サッカー日本代表 10月シリーズプレビュー対談 後編

前編「日本代表の戦術 良い守備から良い攻撃の中身」>>

サッカー日本代表10月シリーズのメンバーは前回から多少の変化に留まったが、各ポジション、各選手の起用には課題や進化の余地がある。その点も踏まえ、ライターの西部謙司氏と清水英斗氏に、カナダ戦(10月13日)とチュニジア戦(10月17日)の注目ポイントを挙げてもらった。


久保建英(右)の起用法、古橋亨梧(左)のゴールなど、サッカー日本代表の各ポジション、選手にはまだまだ課題がある

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【サイドバック守備的時代の到来】

――今回のメンバーでGK2人が変わりましたが、ここから読み取れることはありますか?

清水 キック力。2人とも(前川黛也、鈴木彩艶)ありますよね。シュミット・ダニエルもそうですけど、武器になりますよね。でもそれが対アジアで必要かというと、そうでもないとは思うんです。

 あとはやっぱり大きなサイズ。そこを買って、伸びしろを見ていくみたいなところじゃないですか。GKはやっぱり身長がすごく大事なので、そういう選手をまず集めるところからやっているのかなと。そういう意味でもGKは決定打がないですよね、今は。

西部 やっぱりサイズの問題はあるけど、最近は全体的に大きくなっていますよね。そのなかでやっぱり決定的な人がまだ決まってないんだなと。だからいろいろ試してるということじゃないですか。

――左サイドバック(SB)はいかがですか?

西部 攻撃的な選手はおそらく必要ではないと思うので、後ろでしっかり三笘薫(※今回は体調不良で不参加)のバックアップというか、支援できて守備ができる選手がまず優先されるでしょう。

 左SBはもともと専門的な選手があんまりいないですよね。それもあって中山雄太と伊藤洋輝が今回の候補になると。

清水 森下龍矢が前回1試合も出ずに今回招集外になったというところがあったので、まあGKがいろいろ呼ばれているのもそうですけど、結構いろんなところを見られているんだろうなという。普段のところも含めて。そういうところには森保一監督はめちゃくちゃ厳しそうなので。

――それでは右SBは今回選ばれた菅原由勢と毎熊晟矢で決まりですか?

西部 ポジションを見ると、3人以上を選んでいるのが、センターフォワードと右SBなんですよ。それで他のポジションは大体2人ずつなんですけど、ここだけ3人というのは何でかなという感じですね。

清水 逆に左SBに3人いてもおかしくないような感じですけどね。

西部 3人選べないのかもしれないですね。

 SBに関しては、対戦相手にキーになる選手がウイングにいることがおそらく多くなるので、対人に強いというのが一つの条件にはなると思います。割と従来のSBって攻撃やスピードが売りで、対人の強さはそこまでない人も多かったですけど、今はセンターバック(CB)的なSBが多いですよね。

清水 ウイング全盛時代に連動して、SB守備的時代が来ているんじゃないかという感じですよね。

【久保建英に鎌田ロールを】

――南野拓実と旗手怜央の復帰については?

清水 何かあるんですかね? でも普通に順当な、次の席の2人だという感じはしますけど。

西部 南野に関しては、モナコで抜群に活躍しているので、もう選ばざるを得ないような状況だったんでしょうね。旗手は前回ケガもあったんですよね。だから復帰という感じでしょう。

清水 旗手がいたほうが、6月の4−1−4−1の形は多分やりやすいと思うんですよね。古橋もそのほうがありがたいと思うので。そこはあの戦い方はちょっと楽しみだなと思います。

――古橋は日本代表でなかなかゴールが奪えていません。

西部 取れない一番の大きな原因は、シュートが入っていないこと。現象面で言ってしまうとバカみたいですけど、ポストに当たったり、シュートする前にDFに突かれちゃったりとかなので、ほぼ個人の問題というか、その時の偶発的な問題が大きいです。

 だから、点が取れないこと自体は重視しなくていいんじゃないかと。古橋にボールが全然入らないとかそういういう状態ではないので、そこはそんなに問題ないとは思います。

清水 なんか久保建英が一皮剥けてきた感がこの1〜2年くらいすごくあって、古橋の動きをめちゃくちゃ見ているパスがトルコ戦で出ましたよね。ああいうふうに周りが結構古橋のことをわかってきてる感じがあるので、同じ点が取れていないでも前までとはちょっと違うなとは思います。

西部 あとは中村敬斗をどうやって組み込むかなんですよね。彼がいいのはシュートがすごく冷静だということ。フィニッシャーとしてはもしかしたら今、日本のフロントラインのなかで一番うまいかもしれない。ただし、パスワークとかチームプレーのなかであまり絡まない、というか点を取るとき以外出てこなかった。

 あと、右サイドは伊東純也と久保というすごい選択肢になっているので、これどうするんだっていう(笑)。まあ、今回は鎌田大地がいないので、久保はトップ下や2トップ的に使うんじゃないかなとは思いますが。本当にどっちも今すごい状態なので、できればどっちも見たい感じですね。

