中日はドラフトで貧打線解消へ 1位は地元出身の大学生スラッガー、2位は高校屈指の打てる遊撃手を推す
プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。2年連続セ・リーグ最下位に沈んだ中日の補強ポイントは?
1年春からベンチ入りしている明治大の強打者・上田希由翔
ペナントレース最終戦でヤクルトが勝利したため、最下位でシーズンを終えた中日。広島戦だけは12勝12敗1分と互角の戦いを演じたが、そのほかの5球団には負け越しを喫するなど、最後まで元気のない2023年シーズンとなった。
チーム打率(.234)、本塁打数(71本)、盗塁数(36個)は、いずれもリーグ最下位。得点(390点)にいたっては、リーグ5位の広島に103点も劣っており、攻撃力の弱さは顕著だった。
一方で、シーズン82敗しているわりに、チーム防御率3.08はリーグ2位。このあたりに来季以降の突破口があるのではないか。
まず主力先発投手の個人成績を見たい。
小笠原慎之介/7勝12敗/防御率3.59
高橋宏斗/7勝11敗/防御率2.53
柳裕也/4勝11敗/防御率2.44
涌井秀章/5勝13敗/防御率3.97
「勝ち数と負け数が逆じゃないの......」と思うような顔ぶれだが、防御率を見ればわかるように、相手打線を抑えながらも味方の援護なく敗れたという"絵"が容易に想像できる。
リリーフ陣も、5年目の勝野昌慶が20ホールド、防御率2.01、6年目の清水達也が25ホールド、防御率3.09、7年目の藤嶋健人が14ホールド、防御率1.07と、きっちり自分の仕事を果たし、日本ハムから移籍の左腕・齋藤綱記が31試合に登板して防御率0.73。さらに育成ルーキー・松山晋也が36試合の登板で17ホールド、防御率1.27と嬉しい誤算もあった。
そして守護神のライデル・マルティネスは48試合で32セーブ、防御率0.39の無双ぶり。リリーフ陣に関しては、むしろリーグトップクラスの成績を挙げているのが、今季の中日である。
ならば、ドラフトは打線強化の一択なのか。
【1位は地元・愛知出身の強打者】中日は一昨年のドラフトで、1位・ブライト健太(外野手/上武大)、2位・鵜飼航丞(外野手/駒澤大)の「大砲候補」を獲得したが、いまだその兆しは見えていない。昨年も2位で村松開人(内野手/明治大)を指名。ルーキーイヤーの今季、セカンド、ショートを守り98試合に出場し健闘したが、彼はチャンスメーカータイプ。とにかく今の中日に必要なのはポイントゲッター、タイムリーが打てる打者だ。
ルーキーにいきなりそんな大役を任せるのも酷な気がするが、今年のドラフト候補には期待に応えてくれそうなバットマンがいる。しかも、地元・愛知県出身だ。
その選手とは、上田希由翔(明治大/内野手/182センチ・90キロ/右投左打)だ。高校(愛産大三河高)、大学で打線の中軸を担い、抜群の勝負強さを発揮してきた。
来季は石川昂弥、細川成也が軸になりそうな中日打線だが、そこに左打ちのポイントゲッターが加わるとしたら、チームにとっては願ったり叶ったりのはずだ。
問題は、何巡目で獲得するかだ。1位なのか、2位なのか......。
最下位の中日はウェーバーとなる2位で、真っ先に指名できる。この"利"を生かして、「1位で投手を獲って、2位で上田」なんて欲をかいて、もし思いどおりにならなかったら......チームづくりは5年遅れる。
上田が必要なら、何を置いてもまずは上田だ! それがドラフトというものである。
逸材が揃う大学生投手に未練はあるかもしれないが、幸い、トミー・ジョン手術明けの梅津晃大がシーズン終盤で2年ぶりに一軍登板を果たし、9月25日の阪神戦では8回1失点に抑えるなど、"完全復活近し"をアピールした。
ならば、上位はとことんスラッガーで固めよう。
2位に推すのは、強打の遊撃手、横山聖哉(上田西/181センチ・83キロ/右投左打)。プロでもホームランを打てるパワーと瞬発力、とんでもない鉄砲肩も持っている。「打てるショートストップ」は、「150キロ投げられる投手」よりも明らかに少ない。なんとしてでもほしい逸材だ。
スラッガーふたりを獲得できたところで、ここからは数年後の布石を打っておく。一軍は、大野雄大が左ヒジ手術から復調途上で、小笠原が孤軍奮闘の状態である。とにかく左腕がいないのが現状だ。
【3位以下で左腕を獲得したい】3位以下となると、地元の剛腕・東松快征(享栄高/177センチ・90キロ/左投左打)はすでに指名されている可能性があるが、滝田一希(星槎道都大/183センチ・78キロ/左投左打)や尾崎完太(法政大/175センチ・75キロ/左投左打)は残っているかもしれない。
高校生なら、今夏の大阪大会決勝で大阪桐蔭を完封して株を上げた福田幸ノ介(履正社高/180センチ・77キロ/左投左打)でもいいし、やはりこの夏の甲子園で一躍注目を集めた黒木陽琉(神村学園高/183センチ・78キロ/左投右打)も伸びしろの塊のようなサウスポーだ。
ともにスピードがあるうえに、福田にはチェンジアップ、黒木には落差の大きいタテのスライダーという、必殺となる変化球があるのが高評価の要因だ。
ファームを見ると、若手野手も手薄だ。ウエスタンリーグのメンバー構成すら心配してしまうような顔ぶれである。ここはイキのいい、打てて、走れる野手がほしい。
内野手なら、身体能力の高さで石上泰輝(東洋大/172センチ・82キロ/右投左打)。50m5秒9、遠投120m......。外野手としての汎用性も兼備する。
外野手なら、今年6月の大学選手権制覇に貢献した中島大輔(青山学院大/180センチ・78キロ/右投左打)と快速の宮崎一樹(山梨学院大/185センチ・80キロ/右投右打)の大学生ふたりに、高校生では高いレベルで走攻守揃う平田大樹(瀬田工高/181センチ・75キロ/右投左打)、福井仁(鳥羽高/178センチ・83キロ/右投左打)が条件に合致してくるポテンシャルの持ち主だ。