ハンドヘルドゲーミングPC「AYANEO AIR」を持ち出して思い出す、筆者45年にわたる“モバイルゲーム”の軌跡
ボードゲームを電車でプレイした学生時代
「ゲームをやるなら移動中に限る」
これはゲームをやりまくって45年になる私の考えだ。
今や電車に乗って移動している人の多くがスマートフォンでゲームをやりまくる世の中になった。佳きかな佳きかな。
移動時間を退屈せずに過ごせることは当然として、移動中ならだれにも邪魔をされずに黙々とゲームに集中していても誰からも文句を言われない。特に通勤通学の一人で移動しているときなら、家族に話しかけられてプレイの大事な局面を邪魔されることもなければ、大事な局面を優先するために話しかけてきた家族を無視したがために、あとあと揉めることもない。いや別に自分の経験でいっているわけじゃないから。
自分一人で好きなだけゲームに没頭できる至福のとき。それが移動中のゲーム時間だ。そのおかげで「大都会で利用する近郊電車にのる十数分のスキマ時間」を無味乾燥な空白の無駄な時間から有意義で生きた時間にしてくれる。
ゲームがもたらしてくれる幸せは“スキマ時間”に限らない。短くて2〜30分、長い人なら2時間ちょっとという「通勤通学時間」もまた、まとまった時間を日々ゲームに堂々と費やせる幸せなひと時だ。これぐらいまとまっていればスキマ時間ではない。1つのことにガッツリ使えば相当な蓄積となる。
これほどまとまった時間なら「十数分のスキマ時間を埋めてくれさえすれば十分なライトなゲームとスマートフォン」を超えるゲームとプラットフォームでもいい。超個人的経験でいうならば、ゲームとプラットフォームはデジタルに限らない。やる気と執念と工夫があれば“大規模”なアナログゲームだって移動中にプレイできる。
そう、思い返すのはいまから45年前、まだ年号が昭和だったころ。大学生だった私は東北の街から東京に「楽器を習うため」毎月通っていた。既に東北新幹線は開業していたが、金のない私は夜行の「急行八甲田」を使って往復していた。上野駅を21時ちょっと前に出発すると、下車駅に到着するころには日付が変わっていた。急行八甲田は長距離夜行なのに座席車両しかないので横になって寝る、ということはできないけれど、それでも練習で疲れた身体は眠気に耐えきれず居眠りをしてしまう。しかし寝てしまったら終着駅ははるか青森だ。寝過ごすわけにはいかない。
私はあまりにも危険な寝過ごしを防ぐために、夜行乗車中の数時間をボードウォーゲーム』FLAT TOP』のソロプレイにガッツリ費やすことになる。FLAT TOPは太平洋戦争で起きた“空母戦”をはじめとする洋上作戦を題材とするボードウォーゲームで、艦隊や航空編隊の動きを「メインマップ(横111.8×縦71.1cm)を縮小した紙のミニマップにペンで記入」し、艦隊に所属する艦船や航空編隊を構成する航空機の数は表を印刷したシートで管理する。
なので、ペンとミニマップと表を時系列単位で記入するようにしたノートを用意すれば“深夜急行”に乗車する数時間は“机上の空母戦”にがっつり没頭することになる。この経験は私が「ゲームをやるなら移動中に限る」と考えるようになる原点だ。これもまた筆者のモバイルゲーミング環境を大きく変革した、ノートPCの「Dynabook SS」が登場するほんの数年前のことだ。
太平洋戦争の空母戦を題材にしたボードウォーゲーム「FLAT TOP」(邦題「日米航空母艦の戦い」)を実際にプレイしている風景。けっこう大掛かり
でも、プレイの多くの時間は航空編隊や艦隊の行動を管理する“事務作業”に費やすことになる(これがまた楽しいのだ)。この事務作業の部分に必要なコンポーネントを用意すれば電車の中でもFLAT TOPをプレイできるようになる
Dynabook SSで通勤中にHarpoonで戦った新人時代
就職してボーナスが出て、“金のない学生”から多少まとまってお金を手にできた社会人になれたタイミングで登場したのが、「電車で移動中に使えるノートPC」のDynabook SSだった。IBM XT互換だったがゆえに当時日本で主流だった「PC-9801版」のPCゲームが動かないため、PCゲーマーからは無視されていたDynabook SSだが、世界で主流の「IBM XT版」が動作した。いや当時はIBM ATがすでに主流で、IBM XT互換のDynabook SSでは解像度がCGA対応モードしか動かなかったけれど。
