ゆりあVS稟久が勃発。激しい肉弾戦を繰り広げる『ゆりあ先生の赤い糸』<第5話レビュー>
<ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』第5話レビュー 文:くまこでたまこ>
11月16日(木)に第5話が放送された木曜ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』。第5話では、菅野美穂演じる伊沢ゆりあが、自分の恋心を認め、素直に行動する姿が描かれた。
ゆりあと伴優弥(木戸大聖)の胸キュンシーンに大きな反響が集まる一方で、視聴者が驚いたのは、ゆりあと箭内稟久(鈴鹿央士)が激しく衝突するシーン。
放送終了後、X(旧Twitter)では、2人の感情をむき出しにした深夜の肉弾戦に、「取っ組み合いがエグい」「対等だからこその喧嘩」「2人とも激しい…!」という声が多く上がった。
◆菅野美穂と鈴鹿央士の本気すぎる肉弾戦
ゆりあにとって稟久はどんな存在なのだろう。夫の愛人なのか、夫の介護を一緒にやってくれる戦友なのか、はっきりとはわからないけれど、ゆりあの今の生活に稟久は必要不可欠の人間であることは間違いない。
また、稟久にとってゆりあは、これまで出会った人の中で一番信頼できる女性だった。大好きで仕方がない恋人・伊沢吾良(田中哲司)がゆりあのことを信頼していたとしても、それを受け入れることも、同じように信頼することもわりと難しい気がする。
たとえば、「友だちの友だちは仲良くなれない」とよく聞くが、それは案外当たっている。いくら友だちが信頼している友だちであっても、気が合わないことや完全に信頼することはできなかったりする。とくに稟久のようなタイプにはそういうことは無理だと思い込んでいたが、稟久は意外とそうでもなかったようだった。
稟久は吾良が信頼している人を信頼できたし、稟久なりの歩み寄りでゆりあに心を開いていたのだ。また、稟久は個人的にもゆりあという人間を認めていて、なんとなく裏も表も出すことができる仲間ができたように思っていたのかもしれない。
そんななかでゆりあの「裏切り」ともいえる行動をしている現場を目撃しまう。気のせいだろう、見間違いだろうと思いたかったのに、ゆりあの言動からどんどん「裏切り」が確信に変わり、ついには決定打を打たれてしまった。
ある夜、吾良がベッドから落ちてしまうハプニングが発生。稟久がなぜ落ちたかとゆりあに聞いてもゆりあはわからないと答える。その瞬間に、稟久はゆりあが心の赴くまま、優弥に会いに行ったことに感づいてしまった。
稟久は吾良を放置したことを怒っていたかもしれないが、ゆりあに裏切られたことにも怒っていた。そんな稟久の気持ちはちょっぴり鈍感のゆりあにはすぐには届かなかった。
その後、互いに譲らぬ肉弾戦に発展。言いたいことを言い合って、殴ったり、蹴ったりとわりと激しいバトルを繰り広げたゆりあと稟久。喧嘩を終えた2人は、すっきりしないこともあったかもしれないが、どこかすっきりとした表情だった。
男女がこれほどまでに激しい喧嘩をしているシーンは、なかなかない気がする。このシーンはゆりあと稟久の信頼関係のように、互いに信頼し合っていなければできなかったはず。そう考えると、これからも菅野と鈴鹿の信頼関係から生み出される、先輩後輩関係なしの激しいシーンに期待が高まった。
◆呪いを解いたゆりあの言葉
「かわいいものは似合わないと思っていた」。ゆりあは、よくこの言葉を口にする。正直に言うと、筆者自身も同じようなことを思っていた。
ゆりあとはバレエを始めた理由は違うが、私も子どもの頃にバレエを習っていた。その頃、周りには自分よりもかわいい子がたくさんいて、その子たちよりもかわいくない自分が、同じ衣装を着ることが恥ずかしかった。
辞めるか続けるかの決断を迫られたとき、「私はかわいいものは似合わない」という呪いの言葉がきっかけで辞めてしまった。でも、ゆりあと同様にバレエは辞めた今でも大好きなのだ。
