ソリオは2020年末の発売から3年が経とうとしているモデル。それでいて今も販売ランキングベスト20にランクインし続ける。その魅力の源泉はどこにあるのか。今回はソリオバンディットを借り出し、実際に見て触って確かめてみた。

 

■今回紹介するクルマ

スズキ ソリオバンディット(試乗グレード:HYBRID MV)

価格:212万5200〜231万7700円(税込)

 

スズキの普通乗用車の中で売れ筋なのがソリオ

現在のスズキのラインナップにおいて、普通乗用車(軽自動車以外)は何があるのか? 数えてみると、イグニス、エスクード、クロスビー、ジムニーシエラ、スイフト、そしてこのソリオ(バンディット)と計6車種もあった。

 

トヨタ ノアのOEMであるランディは除いたが、スズキが6車種もラインナップしていることに驚く人もいるかもしれない。

 

この6車種というのが、どれもクルマ通を唸らせる深みを持つ魅力を持つモデルばかりで、イグニスやエスクード、スイフトなどは欧州でも販売されており、本格的な走行性能を備えた味のあるモデルだ。

 

また、クロスビーとジムニーシエラは、それぞれハスラーとジムニーの排気量アップ版であり、キャラのたった存在感のある人気車2台に対して、「軽ではちょっと物足りない」というユーザーの要望を満たしたモデルである。

 

しかし、実はこのなかで最も売れているのが、ソリオ(バンディット含む)だ。2023年1月〜6月の乗用車販売台数ランキングのベスト20に入っているのはソリオのみ。

 

ソリオ自体は、名車「ワゴンR」の普通車版である「ワゴンRワイド」の流れを汲む、ハイトワゴンタイプのコンパクトカー。2000年に車名が「ワゴンRソリオ」に、2005年には「ソリオ」となった。

 

2011年に発売された2代目モデル以降は、室内空間の拡大や、前後シート間ウォークスルー、後席スライドドアなどを採用し、一躍人気モデルに。以後、ソリオは国内スズキの屋台骨を支える量販モデルとして君臨し、2020年末に、現行型となる4代目モデルが発売されている。

↑先代から全面改良を施したソリオとソリオ バンディット。今回はソリオ バンディットを試乗しました

 

ダイナミックなエクステリア。カーキを選ぶとオシャレな雰囲気に

ソリオバンディットは2代目ソリオの頃に追加された派生モデルで、ソリオとバンディットの違いは、ぱっちりお目目の大型ヘッドライトが装着されるソリオに対し、若干目を細めたようなシャープな造形のヘッドライトを装着している。スポーティで若者受けしそうな雰囲気にまとめられたモデルだ。

↑細部まで作り込むことで、立体感を目指したフロントグリル

 

簡単にいえば、ファミリーっぽいイメージのソリオに対して、やや都会的な雰囲気で若者や男性ウケを狙ったのがバンディットである。

 

ハイトワゴンタイプのクルマといえば、箱型なため、どうしても単調なデザインになりがちだ。しかしソリオでは、ヘッドライトの下から流れるサイドラインが、一度下に落ちてからグイッと上へ向かっている。この抑揚のあるラインのおかげで、横から車体を見たときにダイナミックな雰囲気が感じられ、前後方向に伸びやかなスタイリングを実現している。

↑ポジションランプとヘッドランプが二段構えのように並んでいるのも特徴的

 

↑シャープで動きのある線がダイナミックさを作り出しています

 

ルーフ(屋根)部分がボディ別色のツートンカラーを選べば、さらに車体が薄く見えてスポーティな雰囲気だ。

 

個人的には今回撮影したボディカラーであるカーキがお気に入りである。白や黒はあまりにも流通量が多いので除いたとして、赤や青はたいていのクルマに設定があるが、カーキはなかなかラインナップされないボディカラーだ。

↑ソリオバンディットのカラバリは全7色11パターンをラインアップ

 

イメージされるのは軍用車ベースのジープなどであり、どこか泥臭さも感じさせながら、現代的なデザインのソリオバンディットでは、これがハズシのオシャレになっている。ちなみにカーキの設定はソリオのほうにもあり、これまたデザインのイメージを変えるくらい素敵なルックスとなるのでご確認いただきたい。

 

スズキの哲学を感じる使い勝手。低燃費&静かな走りも好印象

中身はどうかといえば、これが実に安心感を得られるクルマにまとまっている。先代型よりボディは約70mm延長したことで、もともと広かった室内空間をさらに拡大し、リアシートは大幅な前後スライドが可能。同乗する家族に満足してもらえる快適な後席スペースが広がっている。

 

【インテリアを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

スライドドアについても、「HYBRID」系のグレードでは両側、あるいは左側のみ電動式のパワースライドドアとなっていて、使い勝手がいい。このあたりは、スズキの哲学が活きていることを実感させられる。

↑荷物をたくさん持っているときなどに便利なパワースライドドア。また予約ロック機能も追加されており、ドアが閉まるのを待たずに携帯リモコンでドアロックが可能です

 

スズキといえば軽自動車メインの小型車メーカーとして国内で長い歴史と販売実績を持ちながら、ハンガリーやインドでも競争力のあるグローバルモデルを販売している。コストを低く抑えながら、ユーザーのツボを押さえたクルマ造りを得意としており、価格の安い小型車であっても、乗る人の不満が徹底的に改善されている。それが発売から3年経とうとしている現行型ソリオバンディットにもしっかり感じられる。

 

今回試乗したのは「HYBRID MV」というマイルドハイブリッドモデル。最上位のフルハイブリッドモデル「HYBRID SV」に比べると、乗り味はガソリン車感が強く、実際にモーターによるアシストもごく少量となり、EV走行もできない。

 

しかしマイルドハイブリッドであっても十分なほど低燃費(カタログ燃費は19.6km/L)で、静粛性も高い。これこそが長く販売されてきたことで商品力が洗練された結果だ。

 

室内の広大なスペースに反してボディはほどよいサイズにまとめられていることもあり、取り回しの良さは優れている。サスペンションは柔らかめに設定されていて、スポーティな走りは苦手だが、乗り心地は悪くない。このあたりは売れ筋カテゴリーのモデルだけにユーザーの要望を真摯に受けとめた結果といえよう。一方で、ライバルモデルに対して静粛性が高めなのは4気筒エンジンにこだわったスズキらしさだ。

↑パワーユニットは直列4気筒エンジンとモーターの組み合わせで、最高出力は91PS(67kW)/6000rpm、最大トルクは118Nm/4400rpm

 

王道ではないクルマを選ぶなら最適

ライバル車を挙げるなら同クラスの同形状のトヨタ ルーミーになるが、2023年1月〜6月の乗用車販売台数で見るとルーミーは約4万6000台、かたやソリオ(バンディット含む)は約2万7000台である。販売力が違いすぎる相手に対して、善戦しているといえよう。ヤングファミリーや独身層が、王道ではないクルマ選びをするには最適の一台だ。

SPEC【HYBRID MV・2WD】●全長×全幅×全高:3790×1645×1745mm●車両重量:1000kg●パワーユニット:1242cc直列4気筒エンジン+モーター●最高出力:91PS(67kW)/6000rpm●最大トルク:118Nm/4400rpm●WLTCモード燃費:19.6km/L

 

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文・撮影/安藤修也