私がゲームで(唯一)関心あるウォーゲームジャンルのPCゲームタイトルでいうと、PC-9801版では「大戦略」シリーズと光栄のラインアップが主流で、ボードウォーゲームになれた身体には「これをウォーゲームというのは違和感ありまくり」だったが、一方のIBM互換版にはちょうどそのタイミングで現代海戦を題材にした名作『Harpoon』が登場した。
精緻にデータ化された現用艦艇を指揮して対潜ヘリで敵潜水艦を狩り、多種多彩な現用機を指揮して来襲する敵の空襲を早期警戒機で探知して迎撃し、飛来する対艦ミサイルを対空ミサイルで撃ち落としつつ反撃の対艦ミサイルを発射する。これらが座標で管理される1隻単位の艦艇と航空機からリアルタイムで動いていく。
データの緻密さと正確さ、そしてシナリオの設定と部隊指揮のリアリズムにどっぷりはまってしまった私は、その後、SSI(Strategic Simulations)の『CARRIER STRIKE』『Pacific War』に、SSG(Strategic Studies Group)の『Carriers At War』にこれまたずぶずぶと沈んでいくことになる。CARRIER STRIKEは戦術級空母戦、Pacific Warは戦略級太平洋戦争のボードゲームをPCに移植したテイストのデザインだった。
Carriers at WarはCARRIER STRIKEと同じ戦術級空母戦だが、プレイヤーが出した命令、例えば攻撃隊を編成して攻撃目標を設定すれば、武装や燃料補給といった発艦準備から発艦して目標に向かっての移動、目標の攻撃、そしてその後自分の空母に戻ってきて着艦までをシステムが自動で進める「コマンドコントロール」を導入した「ゲームをコンピューターですることの意義」を示したところが高く評価された。
ちなみに、当時IBM互換PCで動作する海外製のPCゲームを日本で入手しようとした場合、秋葉原公園の近くにあったPCゲームショップ「オーク」で購入するか、米国のコンピューターゲーム専門雑誌で日本でも購入できた「COMPUTER GAMING WORLD」の広告に出稿していたCIPS&BITSかViking SoftwareにFAX(!)で注文するしかなかった。時は1990年代前半。おお!まさに「16bitセンセーション ANOTHER LAYER」の時代。
1990年代前半に購入して実際にプレイしたIBM互換機対応のPC“ウォー”ゲームたち。見よ、これが3.5インチと5.25インチのフロッピーディスクだ!
満員電車でMadden NFLを立ってプレイした中堅時代
これまで書いてきたように、このころの筆者は「通勤中にノートPCでゲームに没頭」していたわけだが、これができていたのには特殊な事情があった。それは、偶然にも筆者が住んでいた地元の駅が始発であったり勤務地が都内の“僻地”であったりしたので、長い通勤時間(“片道”で1時間半ちょっとはかかっていたね)にまるっと座ることができたおかげだった。
その後、筆者は転職して都心部に職場が変わったのだが、通勤時間が短くなった代わりに満員に近いぎゅうぎゅうな電車となったのと、路線が変わって地元駅が始発じゃなくなったことからそれまでの「座ってノートPCを広げて通勤」ができなくなってしまった。混んでいる電車で立ったままクラムシェルスタイルのノートPCを開いて操作することは困難だしストレスだし、かといって、Game Boyで遊べるゲームタイトルには本格的なウォーゲームはないし(あ、でも、ポケモンはハマっちゃったのよね……)。
そんな筆者の前に登場したのが「PSP」こと「PlayStation Portable」だった。とにもかくにも高画質なのに満員電車で苦も無く持ち続けることができる本体サイズがよかった。入手できるゲームタイトルが限られていたけれど(日本で入手できるウォーゲームっ“ぽい”のは「大戦略ポータブル」に「太平洋の嵐 〜戦艦大和、暁に出撃す!〜」ぐらい)、海外タイトルならば本格的なミリタリーFPSで精密な軍事関連設定とリアルタイム対戦モードをカバーしていた「SOCOM」シリーズやスポーツながら局面に合わせて高度な作戦立案が求められるアメリカンフットボールシミュレーションゲーム「Madden NFL」シリーズに、これまた深く深くのめりこんでいった。
SOCOMもMadden NFLも本格的な設定ができるので面白い。面白いのだけれども……。
超個人的にはやっぱり本格的なウォーゲームをやりたい。
……となるとどうしてもPCゲームとなる。
