↑Lenovo Yoga Book 9i Gen 8

 

SF映画などでは、物理キーボードではなくディスプレイを直接操作するような装置が登場することがあります。現代でいうところのタブレットやスマホに近いですが、もしノートPCのキーボード部分が全部ディスプレイになったら?

 

そんなロマンをカタチにしてしまったのが、2023年12月にレノボから登場したノートPC「Yoga Book 9i Gen 8」。公式サイトでは2-in-1のノートPCと銘打ってますが、いざ使ってみると2-in-1どころか3-in-1にも5-in-1にもなりえる、とてもマルチなデバイスでした。

 

デュアルスクリーン+αな操作性を実現

↑一見するとシンプルなノートPCですが…

 

天面には「Lenovo」と「YOGA」のロゴが落ち着いた印象で配置されています。しかし、ディスプレイ側を見てみると……。

↑13.3型のOLEDディスプレイを2枚搭載

 

物理キーボードが搭載されていない! その代わり、メインディスプレイと同じ2880×1800ドットのディスプレイがキーボードの部分にも配置されています。どちらの画面もタッチに対応し、まるでタブレットのように操作が可能。

 

下画面には「Virtualキーボード」と「Virtualタッチパッド」を表示でき、これらを使えば一般的なノートPCに似た操作性が得られます。もちろんキーボードに物理的な手応えはありませんが、タブレットなどのソフトウェアキーボードに比べて横に広いおかげか、見た目ほど操作性は悪くありません。

↑8本指で画面をタッチすると、キーボードとトラックパッドが出現

 

それでは、このYoga Book 9i Gen 8がどれだけの可能性を秘めているのか、トランスフォームの一端をお見せしましょう。

 

見よ、この変幻自在っぷり!

まずは、画面を360度折りたたんでタブレットスタイルに。この状態では上画面のみが起動し、下画面はブラックアウトします。縦or横方向へのフリップも可能で、片手や立ちながらでの操作もお手の物です。

↑Yogaシリーズ伝統の360度フリップ。重量は約1.34kgと、片手で支えられる重さです

 

ディスプレイを前後に展開し、テントモードとして使うことも。タブレットスタイルをスタンドで立てている感覚でも使えますね。さらにこのままぺたんと180度展開すれば、ディスプレイを相手側と手前側にそれぞれ向けることができます。プレゼンにも便利。

↑ヒンジの固定力は充分で、滑り落ちる感覚もなし

 

上画面と下画面を繋ぐヒンジパーツには厚みがあり、高い保持力があります。2枚のディスプレイを繋ぐ役割がある重要なパーツですね。名門オーディオブランドのBowers&Wilkinsが監修したスピーカーを搭載しており、Dolby Atmosにも対応。

↑ヒンジはサウンドバーの役割も兼ねています

 

↑左右のどちらからでも充電ができます

 

本体の左側面の様子。左から電源ボタン、Webカメラのプライバシーシャッター、それからThunderbolt 4端子が2口用意されています。右側面にもThunderbolt 4端子が1口あるので、合計3口のType-C端子が備わっていることに。

 

また、Yoga Book 9i Gen 8にはワイヤレス接続の物理キーボードとスタイラスが付属し、さらにそれらを収納できる専用ケースもセットになっています(ケースの中にキーボードが収納されています)。

↑キーボードとペンを収納可能なフォリオケース

 

↑物理キーボード派にはうれしいセッティング

 

ワイヤレスキーボードを使えば、下画面をキーボードではなくディスプレイとして使うことも。ケースにはマグネットが仕込まれていて、キーボードやPC本体がしっかりと固定されます。

 

さらに、このケースはPCのスタンドにもなるんです。写真のような形状にしてやると……。

↑まるで折り紙のように折り目に沿って畳み込めます

 

↑このスタイルで仕事をしていると、驚かれること間違いなし

 

PC本体をスタンドに立てかけて、大きな縦画面として自立させることも! ちなみに上画面と下画面をひとつの画面として、縦に長くブラウジングすることもできます。

 

縦に置けるなら、もちろん横向きに置くことも。まるで書見台のようなこの見た目、とてもテンションがあがりますね。

↑読書や資料読みにはこのスタイルがオススメ

 

↑PCが倒れてこないのはこのパーツのおかげ

 

キーボードが置かれている上部には、写真でわかるようにPCを自立させるための支えがあります。手でわざと押した程度ではPCが落ちることはありませんでした。

 

