがたいです。なぜトレーニングを始めたんですか?

 最初はダイエット目的でした。めちゃくちゃ太っていたわけじゃないんですけど、ちょっとお腹が気になっていて、中学の時に同級生の男子からも「デブ」とからかわれることがあって......。仲のいい相手からのイジリだから笑ってましたけど、心のなかでは気になってたんです。


中学時代は美術部で運動とは無縁だった山下さん

ーーそれからトレーニングを始めたんですか?

 食事制限でリンゴやササミしか食べなかったり、ユーチューブでやせる運動を見て実践してみましたがどれも続かずで......。それでトレーニングをやろうと思っていた時にちょうど親戚のトレーナーがパーソナルジムを開くということで、それじゃあ教えてもらおうと。

ーー「渡りに船」ですね。

 ひとりだったら挫折してたと思います。それが高校1年生の春でした。

ーー自身のツイッターでも衝撃の「ビフォー・アフター」の写真を掲載していますね。数年でこの体の変化はスゴい!

 最初はただやせたかっただけなのに、いつの間にか(笑)。

●体とともに変わっていく心

ーー運動経験がないのによくこなせましたね。

 最初の頃は大変でした。スミスマシンのバーを担いだスクワットは重すぎて落としてしまうし、トレーニング後には「もう無理、動けん......」って感じで翌日の筋肉痛も地獄でした。

 それでも続けられたのは、「あれ、ウエストが締まってきたな」とか自分の体にちょっと変化がみられるようなったからだと思います。

 友達からも「ちょっと細くなった?」と言われることが増えました。そういうふうに言われたことがなかったから、だんだんトレーニングが楽しくなっていきましたね。

ーーメガネも外して、イメチェンしましたね。

 コロナ禍でマスクをつけてのトレーニングだとメガネがくもってしまいますし、周りから「外したほうがいいよ」と言われていたのでコンタクトに変えました。

 それまではめちゃくちゃネガティブで、「私はなんてブサイクなんだ......」とかずっと思ってました。でも、トレーニングを始めて自分の体が変わっていくと、「ちょっとイケてない?」と思えるようになりました。

 ボディメイクを頑張るにつれてメイクとかも頑張ってみようという気持ちに自然となっていったんです。
 
ーー「モテ期」は来ましたか?

 いやあ、筋トレ女子はあまり男性ウケはよくなくて......(笑)。男性とふたりでトレーニングに行ったら楽しそうやとは思いますけど、今は恋愛よりトレーニングですね!

●憧れの選手を追いかけて

ーーダイエットという当初の目的は達成されたと思いますが、なぜ大会を目指そうと?

 トレーニング自体が好きになったので、このまま続けるなら次の目標を設定したほうがいいなと。インスタグラムで(IFBB<国際ボディビルダーズ連盟>エリートプロの)山田朝美選手を見てずっとカッコいいと思っていて、山田選手と同じ「フィギュア」カテゴリで大会への出場を目標にすることを決めました。

ーーフィギュアとはどんな競技なんですか?

 女性のカテゴリのなかでは全体的に筋肉量が必要で、肩や背中、腹筋、脚などハードにトレーニングをして大きい筋肉をつけなきゃいけない競技なんです。

ーー山下さんは、ふだんと競技中のギャップもありますね。

 競技用メイクというのがあるんで、それは一生懸命勉強しました。ふだんの自分のメイクと違っていて、つけまつ毛をつけたり、目が埋まるくらいアイシャドウを塗ったり。会場の光が強いから白飛びしないようにめちゃくちゃメイクを濃くするんですよ。

ーーそしてトレーニングを始めてから約1年半後の「2021ウェスト ジャパン チャンピオンシップス」でコンテスト初出場。翌年にはアマチュア大会の最高峰「オリンピア アマチュア ジャパン2022」に最年少出場を果たしました。

 出場者は年上の方ばかりなのでいろいろかわいがってもらいました(笑)。大会に出るようになってトレーニング仲間も増えたし、「オリンピア アマチュア ジャパン」の時は同世代の人から応援メッセージの手紙や当日の差し入れをたくさんいただけました。そういう意味でもトレーニングを頑張ってきてよかったなと思えました。

●目標とされるプロ選手になりたい

ーーこれからプロを目指していく?

 もちろんです。プロになるには体が大きくて絞れているのは大前提で、ポージング一つひとつに流れるような動きとカリスマ性があるんです。

 私はそういう選手に比べると全然小さいですし、バルク(重厚感)も足りない。ポージングももっと自分に合うものを見つけなきゃいけないし、まだまだです。

ーーとはいえ、山下さんはまだ18歳。伸びしろが大きいです。

 高校生になってからトレーニングを始めて16歳でコンテストデビュー、18歳で「オリンピア アマチュア ジャパン」に出場できたのは、自分でも誇れる部分なのかなとは思います。

ーーそして、今年3月に高校を卒業。今後、どのような選手を目指したいですか?

 私自身、山田朝美選手に憧れてフィギュアカテゴリで大きな大会に出たりプロを目指すようになりました。今度は自分が目指されるような立場の選手になりたいです。

「まだ高校生やけど山下さんみたいにコンテストに出場してみたい」となるきっかけの選手になれたらうれしいかなって。

 そして、今年も「2023ウェスト ジャパン チャンピオンシップス」と「オリンピア アマチュア ジャパン2023」に出場したいと思っているので、去年よりもいい体で、去年の自分を超えることが目標です。

ーー活躍を知った中学時代の友人は山下さんの変化に驚くでしょうね?

 知っている人もいると思います。中学時代と変わりすぎて「なんでなん?」となってると思いますけど(笑)。

【プロフィール】
山下桃伽 やました・ももか 
2004年、愛媛県生まれ。15歳からトレーニングを始め、16歳の時に「2021ウエスト ジャパン チャンピオンシップス」でフィットネスコンテストデビュー。翌年の「オリンピア アマチュア ジャパン2022」に最年少出場(18歳2カ月)。現在は松山市内でトレーナーをしながら自らのボディメイクにいそしむ。