いま、AYANEO AIRで立ったままPCゲームをプレイする
2000年代後半からタブレットPCやAndroidタブレット(DOSエミュレーターで“いにしえ”のSSIやSSGのゲームタイトルを動かせた)のも登場したけれど、いかんせん、ハードウェアのキー、せめて、カーソルキーぐらいないとタッチ操作オンリーではウォーゲーム系の操作は面倒極まる。
しかし、2020年に入ってPSPに近い形状をしたWindows PCが複数のベンダーから登場した。おお、これなら電車で立ったままでもPCゲームが堪能できるじゃないか。
AYANEOの「AYANEO AIR」もそういう“PSP”スタイルのPCだ。日本ではハイビームが国内総代理店となって扱っているAYANEOシリーズは、このAIRのほかに「AYANEO 2021 Pro」「AYANEO Kun」を擁している。
これらほかのラインアップと比べるとAYANEO AIRの特徴は、「圧倒的に軽い」ことだろう。他の上位ラインアップが600g、900g超えだったのがAIRの本体重さは約398gにとどまっている。このおかげで「電車で立って使おう」という気になるのだから300g、500gの差は大きい。なお、本体のサイズもAIRは約224×89.5×26mmと持ちやすい。
AYANEOの“PSP”スタイルPC「AYANEO AIR」は何といっても約224×89.5×26mm、398gという軽量小型が魅力だ
ただ、本体を軽くコンパクトにしたトレードオフとして、処理能力は上位ラインナップと比べて抑えめだ。CPUは最新の「Zen 3」アーキテクチャを導入した「Ryzen 5 5560U」(6コア12スレッド、動作クロック2.3GHz/4.0GHz、L3キャッシュメモリ8MB)で、グラフィックス処理は統合したRadeon Graphics(6コア、1.6GHz)を利用する。
ただ、グラフィックス効果に関しては最新の機能をカバーしているので、画質自体は精細で美しい。また、AIRが搭載するディスプレイは有機ELパネルを採用しているので発色も鮮やかだ。
サイズ5.5型のディスプレイの解像度は1,920×1,080ドット。有機ELパネルを採用するので発色が鮮やかだ
試しに「F1 22」でグラフィックス設定を最低限にした状態で動かしてみたところ、ゲームの起動シークエンスやメニュー選択画面では、“なかなか”の時間を要するが、いったんレースが始まるとリアルなレースシーンを堪能できた。
AYANEO AIRの処理能力とシステム構成を3DMark Time Spyでチェックしてみた
ユーティリティ「AYAQuikeTool」ではCPUの動作モードを変更できる。駆動電圧を上げてクーラーファンの騒音と表面温度の熱さとの引き換えに処理能力を上げてくれる「Pro mode」を用意している
AYANEO AIRのディスプレイは解像度が1,920×1,080ドットと高解像度だがサイズが小さいので細かい表示を把握するのが難しい。AYANEO AIRのグラフィックス描画能力は「やや控えめ」なので、高度なグラフィック処理は時間がかかってストレスになる。
以上の理由から、美しいグラフィックスをグリグリゴリゴリ描画するゲームよりはストラテジー系、そう、まさにウォーゲーム系のタイトルが向いている。
多種多様なジャンルのゲームが存在するPCゲームだけにウォーゲームテイストのタイトルも少なくない。この種の製品で最も高度なものの1つがこの記事の冒頭でも紹介した「Harpoon」の子孫ともいえる「Command: Modern Operations」だ。
ただ、こちら、画面表示情報量が多いのと、リアルタイムシミュレーターの側面もあるため、AYANEO AIRのディスプレイで操作するには少々厳しい。ボードウォーゲームテイストが色濃く残る“ターン制”の「WAR PLAN PACIFIC」や「War in the Pacific - Admiral's Edition」(こちらもこの記事の冒頭で紹介した「Pacific War」の子孫だ)なら、AYANEO AIRでプレイするボードウォーゲームとしては最適だろう。
ゲームをやるなら移動中に限る
これを平成の初めころに主張していた“少数の仲間たち”は、「電車の中でPCを広げるなんてみっともない」と大勢の大人たちから非難された。しかし、これが正しかったことは今電車の中を見渡せば示してくれる。エライ文化人が活字に親しめ愚かモノにと言っていたような気もするが、PCだろうとタブレットだろうとスマートフォンだろうと、みんなもっともっと移動中にゲームで遊ぼう。充実した時間と経験と知見をもたらしてくれるはずだから。
