滝藤賢一、“憧れの俳優”本木雅弘の指名で共演が実現。間近で見た苦悩する姿に「とても刺激を受けました」

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映画『クライマーズ・ハイ』(原田眞人監督)で注目を集め、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』(本広克行監督)、『半沢直樹』(TBS系)で広く知られることになった滝藤賢一さん。

2014年には、『俺のダンディズム』(テレビ東京系)でテレビドラマ初主演を果たし、広瀬アリスさんとW主演の『探偵が早すぎる』(日本テレビ系)、古舘寛治さんとW主演の『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)、映画『ひみつのなっちゃん。』(田中和次朗監督)、『グレースの履歴』(NHK)など主演作品も多数。2023年10月27日(金)に放送された『今日からヒットマン』(テレビ朝日系)で演じた伝説のヒットマン・二丁役も話題に。

11月11日(土)には、「ヒトiPS細胞」の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授役を演じたドラマスペシャル『友情〜平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」〜』が放送される。

 

◆ダンディな男からやさぐれ刑事に

芸能界きってのファッション通としても知られ、2021年には、『服と賢一 滝藤賢一の「私服」着こなし218』(主婦と生活社)を出版。2014年には、そんな滝藤さんにピッタリの『俺のダンディズム』(テレビ東京系)で連続ドラマ初主演を果たした。

このドラマは、滝藤さん演じる主人公・段田一郎が、お気に入りの部下・宮本南(石橋杏奈)の「ダンディな大人の男性がタイプ」という発言を聞いて、“ダンディな男”になるべく一念発起。腕時計、靴、手帳、シャツ、ネクタイ、スーツなどを買い替えることにする。

――ファッション通の滝藤さんにピッタリでしたが、高級品ばかりでしたね。

「たしかに。『このサラリーマン年収いくらなんだろう?』という感じでしたね(笑)。第1話からいきなりロレックスを買いますからね。あのとき無理してでもロレックスやパテック・フィリップを買っておけば良かったと、後悔しております。今じゃ争奪戦が激しくて買えませんからね」

――時計のほかにも鞄、財布、スーツなどさまざまな一級品が登場しましたが、実際に使われているものはあるのですか。

「スーツをオーダーで2着作っていただいたんですが、当時の体重が55キロだったので、今はもうまったく入らないんですよ(笑)。息子が文化祭でそのスーツを着て、サッカーの監督役で出ていました。めちゃくちゃ格好良かったっすね。何かうれしいやら悔しいやら、複雑な気持ちです(笑)」

2016年には『コールドケース〜真実の扉〜』(WOWOW)に出演。このドラマは、“コールドケース”と呼ばれる未解決凶悪犯罪を扱う捜査チームの活躍を描いたもの。滝藤さんは、ガサツで気が短くて妻にも離婚されているが、正義感が強く、仲間や被害者を思いやる優しさを併せ持つ警部補・立川大輔を演じた。

――ちょっとやさぐれた立川大輔警部補も印象的でした。

「最高ですよね。立川役、カッコいいです。こうやって聞いていると、僕はめっちゃいい作品ばかりに出させてもらっていますね(笑)。幸せだなぁ。なのに最初、立川役でというお話をいただいたときに、立川に魅力を感じず、別の役がやりたいって言ったんです。生意気っすよね。信じられませんよ。あのときのオレに説教してやりたいっす。今は口が裂けても言わないですし、そんなこと思いもしませんよ(笑)。

そんな感じでずっと悩んでいたとき、脚本を書かれていた瀬々(敬久)監督にお会いする機会があり、『瀬々さん、立川どう思われます?』って聞いたら、『立川いいじゃないですか』とおっしゃられて。それで『わかりました、やります』ってお受けさせてもらったんです。

そうしたら、自分で言うのも何だけど、あんなにカッコいい役になったんですよね(笑)。不良性があって、不器用で、曲がったことが大嫌いで男っぽくてね。ああ、またやりたいなぁ、立川」

2018年には、『探偵が早すぎる』(日本テレビ系)に広瀬アリスさんとW主演。滝藤さんは、些細(ささい)な違和感やミスを察知して事前に事件を防ぐ探偵・千曲川光を演じた。

「このドラマは、やりたい放題やらせてもらっていました。僕は格好よくやりたいのに、水野(美紀)さんと(広瀬)アリスが全力で阻止してくるんですよね(笑)。僕にとってご褒美のような作品です」

