退職金1億円突破へ川勝知事、追い詰められ給与返上も「退職金ゼロ公約は知らんぷり」…またか!新たに打ち出したリニア妨害難癖

写真拡大

 元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「静岡県の川勝平太知事が、リニア中央新幹線の着工を妨害する新たな難くせを発見した」と嘆くーー。

川勝平太知事に対して、静岡県議会も激怒している

 静岡県の川勝平太知事が、「(御殿場市は)コシヒカリしかない、だから飯だけ食って、それで農業だと思っている」と決めつけ、大いに県民の反感を買ったことに対して、給与・ボーナス返上の意向を示しておきながら、放置していた問題で、県議会は、10月15日、知事が出したおよそ440万円を返上するための給与減額の条例案を可決した。

 さらに、同条例案に加えて、県議会の意見として、「給与の減額は、コシヒカリ発言を受けて県議会で可決されたおととしの辞職勧告になんら影響を及ぼすものではないと自覚することを求める」などとして知事の猛省を促す異例の付帯決議案も可決した。

 川勝知事は、この条例案可決を受けたコメントで「議案を提出できたのは、県民の皆様に声をあげてもらったからだ。条例案が可決され、議員の皆様にも合わせて感謝したい」などと述べているが、心にもない大嘘とはこのことだろう。

 実際には、7月6日、川勝知事は静岡第一テレビの取材に対して、「返上は私の意思なんですが、令和3年、知事選、参議院の補選、衆議院選挙と激しい選挙があって、そのあと議会が非常に私に対して厳しくなった、その過程でいわゆる給料の返上は相手にされなかった」とし、記者からの「県民との約束を守れなかったことについては?」との問いかけに対して、「約束をしていません」とそのままボーナスを持ち逃げする意向を示していた。

「退職金ゼロ」を公約にしておきながら、退職金1億2000万円をもらっている大嘘つき

 しかし、川勝知事の給与・ボーナスを巡っては、まだ果たされていていない公約がある。2009年の知事選で川勝知事は「退職金ゼロ」を公約にしていたものの、<知事の退職金を支給しない条例をつくり、受け取らなかった。2期目は『受け取ることが望ましい』との県審議会の答申に従い受け取っている>(中日新聞)。3期目と併せて、合計8100万円の退職金をもらっている。次の任期でさらに約4000万円を受け取る計算となり、退職金の総額は1億2000万円となる。いくらなんでも退職金ゼロが1億円突破とは、違和感しか覚えないのは、私だけではないだろう。

 今回の問題で、川勝知事は「また不適切発言をすれば辞職する覚悟で職務にあたる」としているが、不適切発言かどうかを決めるのは、川勝知事は自分だと考えているであろうから、何を言ったところで辞任する気もなく、退職金も任期ごとにもらいつづけるということだ。

山梨では遠くに貫通式をしたリニア中央新幹線。川勝知事の妨害はいつまで続くのか

 それにしても、「県知事」という役職の権力の大きさを今さらながらに思い知らされる。リニア中央新幹線という国家の威信をかけた事業でも、川勝知事による難クセによって、静岡工区は工事に入ることすらできないままだ。

 県知事からの邪魔が入らなかった山梨工区では、10月13日、リニア中央新幹線の「第一南巨摩トンネル」の貫通式が行われた。JR東海によると、このトンネルは、掘削延長およそ710メートル、横幅およそ13メートル、高さおよそ8メートルで、2022年3月から掘削を進めてきた。品川―名古屋間の路線で新たに設けられる約20本のトンネルのうちの1本だが、大きな一歩を踏み出したことになる。

 2023年3月の時点で工事に必要な土地の権利をもつ権利者のうち、およそ65%の人と取得に関する契約を締結したという。工事費の見込みはおよそ7兆円、2027年の開業を目指しているが、川勝知事の妨害工作にあい、この時期の開業は不可能だと言われている。

川勝知事がまた新しい難くせを発見してしまった…

 川勝知事は、またしても、新しい難くせを発見したようだ。10月10日の記者会見では、意気揚々と、リニアの工事を認めない新しい論点を出してきた。まず、川勝知事の会見での発言を引用してみる。

「南アルプスの自然環境を保全する、生態系を保全するというのは、国策というべきものである。なぜかというと、それが国立公園であり、またユネスコのエコパークに認定されているからである」

「国策である南アルプスの自然環境の保全、国家的な責務である、あるいは国際的な責務であるユネスコのバイオスフィアリザーブ、日本語で言うエコパークを保全するというのは、文字通り国家が関与しているわけである。これと民間会社がやっている経営の自由と投資の自主性という自由をどう両立させるか、そのボールはJR東海にあると思っている。民間企業が行っている事業であるため、決定は鉄道局も国土交通大臣もあるいは総理大臣もなせる形に法律上なっていない」

 この「エコパーク」という論点だが、川勝知事が自信ありげに繰り返すわりに、まったく無意味なミスリードでしかないのが実態だ。文部科学省のホームページ(「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」https://www.mext.go.jp/unesco/005/1341691.htm)でも確認できることだが、「世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然を厳格に保護することを主目的とするのに対し、ユネスコエコパークは自然保護と地域の人々の生活(人間の干渉を含む生態系の保全と経済社会活動)とが両立した持続的な発展を目指しています」というのが趣旨である。縄文時代に戻り環境に影響を及ぼす経済社会活動をすべからく止めようというものではない。

 林業では、木を伐採するが、持続可能な範囲での伐採となる。自然への負荷を最小限に止めようというものであり、一切、何もしてはいけないなどというものではないということだ。

川勝知事「私がJR東海の意思決定者なら、今の川勝と話して解決策を出せる」という謎発言

 他にも、知事として、増長しているとしか思えない発言が増えている。以下のようなテレ

ビ静岡の記者とのやりとりがあった。

<テレビ静岡>
知事が4期目に当選をされた時に、報道の質問に対して、「リニアに関して、ある程度の道筋をつけたい」ということを仰ったと記憶しているが、残り、任期としては2年を切っているわけで、その中で現状、議論は一定程度進んでいると先ほど仰っていたが、道筋は立っていない状況だと考える。残りの2年弱の間で、当初、知事が仰った通り道筋は立てられるのか、それともそれは不可能か?

<川勝知事>
これは大きなビッグ・イフ(Big if・仮定の話)だが、もし私がJR東海の意思決定者であれば、現在の川勝と膝をつき合わせて話して、その場で解決策を出せるという自信はある

 実は、川勝知事は同じ趣旨の発言を今年2月に静岡朝日テレビで放送されたリニア番組でも行っている。

まるで昔の反社会的勢力のような川勝知事

 ゴールポストを動かし続けて、一切のリニア工事を止めておいて「自分がJR東海の担当者であれば、解決策を出せるという自信はある」と言うのは、自分から要求を突きつけると恐喝になってしまうから、相手に言わせようとする昔の暴力団や反社会的勢力のやり方そのものではないだろうか。

 そもそも、これだけ多くの関係者に迷惑をかけて止めているプロジェクトについて、問題解決の策があるならなぜ提示しないのか。この発言と併せて、「ボールはJR東海にある」と繰り返し発言していることからも、JR東海に何か寄越せということを遠回しに言っている、もしくは昔自身が主張したルート変更をJR東海に言わせようとしているくらいにしか思えない。

 引くに引けなくなった焦りにも感じるが、そもそもJR東海は、すでに静岡県民に対して、さまざまな施策を行っている。リニア開通で、新幹線の停車も増える。恫喝という恥ずべき行為をはじめた県のトップの態度をみて、静岡県民は何を思うのだろうか。あまりに下品ではないか。