「ゲームをやるなら移動中に限る」
これはゲームをやりまくって45年になる私の考えだ。
今や電車に乗って移動している人の多くがスマートフォンでゲームをやりまくる世の中になった。佳きかな佳きかな。
移動時間を退屈せずに過ごせることは当然として、移動中ならだれにも邪魔をされずに黙々とゲームに集中していても誰からも文句を言われない。特に通勤通学の一人で移動しているときなら、家族に話しかけられてプレイの大事な局面を邪魔されることもなければ、大事な局面を優先するために話しかけてきた家族を無視したがために、あとあと揉めることもない。いや別に自分の経験でいっているわけじゃないから。
ゲームがもたらしてくれる幸せは“スキマ時間”に限らない。短くて2〜30分、長い人なら2時間ちょっとという「通勤通学時間」もまた、まとまった時間を日々ゲームに堂々と費やせる幸せなひと時だ。これぐらいまとまっていればスキマ時間ではない。1つのことにガッツリ使えば相当な蓄積となる。
これほどまとまった時間なら「十数分のスキマ時間を埋めてくれさえすれば十分なライトなゲームとスマートフォン」を超えるゲームとプラットフォームでもいい。超個人的経験でいうならば、ゲームとプラットフォームはデジタルに限らない。やる気と執念と工夫があれば“大規模”なアナログゲームだって移動中にプレイできる。
そう、思い返すのはいまから45年前、まだ年号が昭和だったころ。大学生だった私は東北の街から東京に「楽器を習うため」毎月通っていた。既に東北新幹線は開業していたが、金のない私は夜行の「急行八甲田」を使って往復していた。上野駅を21時ちょっと前に出発すると、下車駅に到着するころには日付が変わっていた。急行八甲田は長距離夜行なのに座席車両しかないので横になって寝る、ということはできないけれど、それでも練習で疲れた身体は眠気に耐えきれず居眠りをしてしまう。しかし寝てしまったら終着駅ははるか青森だ。寝過ごすわけにはいかない。
私はあまりにも危険な寝過ごしを防ぐために、夜行乗車中の数時間をボードウォーゲーム』FLAT TOP』のソロプレイにガッツリ費やすことになる。FLAT TOPは太平洋戦争で起きた“空母戦”をはじめとする洋上作戦を題材とするボードウォーゲームで、艦隊や航空編隊の動きを「メインマップ(横111.8×縦71.1cm)を縮小した紙のミニマップにペンで記入」し、艦隊に所属する艦船や航空編隊を構成する航空機の数は表を印刷したシートで管理する。
なので、ペンとミニマップと表を時系列単位で記入するようにしたノートを用意すれば“深夜急行”に乗車する数時間は“机上の空母戦”にがっつり没頭することになる。この経験は私が「ゲームをやるなら移動中に限る」と考えるようになる原点だ。これもまた筆者のモバイルゲーミング環境を大きく変革した、ノートPCの「Dynabook SS」が登場するほんの数年前のことだ。
太平洋戦争の空母戦を題材にしたボードウォーゲーム「FLAT TOP」(邦題「日米航空母艦の戦い」)を実際にプレイしている風景。けっこう大掛かり
でも、プレイの多くの時間は航空編隊や艦隊の行動を管理する“事務作業”に費やすことになる(これがまた楽しいのだ)。この事務作業の部分に必要なコンポーネントを用意すれば電車の中でもFLAT TOPをプレイできるようになる
Dynabook SSで通勤中にHarpoonで戦った新人時代
就職してボーナスが出て、“金のない学生”から多少まとまってお金を手にできた社会人になれたタイミングで登場したのが、「電車で移動中に使えるノートPC」のDynabook SSだった。IBM XT互換だったがゆえに当時日本で主流だった「PC-9801版」のPCゲームが動かないため、PCゲーマーからは無視されていたDynabook SSだが、世界で主流の「IBM XT版」が動作した。いや当時はIBM ATがすでに主流で、IBM XT互換のDynabook SSでは解像度がCGA対応モードしか動かなかったけれど。
私がゲームで(唯一)関心あるウォーゲームジャンルのPCゲームタイトルでいうと、PC-9801版では「大戦略」シリーズと光栄のラインアップが主流で、ボードウォーゲームになれた身体には「これをウォーゲームというのは違和感ありまくり」だったが、一方のIBM互換版にはちょうどそのタイミングで現代海戦を題材にした名作『Harpoon』が登場した。