 

◆美しすぎるドラァグクイーンに

2020年、滝藤さんは、『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)に古舘寛治さんとW主演。このドラマは、不器用にしか生きられない兄弟がひょんなことから「レンタルおやじ」を始め、さまざまな依頼に“四苦八苦”しながら生きていく姿を描いたもの。『重版出来!』(TBS系)や『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)など大人気ドラマの脚本家として知られる野木亜紀子さんのオリジナル作品。

――滝藤さんが、「古舘さんと一緒に何かやりたい」と言ったことから始まったとか。

「いやいや、違います(笑)。古舘さんと何年か振りに湾岸スタジオでお会いして、2人で『何か一緒にやろうよ!』と話して始まった企画です。

撮影の1年前、まだ台本もないのに、2人で表参道の昭和感満載のカフェでお互いの幼少期から学生時代、現代に至るまでの話をしました。あのとき飲んでいたカフェオレのミルクとコーヒーのバランスというか、二重構造が芸術的に美しかったなぁ。古舘さんの話よりも、カフェオレの記憶が残っていますね(笑)。

コタキでのすばらしい経験で、自分発信で企画し、作品を創り上げることが、これからの俳優人生において、常に掲げる目標になりました」

2023年、滝藤さんは、予想をはるかに超える役柄にチャレンジ。初主演映画『ひみつのなっちゃん。』で美貌のドラァグクイーン・バージンを演じた。この映画でバージンは、急死した元ドラァグクイーンのなっちゃん(カンニング竹山)の葬儀に参列するため、友人のモリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)とともに岐阜県郡上市を目指すことになり、道中さまざまな事態が…。

「この役は、正直やっていいのだろうか、と思いました。厳しいチャレンジになると思ったので、監督とプロデューサーと、お受けする前にお話を聞かせてもらいました。

ただ、役者として演じたいという衝動は強かったです。でも『僕がやっていいんだろうか。その役の責任は負えるのだろうか』というのはありました」

――映画のポスターを見たとき、あまりに美しくてビックリしました。からだも仕草もとてもしなやかで。

「ポスターは何万枚も写真を撮った中から、良いのを選んでいますからね(笑)。逆に魅力的な写真じゃなかったら、『おい、もっといいのあったろ!』って、なりますよね(笑)」

――ご自身でご覧になっていかがでした?

「どうですかね(笑)。わからないですけど、監督とは撮影に入る前に、台本1ページ目から全部セッションしたんです。

『これはどういう意味ですか』とか、『こういうことを本当に言うんですか』とか、そういういうのをきっちりやっていたし、みんなの思いが詰まった映画なので、僕の演技がいいかどうかは別として、すごく思い入れのある作品です」

 

◆尾野真千子さんと夫婦役に

2023年3月には主演ドラマ『グレースの履歴』(NHK)で、主人公である製薬会社の研究員・蓮見希久夫を演じた。南仏で起きたバス転落事故で妻・美奈子(尾野真千子)を亡くした蓮見は、美奈子の愛車“グレース”のカーナビの履歴をたどる旅に出る。藤沢、松本、近江八幡、尾道、松山をグレースで巡る旅で蓮見は美奈子の深い愛を知ることになる。

――最初は妻の不貞を疑ったり、ちょっとコメディの要素もありますが、30年ぶりにお母さんと会う回では涙が止まりませんでした。

「ありがとうございます。自分で言うのもなんですが、すばらしい作品だと思います。ガソリンスタンドのおっちゃんに『グレース良かったよぉ』って言われましたから(笑)」

――最初にお話が来たときはいかがでした?

「(事務所の)社長に『これ読んでおいて』って原作を渡されたのですが、何役ですかって聞いたら、その表紙の車に乗っている人って(笑)。え! 表紙の絵に描かれているぐらいだから、主役だよなぁって、驚きましたよ。

僕はどっちかというとエキセントリックな役をずっとやってきている印象があるじゃないですか。30代は、犯人だったらオファーを受けていたところがあったので、穏やかな受け身の男という印象、僕にはないですよね(笑)。チャンスじゃないですか。新たな俳優人生の幕開けというか、新たなステージにチャレンジできることに、興奮しましたね」

