元宝塚歌劇団 宙組組長・寿つかささん「バランスよく、ベースを整えること。それが私のすべてをつくっています」【美のトビラ】
長いタカラジェンヌ生活から得た経験が、美しさをつくる源になる
元宙組組長の寿つかさ（ことぶき・つかさ）さんが登場。今回は寿さんのすこやかな「美」の秘密について、詳しくお話をうかがいます。
何かを始める前にベースを整え、すべきことが終わったあとにニュートラルな位置に戻す。この基本が大事
――寿さんが宝塚歌劇の男役として追求してきた「美」と、それに向けての体づくりにはどんなことをされてきましたか？
男役として理想とする体型は美しい逆三角形なんですね。肩があって下半身は締まっていること。それに向けてのトレーニングをしていました。基本は体幹を鍛えます。私の下半身は、中学時代にバレーボールをやっていたためかなりしっかりしていたんですよ。ただ食べる量を減らすだけだと上半身だけがやせてしまうタイプだったので、骨盤を締める体操やウォーキング、スクワットなどを行っていました。
Sussy’s Photo
――シンプルなトレーニングですね。
そうなんです、シンプルなことを回数重ねてやる。ただ、大事なのはトレーニングの前後にきちんと体を整えること。体がゆがんでいると見た目が美しくないだけでなく、ケガや病気にもつながることがあります。専門の先生にアドバイスをいただき、まずは体のゆがみを矯正してからトレーニングやレッスンをし、トレーニングした後もまた体をニュートラルに整えることを心がけていました。
たとえば歩き方も自分のクセがあるんですよね。それでどんどん体がゆがんできて、痛みにつながり、見た目もくずれてきて……とつながっていくので、日常生活で気をつけるべきところは気をつけていました。脚は絶対に組まないとか。小さいことを気にするだけで全然変わってくるんです。若いときは大きなケガをしても治りが早いのですが、年齢を重ねると治るのに時間がかかるようになるんですよ。なので日ごろからなるべくケガをしないように、ゆがみを取って体を整えることで対策していました。
――体幹トレーニングはどんなことをされていたんですか？
トレーニングも時代や年齢で変わってくるんですよね。下級生のころは腹筋・背筋・腕立て伏せなど外側に筋肉がつく筋トレを、お稽古の休憩時間のたびにしていました。そのころはがむしゃらにやっていましたけれど、それだけをしていても効果的じゃなくてやっぱりバランスが大事だということを年齢を重ねていくうえで学びました。そのときの自分の体の状態に合うものは、年々変わってくるんですよね。筋トレをしすぎて逆に体が動かしづらくなっていた時期は、ヤムナボールを使ったストレッチやピラティスなどを取り入れたりもしました。
――自分の体と向き合いながら、足りないところを補うことが大事なんですね。そしてベースは整えること。
そうですね。タカラヅカを卒業してからは、簡単にできるスクワットやウォーキングを続けています。でも最近はバタバタしていてなかなかできていなくて。ずっとやっていたことをやめてしまうと、体がゆるむせいか逆にしんどくなります。その状態は自分がいちばんよくわかっているので、そろそろ始めないと。
――何か器具も使われていましたか？
加圧ベルトを持ち歩いていました。公演中も必ず近くに置いておいて。あとは、チャコットのグーポというトレーニングサンダルも使っていました。はくと脚の裏側が伸びてストレッチ効果があるんです。気になったときすぐにできるような、持ち運びができるものは便利です。たとえば公演中にちょっと痛めてもすぐに病院に行けないじゃないですか。そういうときに器具を使い、自分で整えたりほぐしたりして大きなケガにつなげないようにしていました。
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――気を張る日々が続くこともあったと思いますが、オンとオフはどう切り替えていましたか？
私は、その切り替えが下手というか苦手なんですよ。家族全員がそうなんですけど、家でゆっくりするのが落ち着かなくて（笑）。休日も一度は外に出て、お茶を飲んだりショッピングしたりしちゃいます。
――それで気持ちを切り替えているのかもしれないですね。
気分転換ですよね。いつもと違うことをして、新たな喜びや刺激を受け取る。それがスイッチングになっているかも。
――ストレスの解消法にもなっていますか？
私が音楽学校に入ったころは、「ストレス」というのが一般的ではなかったんですよ。時代ですよね（笑）。スポーツをやっていたこともあり、目標に向けてハードなレッスンや体を酷使することは当たり前だと思っていたから、ストレスの意識がちょっと薄いのかもしれません。タカラヅカに限らず、お仕事や自分のやりたいことは楽なことばかりではなく、大変なことも含まれるということ。大変なことより、その大変さを乗り越えたあとの達成感や喜びのほうが断然大きいですし。ストレスといわれるものがあるから、発見があり次への目標もできる。ストレスって悪いことだけじゃないんですよね。生きていくうえで必要なことも含まれているものだと思っています。
