2022−23シーズンをV.LEAGUE DIVISION2 WOMENの群馬グリーンウイングス(入団当時は群馬銀行グリーンウイングス)でプレーした白岩蘭奈は、斎藤真由美監督の下でDIVISON2準優勝を果たし、チャレンジマッチ(入れ替え戦)に臨んだ。岡山シーガルズに敗れて惜しくも昇格はならなかったが、新シーズンに向けて期待は高まっている。

 チームは、2024−25シーズンからスタートする「S-V.LEAGUE」(競技力だけでなく、組織力や事業力などすべての分野で上位のクラブのみが加盟できる現行のリーグの上に創設されるリーグ)に参加するため、一般社団法人を設立してクラブ運営体制の強化を図っている。個人、チームとして飛躍を目指すシーズンの開幕を前に、白岩にこれまでのバレー人生や、グリーンウイングスの斎藤監督の印象、今後の目標などを聞いた。


V2の群馬グリーンウイングスでプレーする白岩蘭奈 photo by Sakamoto Kiyoshi

【昨シーズンは「チームに貢献できた」】

――まずは、あらためて昨シーズンを振り返っていただけますか?

「昨シーズンは自分としてもチームとしても、"全員バレー"への挑戦がありました。その面で選手のモチベーションの作り方、いい部分と改善していかなきゃいけない課題が多く見つかったシーズンでしたね」

――入れ替え戦に敗れ、惜しくも昇格はなりませんでした。

「対戦相手のシーガルズさんはV1でも上位に入ったことがあるチームですから、地力の差や、細かいところでの差は感じました。V1に上がるためには足りない部分が多かったと思います。でも、通用する部分もたくさん見つけられたので、しっかりその経験を踏まえて新シーズンにつなげたいです」

――ご自身のプレーについてはいかがでしたか。

「全員バレーをするうえで、スタートからチームを勢いづけること、苦しい場面で嫌な流れを断ち切るための投入も多かったので、『ここで1点欲しい』というところで決めきることが求められていました。シーズンが進むにつれてよりその役割がしっかり理解できましたし、チームに貢献できたと思います」

【高校、大学でもバレーはやめるつもりだった】

――ここからは、あらためてバレー人生を振り返っていただけたらと思います。まず、競技を始めたきっかけから教えていただけますか?

「両親がママさんバレーに行き始めて、それについていってバレーに触れる機会が増えたことがきっかけです。その後、小学校5年生くらいから私もチームに入りました。あまり試合などをするチームではなかったですが。

 中学でもバレー部に入ったんですが、2年生の時に新しく顧問になった先生が大学まで選手としてプレーしていた経験がある方だったので、練習も厳しくなりました。そこで、ただバレーをするというレベルから、プレーの質を引き上げていただいた。チームも県大会出場を狙えるくらいになりましたし、バレーに対する考え方や関わり方が変わった時期でしたね」

――中学を卒業後、地元・宮城県の県立利府高校に進みます。進学先はどのように決めたんですか?

「宮城県には、今年の春高でも優勝した強豪の古川学園がありますが、私は対抗する高校に行きたかったんです。スポーツ学科で、授業の中でラジオ体操のテストがあったのを覚えています。合格基準がとても厳しくて、毎日必死にラジオ体操したのはなかなかない経験でした(笑)。

 チーム内の私のポジションはレフト。結局は3年間、一度も古川学園に勝つことはできなかったんですけど、県内の大会では常に準決勝くらいまで進めました」

――そこから、新潟医療福祉大学に進んだ理由も聞かせてください。

「今も同大学で指導をされている濱野礼奈監督(元デンソー・エアリービーズ)に声をかけていただいたんです。バレーは高校でやめるつもりで、保育の短期大学に進むことを考えていたんですけど、『何かしらの形でスポーツに関わっていたい』という思いもあって。新潟医療福祉大にはスポーツ学科もあったので進学を決めました」。

――北信越バレーボール大学選手権大会(インカレ北信越予選)での成績は?

