阪神の完璧すぎる勝利を攝津正が解説 「サトテルの二盗→ノイジーの進塁打」「村上頌樹の引き出しの多さ」がリズムを狂わせた
59年ぶりの"関西ダービー"となった阪神とオリックスの日本シリーズが開幕。第1戦は阪神が8対0で快勝した。
オリックス先発の山本由伸、阪神先発の村上頌樹とも立ち上がりから快調なピッチングを見せ、投手戦の様相を呈した。均衡が破れたのは5回、阪神は先頭の佐藤輝明がヒットで出塁すると、すかさず盗塁を決め、ノイジーのライトフライで進塁。つづく渡邉諒が詰まりながらもセンターに弾き返し1点を先制。さらに木浪聖也の安打でチャンスを広げると、近本光司、中野拓夢のタイムリーで、この回一挙4点を奪った。
投げては村上が、オリックス打線を7回2安打無失点に抑える完璧なピッチングを披露。あとを継いだ加治屋蓮、岩貞祐太も危なげないピッチングでオリックス打線を完封し、大事な初戦をとった。勝負の分かれ目はどこにあったのか。解説者で日本シリーズ経験者でもある攝津正氏に聞いた。
5回、ヒットで出塁した佐藤輝明はノイジーの初球に二盗を成功させ流れをつかんだ photo by Saankei Visual
オリックスの山本投手、阪神の村上投手とも序盤からすばらしいピッチングを披露し、投手戦になるだろうと思っていました。ところが5回、佐藤選手がヒットで出塁すると、つづくノイジー選手の初球に盗塁に成功。結果的にこのプレーがポイントになりました。
佐藤選手は今シーズン7盗塁しかしておらず、オリックスバッテリーからするとまったく無警戒ではなかったにしろ、まさか初球から走ってくるとは思わなかったのではないでしょうか。ベンチからのサインなのか、佐藤選手の判断なのかわかりませんが、オリックスバッテリーに動揺を誘ったのは間違いありません。
そしてノイジー選手が逆方向に打って(ライトフライ)、佐藤選手を三塁まで進めましたが、この一打が大きかった。山本投手からすれば、あわよくば三振、少なくとも二塁走者を釘づけにしたかったはずが、わずか6球で一死三塁の好機をつくられてしまった。調子がよかっただけに、一瞬にしてピンチを招いたことでリズムが狂ってしまった印象です。
山本投手は、前回登板のロッテとのクライマックス・シリーズファイナルの時と比べると、調子はよかったと思います。コーナーに決まっていましたし、変化球のキレもよかった。実際、一回り目はタイミングが合っていなかったですし、空振りもとれていた。ただ阪神打線が山本投手の決め球であるフォークにうまく対応してきました。今までこういう対応の仕方はされたことがなかったんじゃないでしょうか。オリックスバッテリーからすればフォークがうまく使えなくなったことで選択肢が狭まったと思いますし、阪神打線のレベルの高さを思い知らされました。
【村上頌樹の引き出しの多さ】一方、阪神先発の村上投手ですが、完璧でしたね。タイミングが合ってきたかと思えば、遅いスライダーやチェンジアップで緩急をつけるなど、引き出しの多さを感じました。
村上投手は球種が豊富で、どの球でもカウントがとれる。また、この日は初球のストライク率がものすごく高く、簡単に追い込んでいました。オリックス打線とすれば、どの球に的を絞ればいいのか最後まで決めきれなかった印象です。
6月に交流戦で村上投手と対戦して、勝利しているオリックスですが、その時よりもいいボールが来ていたんでしょうね。全体的にタイミングが合っていませんでした。
村上投手の好投もあり、敵地で、しかも絶対エースの山本投手を打ち崩して勝利した。阪神にとってはこのうえない勝ち方で大事な初戦をとりました。
逆にオリックスは、ダメージの大きい負けになりました。ただここまで完敗すると、いい意味で開き直れるんじゃないかと思います。おそらく第2戦はオーダーをガラッと変えてくるでしょう。シーズン中も、嫌な負け方をした次の試合はメンバーを変えて対応してきました。そのあたりの切り替えが中嶋聡監督はうまいですので注目したいと思います。
シリーズはまだ始まったばかりです。この先、流れが行ったり来たりすると思いますが、オリックスは絶対に2戦目をとってタイにしたい。阪神は連勝して一気に優位に立ちたい。そういう意味で2戦目は極めて重要な一戦になると思います。