――『クライマーズ・ハイ』で共演された尾野真千子さんが妻役でしたね。

「ここでまたこうしてご一緒できるんだなと感慨深かったっす。『クライマーズ・ハイ』から16年ですからね。彼女も僕も人生色々経験してきて、懐かしさと絶対的な信頼があったので、尾野さんにすべてをゆだねていたというか、丸投げでした(笑)」

――尾野さんが演じた妻の夫への愛の深さに驚かされました。

「多分彼女はもともとそういう“愛”の持ち主なんじゃないですかね。何人かで彼女の実家に遊びに行ったことがあるんです。

とてつもなく壮大な山をどこまでもどこまでも登っていくんですよ。もうね、あれこそがTHEてっぺん(笑)。雲が下に見えるぐらいのてっぺんです。『ヘリコプターが下を飛んでいる』って言っていた気がするなぁ(笑)。愛に溢(あふ)れたご家族の中、すばらしい環境で育ったんだなと感じました。妻役が彼女で本当に助けられましたし、僕が持っている以上の力を引っ張り出してくれました」

テレビ朝日系ドラマスペシャル『友情〜平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」〜』
2023年11月11日(土)よる9:00〜10:54放送
脚本:吉田紀子
演出:藤田明二
出演:本木雅弘 滝藤賢一・佐久間由衣 坂東龍汰・賀来千香子 濱田岳 山下真司・倍賞美津子・吉瀬美智子 石田ゆり子

◆憧れの本木雅弘さんとの共演

滝藤さんは、2023年11月11日(土)に放送されるドラマスペシャル『友情〜平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」〜』(テレビ朝日系)に出演。このドラマは、固い友情で結ばれたラグビー界の伝説“ミスターラグビー”平尾誠二さんと2012年に「ヒトiPS細胞」の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授の知られざる実話を描いたもの。

2010年、雑誌の対談で出会い意気投合したふたりは急速に親交を深め、やがて家族ぐるみの付き合いをする親友になる。友情はいつまでも続くと思っていたが、2015年、平尾さんががん宣告を受ける。

平尾さんを演じる本木雅弘さんは、約10年ぶりに民放ドラマに出演。本木さんがまだ出演するかどうか考えているときに山中教授役を誰がやるのかという話になり、滝藤さんをリクエストしたということも話題に。

――本木さんが山中教授役に滝藤さんをリクエストしたとお聞きになったときはいかがでした?

「本木さんの作品は何本も拝見していましたし、憧れの俳優さんなのでうれしかったです。本木さんが『僕が滝藤さんを指名したんだよ』って(笑)。チャーミングですよね(笑)。現場をともにさせていただき、トップを走り続けてきている方だなと感じました」

――ノーベル賞も受賞されて広く知られている方を演じるにあたってプレッシャーは?

「僕はそのプレッシャーよりも『山中伸弥さんを演じられる』とか『本木さんとご一緒できる』とか『このすばらしい作品に参加できる』とか、そっちの喜びのほうが大きかったです。

山中さんに似せるとかは、メイクさんや、衣装さんがやってくれるので、何か真似てしようっていうのはあまり考えなかったです。

山中さんはフルマラソン走ってらっしゃるから、ちょっと僕も走ってみましたけど、5分で足が止まりました(笑)。あと、山中さんの本を何冊も読みましたけど、山中伸弥役を演じるのに役立ったというよりは、僕が生きて行くのに、大いに役立っております(笑)」

――本木さんとの共演はいかがでした?

「本木さんには最初から全幅の信頼を置いていますから、楽しい以外ないですよね。1人で家でセリフを覚えているときから、色々想像して楽しくてしょうがなかったですから。

本木さんは現場ですごく悩みながら平尾誠二さんを構築されていたように思います。これだけの俳優さんでも、苦しみながら、迷いながら、平尾誠二という1人の人間を作っていくんだって。その様を間近で見せていただいて、とても刺激を受けました。

そして、とても短い期間で10キロ以上体重を落とされた姿を見たときは衝撃でした。絶句しましたよ。本木さんの平尾誠二さんにかける思いは壮絶でしたね。撮影のない日も食事制限は続くわけですし、四六時中平尾誠二さんでいるわけですからね。すごいなあって思いました。すばらしい作品が出来上がっているので、多くの方に見てほしいですね」

私生活では4人の子を持つパパ。トーク番組などでお子さんたちの話になったときに涙ぐむほど子煩悩なことでも知られている。エキセントリックな役柄とのギャップも魅力。(津島令子)

ヘアメイク:山本晴奈
スタイリスト:山粼徹