久保建英の今季データ検証「ドリブルは半分以上成功」の要因は?「守備は改善の余地」
久保建英のここ2試合は相手の研究もあってシーズン開幕時のような活躍を見せられず、リーグ中断期間に入った。今回はスペイン紙『アス』」およびラジオ局『カデナ・セル』でレアル・ソシエダの番記者を務めるロベルト・ラマホ氏に、データを用いて今季ここまでの久保のパフォーマンスを分析してもらった。
【ボールを持たないところでチームに貢献】久保建英が今季2回目のインターナショナルブレイクを迎えている。先月の中断期間同様、ラ・リーガのスーパースターというステータスは変わらないが、少なくともここ2試合はシーズン開幕時のような活躍が見られなくなっている。
アトレティコ・マドリード戦のように、久保建英に対する相手の警戒が強まっている photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
久保は序盤のハイパフォーマンスにより9月の月間MVPに輝いたが、レアル・ソシエダのようなクラブにおいて、それは些細な出来事ではない。
なぜなら過去、マルティン・ウーデゴール、アレクサンデル・セルロート、アレクサンデル・イサク、ロビン・ル・ノルマン、ミケル・オヤルサバルの5人しかこの栄誉に輝いた選手がいないからだ。これらの選手と並び称されたのは、久保のシーズンの始まりが非常にすばらしいことを意味している。
しかし私は今、彼が今月のインターナショナルブレイクを万全の状態で迎えられていないことを懸念している。ほぼすべての試合に出場して疲労が蓄積され、対戦相手にとって予測不可能な選手となるために必要なフレッシュさを欠いているのだ。チャンピオンズリーグのレッドブル・ザルツブルク戦とラ・リーガのアトレティコ・マドリード戦で、特にそれが顕著になっていた。
久保は今季のレアル・ソシエダにおいて、唯一とも言ってもいい攻撃的な武器となり、ひときわ大きな輝きを放ってきた。しかしザルツブルク戦では主役を演じることなく、チームプレーに徹していた。ラ・リーガのバレンシア戦で休みが与えられたため、もっと活躍するかと思われたが、残念ながらそうはならなかった。
右サイドから中に向かって斜めに入る動きで違いを生み出せず、持ち味のドリブルもうまくいかなかった。そのため他の面でハードワークし、2得点に間接的に絡みチームに貢献。オヤルサバルの1点目ではサイドに開いて中央にスルーパスを通すスペースを作り、ブライス・メンデスの2点目では中盤でボールを奪い、破壊力溢れるカウンターの起点となった。
久保はボールを持った際に思うようなプレーはできなかったが、結果的に重要な役割を果たす選手となった。それはザルツブルクのゲルハルト・ストルバー監督が前日会見で「久保は予測不可能なドリブラーだ」と語っていたように、ある意味相手にとって予想どおりだったとも言えるだろう。
【アウェーではまだ得点できていない】しかしこの日の久保のパフォーマンスは、アウェーでの得点力不足を確証するものとなった。これまでに出場した公式戦10試合で決めた5ゴールはすべてホームでのもの。サンティアゴ・ベルナベウ(レアル・マドリード戦)で世界中に轟いたゴールが認められなかったという事実はあるが、敵地ではまだ1度もゴールネットを揺らしていないのだ。
アトレティコ戦でその新たなチャンスが訪れたが、またもやベストのプレーができなかった。
敵将ディエゴ・シメオネは試合後、「我々はレアル・ソシエダがサイドにタレントを抱えているのを知っていたし、特に久保を止める必要があった。そのため守備において彼が快適にボールを受けるのを阻止し、前に行くスペースを消すことに重点を置いた。というのも、それをやらせてしまうと彼はラ・リーガでトップクラスの選手だからだ」と説明したように、すべては久保を抑えるために計画されていた。
シメオネのプランは、久保に対して常に2人で守備をするものだった。これにより久保は全く有利な形でボールを受けられずに抑え込まれた。これは久保が今シーズン築き上げてきたものを物語っている。その巨大な才能と好調ぶりを知る対戦相手から特別な注目を集めているのだ。
アトレティコ戦で起こったことは単なる偶然ではない。試合を重ねるごとに相手の警戒がいっそう強くなり、シーズン序盤のような輝きを放てなくなっている。
とはいえ、レアル・ソシエダが公式戦11試合で挙げた20ゴールのうち、4分の1を占める5ゴールを決め、半分の10ゴールに絡む活躍を見せてきた久保に、これ以上多くを求めることはできない。チーム内での彼の影響力は十分すぎるほど証明されている。すべての試合で超一流のプレーを披露するなど不可能だ。
【ドリブルの半分以上を成功させている】ラ・リーガ得点王争いでジュード・ベリンガム(レアル・マドリード/8ゴール)しか上にいないことを考慮すると、そのパフォーマンスに不満などある訳がないが、さらにデータを深掘りしてみたいと思う。
最もポジティブな点は、今季ここまでで一番向上している決定力だ。枠内シュートわずか7本で5ゴールを決め、ラ・リーガで最も決定率の高い選手になっている。これはイマノル・アルグアシル監督に常に求められている、「もっと決定的な存在となり、チャンスをものにする」という言葉に耳を傾けた結果だろう。
久保がレアル・ソシエダ加入時、ドリブルへの自信を失っていると気づいた監督は、最初にその違いを生み出せる能力を存分に発揮できるようにと、積極的に仕掛けるよう要請した。これによって昨季彼が自信を取り戻すと、監督はさらに一歩踏み込み、プレーの精度を高めることを求めた。
このようにイマノルに自信を与えてもらったおかげで、久保は今、ラ・リーガ屈指の勇猛果敢な選手となっている。さらに、いつ相手と対峙すればいいか、いつパスを出すかを冷静かつ的確に見極めるまでに成長した。
ここまで19回ドリブルを仕掛け、半分以上の10回成功させている。要するに久保はただ闇雲にドリブルするのではなく、成功できるタイミングを図りながら相手と対峙しているのだ。
その結果として、ファールを度々受けている。理由はボールをうまく隠す能力と、相手が非常に恐れる予測不可能なフェイントにある。久保はいつも同じドリブルをするのではなく、外にも中にも行くことができる。
これにより相手DFは久保に逃げられたくない場合、ファールで止めなければならないのだ。これまでファールを11回受け、イエローカードを何度も誘発している。
【守備面では改善の余地がある】一方、相手ボールになった時の守備には改善の余地がある。ボールリカバリー数は36回と、このランキングの上位には遠く及ばない。さらにデュエルも改善すべき点のひとつ。これまで53回あったが、30勝23敗と半分近く負けている。
これらのデータは、久保が現在レアル・ソシエダにおいて、どのような選手であるかを明確に示している。すなわち、ボールを持っている時はチームにとって欠かせない選手であり、ボールを持っていない時は、今以上に重要な存在になるためにさらなる成長が必要な選手であるということだ。彼にはそれを成し遂げるための時間がまだ十分残されている。