精緻にデータ化された現用艦艇を指揮して対潜ヘリで敵潜水艦を狩り、多種多彩な現用機を指揮して来襲する敵の空襲を早期警戒機で探知して迎撃し、飛来する対艦ミサイルを対空ミサイルで撃ち落としつつ反撃の対艦ミサイルを発射する。これらが座標で管理される1隻単位の艦艇と航空機からリアルタイムで動いていく。
データの緻密さと正確さ、そしてシナリオの設定と部隊指揮のリアリズムにどっぷりはまってしまった私は、その後、SSI(Strategic Simulations)の『CARRIER STRIKE』『Pacific War』に、SSG(Strategic Studies Group)の『Carriers At War』にこれまたずぶずぶと沈んでいくことになる。CARRIER STRIKEは戦術級空母戦、Pacific Warは戦略級太平洋戦争のボードゲームをPCに移植したテイストのデザインだった。
Carriers at WarはCARRIER STRIKEと同じ戦術級空母戦だが、プレイヤーが出した命令、例えば攻撃隊を編成して攻撃目標を設定すれば、武装や燃料補給といった発艦準備から発艦して目標に向かっての移動、目標の攻撃、そしてその後自分の空母に戻ってきて着艦までをシステムが自動で進める「コマンドコントロール」を導入した「ゲームをコンピューターですることの意義」を示したところが高く評価された。
ちなみに、当時IBM互換PCで動作する海外製のPCゲームを日本で入手しようとした場合、秋葉原公園の近くにあったPCゲームショップ「オーク」で購入するか、米国のコンピューターゲーム専門雑誌で日本でも購入できた「COMPUTER GAMING WORLD」の広告に出稿していたCIPS&BITSかViking SoftwareにFAX(!)で注文するしかなかった。時は1990年代前半。おお!まさに「16bitセンセーション ANOTHER LAYER」の時代。
1990年代前半に購入して実際にプレイしたIBM互換機対応のPC“ウォー”ゲームたち。見よ、これが3.5インチと5.25インチのフロッピーディスクだ!
満員電車でMadden NFLを立ってプレイした中堅時代
これまで書いてきたように、このころの筆者は「通勤中にノートPCでゲームに没頭」していたわけだが、これができていたのには特殊な事情があった。それは、偶然にも筆者が住んでいた地元の駅が始発であったり勤務地が都内の“僻地”であったりしたので、長い通勤時間(“片道”で1時間半ちょっとはかかっていたね)にまるっと座ることができたおかげだった。
その後、筆者は転職して都心部に職場が変わったのだが、通勤時間が短くなった代わりに満員に近いぎゅうぎゅうな電車となったのと、路線が変わって地元駅が始発じゃなくなったことからそれまでの「座ってノートPCを広げて通勤」ができなくなってしまった。混んでいる電車で立ったままクラムシェルスタイルのノートPCを開いて操作することは困難だしストレスだし、かといって、Game Boyで遊べるゲームタイトルには本格的なウォーゲームはないし(あ、でも、ポケモンはハマっちゃったのよね……)。
そんな筆者の前に登場したのが「PSP」こと「PlayStation Portable」だった。とにもかくにも高画質なのに満員電車で苦も無く持ち続けることができる本体サイズがよかった。入手できるゲームタイトルが限られていたけれど(日本で入手できるウォーゲームっ“ぽい”のは「大戦略ポータブル」に「太平洋の嵐 〜戦艦大和、暁に出撃す!〜」ぐらい)、海外タイトルならば本格的なミリタリーFPSで精密な軍事関連設定とリアルタイム対戦モードをカバーしていた「SOCOM」シリーズやスポーツながら局面に合わせて高度な作戦立案が求められるアメリカンフットボールシミュレーションゲーム「Madden NFL」シリーズに、これまた深く深くのめりこんでいった。
SOCOMもMadden NFLも本格的な設定ができるので面白い。面白いのだけれども……。
超個人的にはやっぱり本格的なウォーゲームをやりたい。
……となるとどうしてもPCゲームとなる。
いま、AYANEO AIRで立ったままPCゲームをプレイする