ここで紹介した以外にも、下画面に直接キーボードを置いて「物理キーボード+Virtualタッチパッド」のような一般的ノートPCスタイルにしたり、Virtualキーボードだけを表示するスタイルにしたりと、さまざまなスタイルでの操作が楽しめます。

 

筆者が数えてみた限りでは、10通りのスタイルを発見できました。つまり、10台分のデバイスが本機に詰まっているということに。直販の価格で38万2800円(税込)と、ノートPCとしてはかなり高価ですが、10台分と言われるとアリな気がする価格に見えてきます。

 

実際にYoga Book 9i Gen 8を数日ほど使ってみましが、スタイルの変更はかなり有用だと感じました。タブレットにして寝転びながら動画を見たり、仮想キーボードで簡単な検索をしてみたり、1枚の大画面として活用してみたり。いままでのノートPCの形状にとらわれない、より自由な使い方が楽しめました。

 

奇抜すぎるトランスフォームの恩恵は?

さまざまなスタイルで操作できるのはわかりましたが、肝心の操作性や仕事への生産性の部分はどうなのか。今度は実践的な部分をチェックしてみましょう。

↑簡単な文字入力なら物理キーボードなしでもOK

 

筆者がよく活用したのは、下画面に表示させるVirtualキーボードとVirtualトラックパッド。検索にしてもメッセージアプリの返信にしても、文字入力が欠かせません。かといってわざわざ物理キーボードを持ってくるのも面倒。

 

VirtualキーボードとVirtualトラックパッドは、下画面を8本指でタップすると瞬時に呼び出せます。また、3本指でタップするとトラックパッドだけを表示でき、ブラウジングやフォルダ操作をしたいときにはこちらも便利でした。

 

タッチ操作でも充分ではありますが、タッチ操作orトラックパッドorキーボードとトラックパッドと、複数の選択肢から選べるのはユニークですね。

 

ペンを使えばメモアプリやクリエイティブ系のソフトを活用することも。こうして下画面で描画できるようにしておけば、たとえば上画面で資料を見ながら気になる点をメモしたり、オンラインプレゼンを聞きながらメモを取ったりといったこともできます。今回はテストできませんでしたが、「CLIP STUDIO PAINT」のようなペイントソフトと組み合わせても活用できそうな予感です。

↑アプリ「Smart Note」を起動し、ペンで描画

 

しかし「たくさんスタイルがあっても、操作性が覚えきれないのでは……?」という意見もさもありなん。筆者もそう思っていましたが、そこは専用のアプリがサポートしてくれました。

↑タッチの操作方法や設定はいつでも確認可能

 

アプリ「User Center」からは、Virtualキーボードの呼び出し方や下画面の挙動などがいつでも確認できます。「下画面のタスクバーにあるアプリをタッチすると、選んだアプリが下画面に移動する」など、細かい挙動も変更可能です。自分にあった設定を追い込めそうです。

 

ノートPCの進化先のひとつを提示してくれるモデル

かなり尖ったコンセプトのモデルでありながら「意外と活用できちゃった」というのが正直な感想です。2画面があっても使いこなせないかもと考えていましたが、あったらあったで何かしら使えちゃうな、という感じ。

↑本格的に実用するならこのセットで持ち歩くことになりそうです

 

ただ、Virtualキーボードが便利とはいえメインで使うには物足りないのも事実。そうなるとキーボードも持ち歩きたいし、なんならマウスも欲しくなる。こうなると結局荷物が増えてしまうなとも感じました。2-in-1的なマルチデバイスは「これ一台でOK」的な身軽さも魅力だと思うのですが、キーボード+ケース+マウスなど、作業効率を求めると外部デバイスが欲しくなってしまうのは現状のノートPCと変わらない点ですね。

 

個人的には仕事PCとは別で、サブ機としての可能性を感じています。それこそ一台でタブレットにもPCにもなる利点が活かせるし、なんならメインPCを補佐する情報表示用サブディスプレイとして、13.3型×2枚の大画面表示はとても心強い。ノートPCの可能性は、まだまだ広がりそうです。

 

製品名:Yoga Book 9i Gen 8

CPU:インテル Core i7-1355U プロセッサー

メモリー:16GB

ストレージ:1TB (NVMe接続/M.2)

本体サイズ:約幅299.1×奥行き203.9×高さ15.95mm

 

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