――どんなボディケアをされていますか？自分の体に何かが起きてからケアをするタイプなんです。「なんだか体が乾燥してきたな」「最近、指先がガサガサしてる」「あ、唇が割れちゃった」とか（笑）。そんな経験を経て、ローションを体に塗ったり、乾燥する時期になったらそれをクリームに替えてみたり、そのときどきで変えています。入浴剤にハマっていろいろ使っていた時期もありましたが、最近またシンプルになりましたね。
今欠かせないのは、水道水の塩素を除去するシャワーヘッドです。全身にそれを使っているから、なんとなく効果は感じます。肌が弱いかたにもおすすめです。在団中は全国ツアーなどでいろいろな場所に行きましたが、土地で水質が変わってそれが肌に影響するせいか、悩んでいる人がいました。水って大事なんですよね。
――飲み水にもこだわっていらっしゃいますか？
飲みすぎていた時期を経て、今は一日2リットルは飲むようにしています。冬はどうしても飲みづらくなりますけど、私は白湯でなく常温でめぐらせています。きちんと水を飲むと、体の代謝がよくなる気がしますね。水の種類はいろいろです。今まで大丈夫だった水が、そのときの自分の体調でのどにひっかかるようになったり入ってきにくくなったりするため、そしたらまた違う水に替えてみたり。同じ水でも種類や特徴によって全然違うんですよね。公演中など、毎日同じことを繰り返していると、特にその違いを感じます。神経質になることなく、「なんか今はちょっと違うから今度はこの水にしてみよう」と楽しみながらいろんな水を飲んでいました。今好きなのは温泉水です。
――美を意識するうえで、ご自身がもっとも大事にしているのはどんなことでしょうか。
体づくりのときにもちょっと話しましたが、ベースをきちんと整えることです。何かをする前にまず整え、終えたあとにはニュートラルに戻す。私のすべてにおいて、それを意識していました。整ったベースというのは、しんがずれていなくてまっすぐ。これが理想です。
たとえば、背中の丸い年配のおじいちゃんの役や、体や表情に特徴のある役をやっていると、体のどこかに負担がかかっているんです。そうしたほうが効果的で役がグッと濃くなるから必要なことですが、それを1カ月やるとやっぱり不ぐあいが起こってきます。だから1回ごとにまたニュートラルな状態に戻し、日々の負担を軽減する。この基本こそが大事なことだと思っています。
――食も美も、常にバランスを考えていらっしゃるんですね。
それはいろいろな失敗をしたうえで学んだんです（笑）。何かにハマると、「もっと、もっと」と何度もリピートしてかたよってしまい、バランスをくずしてマイナスなことが起こる……ということを若いころは繰り返して、自分の体で経験して、ニュートラルであることの大切さに気づけた。いいことも悪いことも、ここまでの経験が私を支えてくれているんです。
長く宙組をまとめてきた組長さんの、ご自身の経験から導き出された金言。こだわりも大切だけれど、かたよりすぎずバランスよく。広い視野を持っていらっしゃることが感じられる取材でした。取材が終わり片づけをされながら教えてくださったことは、「氷枕、おすすめですよ。冷たすぎるほど冷えず、頭を冷やすと寝つきがよくなるみたいで」。これ、さっそくやってみようと思います！
＞＞ふだんはしないとお話しされた〈脚組み〉リクエストに応えてくださったアザーカット��
＞＞アザーカット��
寿つかさ
ことぶき・つかさ／元宝塚歌劇団宙組組長。
1990年に76期生として宝塚歌劇団に入団。花組大劇場公演「ベルサイユのばら」で初舞台を踏み、組まわりを経て翌年雪組に配属。98年、宙組発足にともない宙組へ組替え。2005年に宙組副組長、08年には宙組組長に就任。23年「カジノ・ロワイヤル 〜我が名はボンド〜」にて宝塚歌劇団を退団。8月23日より初主演となる舞台「THE MONEY -薪巻満奇のソウサク-」が開幕。
元宝塚宙組組長寿つかさ退団後初舞台&初主演
七海ひろき初プロデュース演劇企画
舞台「THE MONEY -薪巻満奇のソウサク-」
元宝塚歌劇団宙組組長の寿つかさが主演を務め、同じ宙組に在籍していた緒月遠麻、伶美うらら、澄風なぎ、そして座長として七海ひろきが出演する、舞台『THE MONEY』。個性豊かな5人が、小劇場演劇＆シチュエーションコメディに挑む。本作品の脚本・演出は、ドラマや舞台で活躍する脚本家の保木本真也が担当する。謎解きやさまざまな仕かけをちりばめた新感覚ミステリーシットコム。これは、欲望渦巻く“5人の犯罪者”の物語だ。【出演者】
寿つかさ
緒月遠麻 伶美うらら 澄風なぎ
七海ひろき
【脚本・演出】
保木本真也
【企画】
QQカンパニー
【日程・会場】
〈大阪公演〉
2023年8月30日(水)〜9月3日(日)
心斎橋PARCO 14F SPACE14
【ライブ配信】
配信プラットフォーム：Rakuten TV
〈大阪公演〉
9月3日(日)12:00公演 全景視点（定点）
9月3日(日)16:00公演 物語視点（スイッチング）
【配信詳細】
https://live.tv.rakuten.co.jp/content/455529/
【公式WEBサイト】
https://stage-the-money.com/