2000年代後半からタブレットPCやAndroidタブレット(DOSエミュレーターで“いにしえ”のSSIやSSGのゲームタイトルを動かせた)のも登場したけれど、いかんせん、ハードウェアのキー、せめて、カーソルキーぐらいないとタッチ操作オンリーではウォーゲーム系の操作は面倒極まる。
しかし、2020年に入ってPSPに近い形状をしたWindows PCが複数のベンダーから登場した。おお、これなら電車で立ったままでもPCゲームが堪能できるじゃないか。
AYANEOの「AYANEO AIR」もそういう“PSP”スタイルのPCだ。日本ではハイビームが国内総代理店となって扱っているAYANEOシリーズは、このAIRのほかに「AYANEO 2021 Pro」「AYANEO Kun」を擁している。
これらほかのラインアップと比べるとAYANEO AIRの特徴は、「圧倒的に軽い」ことだろう。他の上位ラインアップが600g、900g超えだったのがAIRの本体重さは約398gにとどまっている。このおかげで「電車で立って使おう」という気になるのだから300g、500gの差は大きい。なお、本体のサイズもAIRは約224×89.5×26mmと持ちやすい。
AYANEOの“PSP”スタイルPC「AYANEO AIR」は何といっても約224×89.5×26mm、398gという軽量小型が魅力だ
ただ、本体を軽くコンパクトにしたトレードオフとして、処理能力は上位ラインナップと比べて抑えめだ。CPUは最新の「Zen 3」アーキテクチャを導入した「Ryzen 5 5560U」(6コア12スレッド、動作クロック2.3GHz/4.0GHz、L3キャッシュメモリ8MB)で、グラフィックス処理は統合したRadeon Graphics(6コア、1.6GHz)を利用する。
ただ、グラフィックス効果に関しては最新の機能をカバーしているので、画質自体は精細で美しい。また、AIRが搭載するディスプレイは有機ELパネルを採用しているので発色も鮮やかだ。
サイズ5.5型のディスプレイの解像度は1,920×1,080ドット。有機ELパネルを採用するので発色が鮮やかだ
試しに「F1 22」でグラフィックス設定を最低限にした状態で動かしてみたところ、ゲームの起動シークエンスやメニュー選択画面では、“なかなか”の時間を要するが、いったんレースが始まるとリアルなレースシーンを堪能できた。
AYANEO AIRの処理能力とシステム構成を3DMark Time Spyでチェックしてみた
ユーティリティ「AYAQuikeTool」ではCPUの動作モードを変更できる。駆動電圧を上げてクーラーファンの騒音と表面温度の熱さとの引き換えに処理能力を上げてくれる「Pro mode」を用意している
AYANEO AIRのディスプレイは解像度が1,920×1,080ドットと高解像度だがサイズが小さいので細かい表示を把握するのが難しい。AYANEO AIRのグラフィックス描画能力は「やや控えめ」なので、高度なグラフィック処理は時間がかかってストレスになる。
以上の理由から、美しいグラフィックスをグリグリゴリゴリ描画するゲームよりはストラテジー系、そう、まさにウォーゲーム系のタイトルが向いている。
多種多様なジャンルのゲームが存在するPCゲームだけにウォーゲームテイストのタイトルも少なくない。この種の製品で最も高度なものの1つがこの記事の冒頭でも紹介した「Harpoon」の子孫ともいえる「Command: Modern Operations」だ。
ただ、こちら、画面表示情報量が多いのと、リアルタイムシミュレーターの側面もあるため、AYANEO AIRのディスプレイで操作するには少々厳しい。ボードウォーゲームテイストが色濃く残る“ターン制”の「WAR PLAN PACIFIC」や「War in the Pacific - Admiral's Edition」(こちらもこの記事の冒頭で紹介した「Pacific War」の子孫だ)なら、AYANEO AIRでプレイするボードウォーゲームとしては最適だろう。
ゲームをやるなら移動中に限る
これを平成の初めころに主張していた“少数の仲間たち”は、「電車の中でPCを広げるなんてみっともない」と大勢の大人たちから非難された。しかし、これが正しかったことは今電車の中を見渡せば示してくれる。エライ文化人が活字に親しめ愚かモノにと言っていたような気もするが、PCだろうとタブレットだろうとスマートフォンだろうと、みんなもっともっと移動中にゲームで遊ぼう。充実した時間と経験と知見をもたらしてくれるはずだから。