第5話では、ゆりあはバレエを習い始める。小山田まに(白山乃愛)の興味津々な様子もゆりあがバレエを再開するきっかけだった。「やりたい!」とうまく言い出せないまにに、ゆりあは「自分の気持ち取り繕わなくてもいいんだよ」と告げる。
自分に呪いをかけるように、かわいいものに興味を持ちながらも、これまでかわいいものを避けてきたまに。ゆりあの言葉は、ゆりあ自身やまにを呪いから解き放ったし、過去の私さえも救ってくれた。
ゆりあがバレエを再開したように、まにがバレエを習うことを決めたように、いつか私も再びバレエを始めようと思う。
◆伊沢節子&伊沢志生里というエッセンス
三田佳子が演じる伊沢節子はゆりあの夫・吾良の母であり、「ご飯どうする?」といつもご飯のことを気にしているイメージがある。
ほんわかしているかと思えば、無意識にゆりあを責めているような発言もあり、愛人たちに比べて、少しイラっとしてしまう視聴者もいるだろう。そんな節子は、第5話では切ない思いをすることに。
ゆりあが大好きな節子は、ある日、ゆりあが吾良に向けて「あんたはもういらないから!」と言っている姿を見掛けてしまう。その後、いつもはゆりあに任せてばかりの家事を手伝ったりと、節子なりにゆりあを引き留めようとする行動に出る。
それだけでも十分心が痛んだのだが、ゆりあと稟久が喧嘩しているところも目撃してしまう節子にさらに切なさが増す。節子のなんとも言えない表情から察するに、すべてを聞いてしまったようだった。今後、節子がどのような対応を見せるのかも気になるところだ。
ゆりあを振り回している人物と言えば、宮澤エマ演じる吾良の実妹・伊沢志生里だ。志生里には「おだまり!」「おまえがいうな!」と、思わず言いたくなってしまう瞬間が多々あったが、話数を重ねるごとに雑に扱われるようになってきたので、どこかすっきりしている自分がいる。
実家に帰って来た志生里は、本当に小山田みちる(松岡茉優)家族を住まわせるのかとゆりあに伝える。続けて、母である節子も我慢しているはずとみちるにも聞こえる声で言うが、節子は楽しそうにまにと帰宅。
そんな節子からは、「おかえり」ではなく、「いらっしゃい」と声をかけられ、「おかしくない!?」と不満をもらす志生里。さらに、まにに「友だちがいなかったの?」と聞かれてむっとしたり、自分の居場所が段々となくなっていくことに不満をもらしたりと、これまでのように、自分中心に勝手なことができない志生里にすっきりとした気分になった。
そんな志生里は、第6話では稟久と結婚すると言い出すようだ。もともと稟久のことを気に入っていた様子の志生里が、どのような考えで、そのような発言をしたのか、今から楽しみで仕方がない。
◆伴優弥を演じる木戸大聖の魅力
本作で女性たちを次々に「沼」に落としているのは木戸演じる伴である。はじめは若き便利屋というポジションで、いろいろ問題を抱えるゆりあにとって唯一の癒やし要員だと思われていた。しかし、今は癒やし要員に加え、胸キュン要因として大活躍しているのだ。
伴の魅力はイケメンというだけではない。無邪気にチョコブラウニーを食べさせてと言ったと思えば、照れるゆりあに「かわいい」と素直に伝えるスマートさを持ち合わせている。
挙げればきりがないほど、胸キュンシーンは多いが、ここまで沼落ちしている人が多いのには理由があるはず。それを考えた結果、伴を演じる木戸の手の演技が上手なのではないかという結論に至った。
韓国ドラマの俳優は目の演技で「好き」を表現するところがいいとよく聞くが、木戸は「好き」を手で表しているように感じた。それは、とくにゆりあとのキスシーンで発揮されている。ゆりあの顔を優しく包み込む瞬間、無邪気な子犬のようなオーラを放っていた優弥から急に色気が出るのだ。本当に同一人物なのか疑いたくなるほど。
また、キスシーンのバリエーションが多いのも優弥というキャラクターの魅力だ。今後のストーリーでもいろいろな優弥が見られると思うと、さらに「沼」に落ちる人が続出するのは間違いないだろう。