映画『首』より加瀬亮演じる織田信長(中央)
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 北野武監督が「本能寺の変」を描く映画『首』(公開中)で加瀬亮が演じる織田信長に「ヤバすぎた」「怪演が凄すぎる」「狂いまくってた」などすさまじい反響が寄せられている。

 明智光秀が織田信長に謀反を起こした「本能寺の変」を、北野監督ならではのバイオレンスとユーモアを交えて描く本作。ヤクザたちのパワーゲームを描いた『アウトレイジ』には“全員悪人”のキャッチコピーがつけられていたが、本作でも信長、羽柴秀吉、徳川家康ら三英傑をはじめ名だたる人物が誰一人としてヒロイックに描かれることなく、北野監督自ら演じる秀吉を頂点にした権力争いがブラックコメディーのようなテイストで描かれている。

 キャストもさすが北野組らしく、明智光秀役に西島秀俊、秀吉を支える軍師・黒田官兵衛に浅野忠信、秀吉の弟・秀長に大森南朋、秀吉に憧れる百姓・難波茂助に中村獅童、徳川家康に小林薫、千利休に岸部一徳がふんするほか、木村祐一、遠藤憲一、桐谷健太ら豪華キャストが集結。なかでも、加瀬亮演じる信長への反応が多く寄せられている。

 劇中の信長は光秀をはじめとする家臣たちに殴るわ蹴るわの暴力の限りを尽くし、刀に突きさした饅頭を食べさせたり、「この世の人間、ぜーんぶ血祭りにあげたるだろ」「生きるも死ぬもすべて俺次第だわ」といった暴言で震え上がらせたり、男色三昧。欲望のままに生きる信長に対し、光秀は「ひどいめにあわされても次の天下を考えて我慢しているんだ」と我慢に我慢を重ねながら、野心をふつふつとたぎらせていく。

 加瀬といえば、北野監督の『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』の語学堪能なポーカーフェイスのインテリヤクザもはまり役となっていたが、『首』では常人には理解不能な天下人を終始、リミッターを外したかのようなテンションで怪演。SNSでは「強烈」「ぶっ飛んだ信長」「インパクトすご」「ハマってた」「最高に良かった」「さすが」「演技がエグい」「信長を永遠に見ていたかった」「必見」「キャスティング解釈一致過ぎる」と熱のこもった感想、絶賛の声が吹き荒れている。

 北野監督は、信長を“狂気の人物”として描いたこと、冒頭にその描写を盛り込んだ意図について、「歴史を調べてみると、信長はやっぱり“狂気”の人物。実は何者でもない普通の男だったりもするんだけど、権力者の狂気を孕んでいるから、平気で人を殺す。映画の構成的にも冒頭にショッキングなシーンを持ってこないと観客を引っ張っていけないと思ったので、その信長の“狂気”とそんな主君に仕えながら、したたかに振る舞っている奴を最初に見せようと思ったんだよ」とオフィシャル資料のインタビューで語っている。

 また北野監督は加瀬を信長役にキャスティングした理由を、「信長の肖像画は数枚しか残っていないんだけど、それを見ると小っちゃくて、萬屋錦之介さんや高橋英樹さんが演じた信長とは 全然違う。もっとか細くて、内にシュンと籠った感じの奴なんだけど、狂っちゃってるから手がつけられない。そんな完全にあっち側の世界に行っちゃった人間を北野組の役者でやれるのは誰だ? って考えたときに、ちょうどピッタリだったのが加瀬くんだったんだよ(笑)」と話している。(編集部・石井百合子)