南野拓実か伊東純也&中村敬斗か フランスリーグ「日本人ダービー」で絶好調同士が激突
開幕から接戦が続いている今シーズンのリーグ・アンで、現地時間10月7日の土曜日21時(日本時間=10月8日・早朝4時)に大注目の一戦を迎える。
第7節を終えて3位に躍進するスタッド・ランスが、ホームに首位モナコを迎える大一番。勝ち点差わずか1の首位攻防戦に、スタッド・ランスの伊東純也と中村敬斗、そしてモナコの南野拓実という3人の日本代表戦士が立つとなれば、日本のサッカーファンにとっては絶対に見逃せない試合になる。
南野拓実(左)と伊東純也(右)の直接対決がついに実現
内転筋を痛めて急遽、前節のマルセイユ戦を欠場することになった南野も、無事に負傷が癒えてこの大事な一戦に戻ってくる。順当にいけば、日本人3選手が同時にピッチに立つ可能性は極めて高い。
ここまでの南野は、欠場した前節を除くリーグ戦6試合すべてに先発し、3ゴール3アシストをマーク。9月のリーグ月間MVPを受賞するほどの大活躍を見せているのは周知のとおり。今シーズンから指揮を執るアディ・ヒュッター監督も、攻撃のみならず、守備面でも貢献してくれる南野に対して全幅の信頼を寄せている。
南野が任されるポジションは、3-4-2-1の2シャドーの一角。とりわけ1トップの主将ウィサム・ベン・イェデル、左シャドーのロシア代表アレクサンドル・ゴロヴィンとのコンビネーションは抜群で、3人が流動的に動きながら、互いが互いのよさを引き出し合うことができるのがチーム最大の強みだ。
毎年スロースターターのベン・イェデルもすでに4ゴール1アシストを記録しており、ゴロヴィンも2ゴール1アシスト。つまり3人で9ゴール5アシストを量産し、それが原動力となってチームが首位に立っていると言っても過言ではない。
さらにモナコは、夏の移籍市場の期限ギリギリでアーセナルからフォラリン・バログンを獲得。昨シーズンはローン先のスタッド・ランスで伊東とホットラインを形成し、21ゴールを量産したアメリカ代表ストライカーが、今度は敵として伊東と戦うことになる。
【回復した南野拓実をどのポジションで起用するのか】また、前節マルセイユ戦の勝利の立役者となったフランスのパリ五輪代表候補マグネス・アクリウシェ(21歳)も、すでに3ゴールをマークするなど今シーズンは絶好調。ここまで負傷離脱していた天才エリーゼ・ベン・セギル(18歳)もメンバーに復帰した。
南野の回復具合がどの程度かにもよるが、ヒュッター監督がこの大一番で前線の駒をどのように組み合わせるのかは、注目ポイントのひとつになる。ちなみに、ゴロヴィンが出場停止だった前節は、ベン・イェデルとバログンの2トップ下にアクリウシェを配置する3-4-1-2に変更し、それが奏功して逆転勝利を収めることに成功している。
対するスタッド・ランスも、目下2連勝中と上げ潮ムードだ。しかもリール、リヨンという難敵に勝利したことで、パリ・サンジェルマンやニースを抜いて3位に浮上した。
若いチームのなかで"絶対的存在"になっている伊東も、開幕から好調をキープ。リーグ戦7試合すべてに先発して1ゴール2アシストを記録している。
苦しみながら2-0で勝利した前節リヨン戦でも、余裕のピンポイントクロスでジンバブエ代表マーシャル・ムネツィの先制ゴールをお膳立て。試合の流れを大きく変えるワンプレーで、元イタリア代表のクラブOBファビオ・グロッソ新監督率いるリヨンの戦意を喪失させるに至った。
一方、今シーズンから新加入の中村も、試合を重ねるごとにプレーを改善させている。7試合中5試合でスタメンを飾り、代表ウィーク明けの第5節ブレスト戦で初アシストを記録すると、続くリール戦ではついに初ゴールをマークした。伊東→ムネツィとつないだボールを相手ボックス内で受けた中村が相手DFを外してループシュート。ゴール前の冷静さが光ったテクニカルなゴールだった。
当初4-2-3-1だったスタッド・ランスの基本布陣も、第3節以降は4-3-3に移行。右ウイングは伊東で固定されていたが、激戦区の左ウイングは現在、中村がファーストチョイスになり、最大のライバルと目されていたデンマーク代表モハメド・ダラミー(21歳)は1トップでプレーすることが増えている。
いずれにしても、伊東と中村のスタメン出場は間違いないだろう。
【伊東純也と中村敬斗の素材を若き名将はどう生かす?】そして、この試合の最大の見どころと言えば、やはり両監督が浸透させている緻密なチーム戦術の対決になる。何かと個人技やフィジカルバトルがクローズアップされがちなリーグ・アンではあるが、この両チームの対戦では戦術が勝敗の行方を決めるだろう。
「スタッド・ランスは直近2試合で勝利し、いいシーズンを過ごしているので難しい試合になるだろう。彼らにはすばらしいプレースタイルがあり、特に最初の30分はとても危険なチームだ」とは、大一番を控えたモナコのヒュッター監督のコメントだ。
スタッド・ランスを率いるウィル・スティルは、少年時代からビデオゲーム『Football Manager』に熱中し、若くして監督を目指したベルギー国籍の監督。
たぐいまれな分析力を武器に、ビデオアナリストとして数々のクラブを渡り歩き、スタッド・ランスでは30歳という若さで昨シーズンの前半戦にアシスタントコーチから監督に昇格。まだUEFAプロライセンスを取得していなかったため、クラブは1試合ごとに2万5000ユーロ(約394万円)の罰金を支払いながら指揮を任せた変わり種だ。
それでも、いきなりクラブ史上最高の19戦無敗記録を樹立するなど旋風を巻き起こし、一躍注目を集めた青年監督は、ライセンスを取得した今シーズンから、同じくビデオアナリスト畑を歩んできた弟・二コラをアシスタントコーチに加え、そのマニアック度をさらに増している。
注目は、3バックのモナコに対して、どのようなプレッシング・アニメーションを準備しているかだ。4バックのリールに対しては、伊東が2トップの一角に移動する4-4-2に変形して前からプレスをかけたが、おそらく3バックのモナコに対してはリヨン戦同様、3トップが相手の3バックに対峙するかたちで圧力をかけることが予想される。
対するモナコのオーストリア人監督ヒュッターの戦術も、同じようにハイプレスを基本とする。そのなかで南野の役割は極めて重要で、前からの守備でボールを奪取し、ショートカウンターでフィニッシュに持ち込むシーンも少なくない。
【代表ウィーク前に日本代表戦士が見せるプレーに注目】そういう意味で、このゲームは試合開始からお互いがハイプレスを仕掛ける可能性が高く、そのなかでどちらが先に主導権を握るかが最初の注目ポイントになりそうだ。
優位と見られるのは、やはりベンチメンバーにも代表レギュラークラスを多く抱える首位モナコか。迎え撃つスタッド・ランスとしては、失点の多いモナコに対して早めに先制ゴールを決め、主導権を握ってからゲームをコントロールしたいところだ。撃ち合いになれば、パリ・サンジェルマンを上回る得点力を誇るモナコにアドバンテージがあるだろう。
果たして、注目の首位攻防の行方はいかに。そして、伊東、中村、南野の日本代表戦士が代表ウィーク前に、どのようなパフォーマンを見せるのか──。
見どころの多い大一番だ。