J2に降格する1チームはどこだ 湘南か横浜FCか? 柏レイソルは残留当確?
J1残留争いに加わっている柏レイソルと湘南ベルマーレ
今季J1リーグにおいて、J2に降格するのは1チームのみ。残り5節。熾烈な争いを経て、どこが生き残って、どこが落ちるのか。Jリーグに精通する識者3人にその行方を占ってもらった――。
【J1リーグ下位の順位(第29節終了時点)】
13位 勝ち点34 得失点差−16 ガンバ大阪
14位 勝ち点33 得失点差−3 北海道コンサドーレ札幌
15位 勝ち点33 得失点差−6 京都サンガF.C.
16位 勝ち点29 得失点差−12 柏レイソル
17位 勝ち点24 得失点差−18 湘南ベルマーレ
18位 勝ち点23 得失点差−27 横浜FC
※最下位のクラブがJ2に降格
ずっと下位に低迷したままの横浜FC
最悪な状態から抜け出しつつある湘南に分がある
浅田真樹氏(スポーツライター)
16位の柏レイソルと18位の横浜FCの勝ち点差は6。残り試合がそれぞれ5試合であることを考えると、最近好調の柏は降格危機から"ほぼ"脱出。残留争いは事実上、18位の横浜FCと17位の湘南ベルマーレに絞られたと考えていい。
正直、どちらのチーム状態も決定的に上向いた様子は見られず、たまに勝っても連続して白星を並べられない。両者の勝ち点差がわずか1とあっては、マッチレースの行方を見通すのは難しい。
ならば、J2に降格するのは(裏を返せば、J1に残留するのは)どちらなのか。
結論を言えば、シーズンを通しての試合内容と直近3節ほどの試合結果から判断し、優位に立つのは湘南。最下位に終わるのは横浜FCと予想する。
今季の横浜FCは序盤戦からなかなか勝ち点を伸ばせず、シーズンを通して苦しい戦いを強いられてきた。しかも、夏にチーム得点王のFW小川航基が海外移籍で離脱するも、これに代わる補強はなし。そもそも戦力的に厳しい状態にあったのだから、当然のことながら苦境から脱せずにいる。
つまりは、シーズンを通して浮上の兆しが見られず、ずっと下位に低迷したままだ。
一方の湘南はシーズン半ばに大きく失速し、一時は最下位にまで転落したが、序盤戦を振り返れば上々のスタートを切っていた。結果的にそれが長くは続かなかったわけだが、最近の試合内容を見る限り、最悪の状態は抜け出しつつある。
湘南もエースストライカーの町野修斗を海外移籍で失ったが、こちらは積極的な補強に動き、それが効果を上げてきた。残留への執念が少しずつ結果に結びついている印象だ。
ずっと低空飛行を続ける横浜FCと、大きな浮き沈みがあった湘南。今季の"値動き"は対照的だが、現在"買い"の局面にあるのは後者だと見ている。
「降格争い」はマッチレースの様相も
最近の調子で上回る湘南が横浜FCをリード
杉山茂樹氏(スポーツライター)
残り5試合。降格圏である最下位(横浜FC)と現在、勝ち点差が10ある京都サンガF.C.(15位)は大丈夫だろう。
勝ち点6差の柏レイソル(16位)しかり。最終ラインに犬飼智也(浦和レッズから移籍)が加わり、チーム力自体がワンランクアップした。17位の湘南ベルマーレ、18位の横浜FCよりサッカーそのものも明らかに上だ。
湘南か、横浜FCか。勝ち点差は1だ。"降格争い"はマッチレースの様相を呈している。
最近の調子で上回るのは、湘南だ。4節前(第25節終了時点)まで湘南は横浜FCに4ポイント差をつけられて最下位に沈んでいたが、そこから勝ち点7を上積みし、関係を逆転させた。
湘南は毎シーズン、リーグ終盤になると決まって見せ場を作る。火事場の馬鹿力ではないが、それこそをチームの持ち味としているかのように、降格の危機に瀕すると、無類の強さを発揮する。たとえば、清水エスパルスなどとは真反対のチーム気質である。今季もいつものシーズンを見るかのような"十八番"の展開になっている。
とはいえ、サッカーそのものは褒められたものではない。毎シーズン少しずつ悪化している。降格が1チームでなければ、より深刻な状況に陥っていただろう。
サッカーは相変わらず守備的だが、横浜FCと比較すると終始一貫している分だけ、まとまりを感じさせることも確かだ。
横浜FCはシーズン前半と戦い方がガラリと一変。攻撃的だったものがどんどん守備的になっている。敗戦を怖がるサッカーをしながら、敗戦を重ねているという悪循環にハマっている。
痛かったのは、前節の対浦和戦だ。終盤までリードしながら追いつかれ、勝ち点2を失った。リーグ最終盤に向けて弾みがつかずにいる。
両者の勝ち点差はわずか1ながら、湘南が8対2の関係で横浜FCをリードしているかに見える。
残留争いは横浜FCと湘南の一騎打ち
第33節の直接対決が雌雄を決する一戦
小宮良之氏(スポーツライター)
残り5節、J2に降格する1チームはどこか?
そのカギは、単純なチーム戦力にあるかもしれない。
たとえば、ガンバ大阪は一時、降格圏を這いずり回っていた。それを一気に抜け出すことができたのは、戦術の浸透などではなかった。単純に個々の能力で他を上回っていたのだ。
柏レイソルにも同じことが言える。彼らはまだ気を抜いたら危険な状況にある順位だが、やはりチーム力で上回る。FW細谷真大、FWマテウス・サヴィオは実力者だし、DFジエゴのケガからの復帰、DF犬飼智也の補強も功を奏し、順位は上昇。天皇杯で決勝に進出しているように、彼らはそもそも残留を争うチームではない。
結局は、横浜FC、湘南ベルマーレの一騎打ちになるだろう。どちらのチームも、予算規模で苦しい。もともとやりくりをしながらの戦いだったが、横浜FCは小川航基、湘南は町野修斗というエースストライカーの移籍の穴を埋められず、パワーダウンした格好だ。
横浜FCは5−4−1システムで、森保ジャパンがカタールW杯でドイツ、スペインを撃破した"弱者の兵法"を徹底し、勝ち点を拾っている。一貫した堅守カウンターが、強者に有効な点は興味深い。過去10試合、上位のサンフレッチェ広島、名古屋グランパス、浦和レッズに引き分け、優勝争いをするヴィッセル神戸、横浜F・マリノスに勝利しているのだ。
一方の湘南は、3−1−4−2という攻撃的編成。得点数は3位の浦和と並ぶ。ハイプレスで積極的に守り、攻める姿勢を示してきた。一時は町野の移籍で勝ち星から見放されるも、FW大橋祐紀の台頭(リーグ戦直近8試合で5得点)で得点力にめどがついた。ただ彼らの場合、リーグ最多タイ失点の守備に不安はあるが......。
第33節、直接対決が"雌雄を決する"サバイバルマッチになるだろう。
その行方に関しては、戦力だけでは測れない。さまざまな要素が絡み、最後は神のみぞ知る。運も大きく左右するはずだ。