今年は、第100回大会を記念して関東学連登録だけではなく、地方の大学も11校出場して注目された箱根駅伝予選会。記念大会として例年より3枠増えた13の出場権を狙う戦いは、昨年トップ通過の大東文化大や2位の明治大が同じ順位で順当に通過し、6年ぶりの予選会参加となった帝京大が3位と上位は力どおりの結果になった。

 そのなかで近年の箱根駅伝常連校ながら、昨年は思わぬ落選をしていた神奈川大と中央学院大も7位と9位の通過で復活した。


箱根駅伝経験者が少ないなかでも予選会で出場権を獲得した中央学院大

 指導歴38年になる中央学院大の川崎勇二監督は、2年ぶり23回目の出場となる箱根をこう語る。

「2020年と昨年の2回落選して思いましたが、やっぱりどんな形でも本戦に出なければいけないと、つくづく思いました。やっぱりチームとして戦うのが駅伝であって、そこに面白さがある。それを前回、監督として選抜チームを預かって初めて思いました。そういう意味で今年は、全日本大学駅伝出場を関東選考会で落としていて、今回がダメなら駅伝がゼロになるところだったので何とか面目を保てました」

 ホッとした表情を見せた川崎監督だが、「うまくいけば3位になれると思っていたけど、後半はちょっと失速。もう少し頑張れるかと思っていたけど、まだまだ弱いですね」と苦笑する。

「去年の予選会は、レース後にふたりが救急車で運ばれる初めての経験をしたけど、学生たちも自己管理、体調管理がまだまだだというのを痛感したので、今回は『体調不良だけは出さないように』ということでやってきました。使いたくても外した選手は3、4人いましたが、初めて普通に走れる選手がエントリーの14人揃ったので、そこは今年の進歩かなと思います。ただ、初めての選手が半分以上だったので、不安もありましたが、何とか及第点で走ってくれたかなと思います」

 レースでは、今年2月の丸亀ハーフで、学生2位ながら日本歴代9位の1時間00分31秒を出している吉田礼志(3年)が、留学生の5km14分17秒のペースについていく積極的な走りをした。

「今日もレース前に、『本戦のことを考えたら留学生と行かないと戦えない』という話をして、本人も『行きます』と言うことで。思ったより早く先頭とは離れてしまったが、彼はちょっと暑さに弱いので後半それが出てきてやられたかなという感じがする」と川崎監督は話すが、1時間01分59秒で全体11位。日本人2位で、序盤から突っ込む積極的な走りは強さを見せるものだった。

 また、それに続く日本人集団のなかで走った伊藤秀虎(4年)は1時間02分32秒で27位。他の選手たちは、最初の5kmを14分50秒ほどで入った2人と、15分10秒で入った3人、15分15秒で入った5人という形で、チーム内3位から6位までは1時間3分台で走った。

 今回はスピード型というより距離型の選手を優先して使ったと川崎監督は言い、「うちは距離走が少し弱いと感じたので、学生とも話して距離を重視してやってきました。それで力がついたかどうかはわからないけど、後半が伸びないという面では、まだ(箱根で)戦うレベルにはきてないという感じはします」と現時点での戦力を分析する。

 だが本戦を考えると、吉田が2区を走れるというのは大きな戦力になる。本人も今回「留学生と対等に渡り合えなければ、2区では戦えない」という気持ちで走ったと振り返る。

「今年の箱根駅伝はチーム全員で見に行きました。自分は2区を見に行って、『やっぱり悔しいな』と思ったので、今年は自分が走りでチームを引っ張っていくという気持ちになりました」(吉田)

 その箱根を走れない悔しさが、昨年12月の中央学院大初の1万m27分台となる27分58秒60や、今年2月の丸亀ハーフの快走につながった。今回も「1時間01分15秒を狙っていたので最低限の走り」と厳しい自己評価をするが、1年の時に続く2度目の2区は「1時間6分台で走って区間5位以内」という目標を持つ。

 本戦を睨めば、「課題は1区でどういう流れを作れるか」と川崎監督は言う。総合16位に終わった2022年は、1区に予選会で日本人1位になったエースの栗原敬吾(当時4年)を起用して吉田につないだが、想定外の大ブレーキで1位から4分以上遅れる区間最下位で、手の打ちようがなかった。

「1区が頑張ってくれれば、2区は吉田がそこそこ走ってくれると思います。山はある程度候補はいるので、なんとか出だしでうまくいけばと思う」

 こう話すように、6区には2022年に1年生ながら58分47秒で走って、区間4位になった工藤巧夢(3年)がいて、今回もチーム4位の1時間03分39秒で走っている。

「本戦になれば今回のような距離型の選手では勝負できないと思うので、始めからいけるような選手を長い距離に移行できるようにしていかなければいけない。今回は1万m28分台の選手を3人外しているので、彼らがどれだけ戻ってくるかだと思います」

 予選会に起用できなかったのは、安藤武留(3年/1万m28分57秒69でハーフマラソン1時間02分17秒)と堀田晟礼(3年/1万m28分45秒89)、稲美峻(1年/28分53秒53)だ。上級生2人は故障からの回復が間に合わず、稲美は夏の疲れが抜けきっていないということで起用を見送った。

 前々回に箱根を経験したのは吉田と工藤、伊藤の3名だけで他は未経験者という挑戦になるが、今回走れなかった28分台の3名が加われば、吉田も2区での堅実な走りが期待できるだけに、シード権を狙えるしたたかな戦略を練ることができる。

 川崎監督は、「もうベテラン監督と言われる年齢になったから、小細工をしてもしょうがないので、思いきったことができるように頑張ります」と、笑みを浮かべた。