清水 久保を真ん中にして鎌田ロールにするのも、結構面白いんじゃないですか。トルコ戦なんか久保の判断でだいぶポジションを変えたと思うんですけど、よく周りが見えているし、久保がいなかったら試合が全然成り立たないんじゃないかというような感じだったので。

【大迫勇也を呼ぶのか、呼ばないのか】

――巷では大迫勇也待望論もありますが。

西部 今呼ぶ必要はないんじゃないですか。年齢的(現在33歳)にも結構いってるし、次のワールドカップを考えると、今、呼んでチームの軸としてやっていくよりも、ワールドカップ近くになって、やっぱり大迫がコンディションもいいとなれば、その時に選んでも遅くはない。

 ただあまり遅くしちゃうと、ブラジルW杯の時の大久保嘉人みたいになってしまうから、そのタイミングはもうちょっと早めのほうがいいとは思います。1年前ぐらいですね。

清水 いや、僕は良くても呼ばないんじゃないかなという気がするんです。1回確執が起こっちゃったので。大迫も選ばれなかった時にサブメンバー入りを拒否しましたし、監督が変われば呼ばれるんじゃないですかみたいなこともポロっと言っちゃっているので。あのへんの発言は、森保監督は謝罪するまで許さないと思うんですよね。

 だから大迫次第ですよね、入るか入らないかは。このまま何もない2人の関係だと、もうどんなに良くても呼ばないと思います。

西部 ただ、蒸し返すわけじゃないけど、大迫はコンディションを見ながら最後まで待ってもいいと話しましたが、それを言うなら今回のメンバーのいわゆる欧州組は全員そうなんですよ。

 ドイツ戦であのパフォーマンスができた。アジア予選とか呼ぶの?って感じで。それよりも所属チームでコンディションを整えてもらって、ここぞという節目のタイミングで呼べばいいんじゃないかと思っちゃうんですけどね。

 ヨーロッパと日本って、11時間ぐらい飛行機に乗ってコンディションも崩しやすいし、あらゆる代表チームのなかで多分移動時間が途方もなく長い状態なので、やはりそれは回避したほうがいいんじゃないかとは前々から思っているんです。けど、そのつもりは一切ないようなので、このまま突き進むんだと思います。もうみなさん怪我をしないでコンディションをキープした良い状態で過ごしていただければなと。

【対欧州で見せた強さをカナダ、チュニジアにも発揮できるか】

――今回のカナダ戦、チュニジア戦の見どころはどこになりますか?

清水 カナダはやっぱり僕は厄介なチームだなと思いますね。アメリカとの試合もちょっと見て、もともと4バックの印象だったんですけど3−5−2にシステム変えていて、外にアルフォンソ・デイビスというめちゃめちゃ速い突破力のある選手がいる。

 ワイドを使った攻撃もするし、ロングボールでも結構起点を作っていくので、日本が高い位置でプレスしたいという意図は、割とバチバチ外されるんだろうなと。戦いづらい相手なのは間違いないですね。

 そうした展開は、次のワールドカップでは間違いなく起こります。48カ国に参加が増えれば、日本を研究し分析してきた相手と戦うケースが増えてくるので。本当に強化試合になりそうだなという印象を持っています。

西部 カナダは次期W杯開催国ですよね。かなり若い選手も強化している。カナダという国自体もそうなんですが、いろんなルーツの選手が混ざっているという意味で、ちょっとフランス的と言うのかな。

 だから選手の個性が、速い選手は速い、強い選手は強いみたいに、バラバラなところが面白い。そのわりに戦い方はカチッとしていて、非常に戦術に忠実なサッカーをやるチームです。日本はあまりこういうチームとやったことがないかもしれないので、すごく面白いですね。

 チュニジアはやっぱりアフリカですから、ある程度守備をしっかりさせながら、カウンターを狙っていく。戦い方が割と日本に似たようなチーム。そういうところとやった時に日本はどうかというところですね。

清水 チュニジアとは昨年6月に日本で戦っていて、あの時はかなりチュニジアが日本のことを研究していました。日本はその日4−3−3をやってアンカーに遠藤航がいたんですけど、そこを狙われまくってあの試合をきっかけに4−3−3をやめたんですよね(※0−3で敗戦)。

 遠藤も自分が狙われまくるからやりたくないという感じのことを言った話を聞いていて、そういうきっかけになった試合でもあるので、結構日本を悩ませる試合をするチームだなと。

 カナダもそうですよ。戦術的に両チームともかなり整備してくる印象ですね。

西部 対欧州の強さは、もうかなり証明されているじゃないですか。同じことが違うタイプの北中米や南米、アフリカとかにできるのかというのがまだわかっていないところなんですよ。というか、今までの感じだと対欧州ほどにはできないという結論が出ているので、そこを覆せるかどうかです。

清水 カタールW杯のコスタリカ戦の延長ですよね。ちょっと似ている2つだと思うので。

西部 そこが課題なんだけど、解消されてないというか、証明されていないですよね。だからそこを証明する機会じゃないですか。