「北信越では常に1位でした。大学3年の後半か、4年の始まりくらいまではレフト、最後はライトにポジションをチェンジして、攻撃がメインの"オポジット"としての起用になりました。もともとレセプションは得意ではなかったんですが、得点源のポジションにしていただいたので、『しっかり攻撃の軸になろう』と意識していました」

――そして大学を卒業後、富山県黒部市を本拠地とするV1のKUROBEアクアフェアリーズに入団。新潟医療福祉大学で初のVリーガーとなりました。

「実は、高校の時と同じように大学まででバレーをやめようと思っていて、先生にも『バレーはもういいです』と伝えました。でも、何度か濱野監督と話をして、『プロを目指せると思うから続けてみないか』と。KUROBEは隣県にあるチームで、当時の監督さんともお話をさせていただいたこともあり、入団することになりました」

【元日本代表・斎藤真由美監督はどんな指揮官?】

――2019年2月には内定選手としてV1リーグデビュー。2019−20シーズン終了後にV2のフォレストリーブズ熊本に移籍します。チームの印象や環境はいかがでしたか?

「熊本はイメージよりも寒かったですが、冬でもあまり雪が降らないのは幸せでした(笑)。チームでは打数が多く攻撃面での役割も大きかったですが、レシーブ面でもチームの軸にならないといけなかった。なので、試合を重ねるたびに成長することができたんじゃないかと思います」

――2021−22シーズンはリーグ最多の248得点を記録し、昨シーズンにグリーンウイングスへ。これはどういった経緯があったんですか。

「より自身を高めるための環境を探していた時に、V2の上位チームであるグリーンウイングスも選択肢に挙がって。実際に練習に参加させていただいた時に、選手たちが本当に楽しそうで雰囲気がとてもよく、『ここでプレーしたい』と思ったんです。チームのみなさんが、よく拍手をしてくれることも印象的で、私が最初に挨拶した時も盛大な拍手で迎えてくれました」

――群馬の印象はいかがでしたか?

「夏は熊本よりも暑いですね(笑)。あと、名物の焼きまんじゅうはもちもちとした感じなのかと思っていたのですが、パンのような食感でびっくりしました」

――グリーンウイングの指揮を執るのは、かつてVリーグや日本代表でも活躍した斎藤真由美監督。どんな指揮官ですか?

「最初はリモートでお話しさせていただいたんですが、その時からいろんな話がしやすい、接しやすい方という印象があります。監督が選手時代に、大きなケガをするなど壮絶なバレー人生を歩んできたことも、少しですが話をすることができました。そういった経験をされてきたこともあってか、今は選手を全力でサポートしてくださっています」

――具体的に、どういったサポートがあるんですか?

「自分では気づいていなかった体の細かな部分のケアまで、トレーナーの方などが話し合ってくださっている、ということもあります。常に選手のプラスになるよう動いていただけるのは、本当にありがたいですね。昨シーズンは斎藤監督就任の1年目でV2の2位。今シーズンは確かな実力があることを証明しつつ、さらに上を目指したいです」

――白岩さん個人として、目標にしている選手はいますか?

「今年、引退されてしまったんですが、PFUブルーキャッツでプレーしていた堀口あやかさんですね。大学時代に(堀口がプレーしていた)順天堂大学で練習試合をした時があったんですが、その頃から、小柄(171cm)なのにプレーはパワフルなところに憧れていました」

――白岩さんも169cmとバレー選手としては小柄なほうですが、昨シーズンも167得点を記録するなど得点源として活躍していますね。今シーズンもさらなる活躍が期待されますが、チームとしての目標は?

「来シーズンから始まる『S-V.LEAGUE』に向けてしっかり結果を出さないといけないですし、チームをしっかり強化しないといけない大事な1年になります。上のカテゴリーに上がるだけじゃなく、V1の相手とも対等に戦うために、今シーズンはV2で他のチームを圧倒するくらいの成績を収めないといけないと思っています。結果、チームのパフォーマンスも、昨シーズン以上のものを残したいですね」

――最後に、声出し応援ができるようになった、ファンの方々にメッセージをいただけますか?

「昨シーズンの最後のほうにようやく声出し応援が解禁されました。これまでは、ファンの方と直接関わることは難しかったんですが、グリーンウイングスはSNSなどを通して交流ができるように努力してきました。チームを知っていただく機会も多かったと思うのですが、もっとグリーンウイングスチームを応援したいと思ってもらえるように、『会場に応援しに行きたい』と思ってもらえるように、今シーズンも全員で頑張ります!」

【プロフィール】
白岩蘭奈(しらいわ・らんな)

1996年9月21日生まれ、宮城県出身。群馬グリーンウイングス所属。169cmのアウトサイドヒッター。宮城県立・利府高から新潟医療福祉大を経て2019年にKUROBEアクアフェアリーズに入団。その後、V2のフォレストリーブズ熊本とグリーンウイングスでプレーし、フォレストリーブズ時代の2021−22シーズンはリーグ最多の248得点を記録した。