東京大学赤門

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東京大学が2023年度からの6年間で女性の教授・准教授を約300人採用する計画を発表したというニュースに関し、同大学の男女共同参画室副室長を務める田野井慶太朗教授が自身のツイッター(現・X)で7月30日、「女性300名(1/4)に対し男性は900名(3/4)です。男性が多く採用される実態は変わりません」と投稿し、様々な意見が寄せられている。J-CASTニュースは8月4日、田野井教授に反響に対する見解を聞いた。

東京大学から変えていくべきです」

発端となった投稿は、

東京大学では、『2027年度までに着任する教授・准教授1200名のうち、約300名を女性とすることを目指しています。』と、女性300名(1/4)に対し男性は900名(3/4)です。男性が多く採用される実態は変わりません」

というもの。東京大学が女性の教授・准教授の比率を増やそうとしているため、今後は男性が差別されるという趣旨の意見に対し訂正する形での投稿だった。

東京大学男女共同参画室は公式サイトで「教職員や学生を含む大学構成員全員の意識改革に取り組むとともに、女性教員増加率を過去10年の2倍とし、2027年度までに着任する教授・准教授1200名のうち、約300名を女性とすることを目指します」とし、行動計画I〜IIIを発表している。

田野井教授の投稿には、「比率の問題ではなく、性別で採用を決めるのは差別」「女性300人採用しても着任する教員全体の25%とは、、、。東大の教員規模は凄いですね」「応援しています。東京大学から変えていくべきです」「その女性教員の学部ごとの採用人数がどうなるのかも、注視したい」などさまざまな意見が寄せられた。

意見に対する田野井教授の見解は

取材に応じた田野井教授は「性別で採用を決めるのは差別」などとする意見に対して、

「『男女共同参画社会基本法第二条第二号』ほか同法第八条などに法的根拠があり、『女性差別撤廃条約第四条』に、『差別と解してはならない。』とある点などを参照しております。男女比が通常の団体においては性別で採用を決めるのは差別にあたることもありますが、東京大学の教員には男女比に著しく格差がありますので、女性限定公募などで女性を積極的に雇用するという是正を行うことが妥当であると考えられます」

とした。東京大学が公開している「UTokyo Compass モニタリング指標」によると、2022年5月時点での女性比率は、教授9.2%、准教授15.5%、学生24.0%となっている。

面接で子育てについて質問されるなど、女性研究者のキャリア形成の難しさについて触れたコメントもあった。こうした意見に対しては、「採用時などに男性には聞かない質問を女性にのみ聞いてしまうなどのバイアスはアカデミアに存在していると思います」とした上で、「男女共同参画室では、採用担当者が目を通す人事選考のための『無意識のバイアス』確認シートというものを作成するなどして、意識啓発に努めています」と対策に努めている旨を説明した。

「ライフイベントや子育てを抱えながらアカデミアでキャリアを進めていくのは本当に大変だと思います。東京大学では、ライフイベント(出産、育児、介護等)により研究活動を中断した研究者に対して、円滑に研究活動に復帰できるよう支援し、多様な研究環境を実現することを目的として、研究費を支援する『リスタートアップ研究費支援』などの金銭的支援を設けています。また、男女共同参画室では、現在キャリアを進める上でのスキルを身につけるようなプログラムを実施しようと考えています」

女性教員比率を上げることは男性にとっても重要

東京大学が女性の教授・准教授の比率を上げていくことの重要性については、学びの環境において、女性のみならず男性にとっても重要だとした。

「教授を採用するというのは、既にいる教授陣が仲間を選ぶプロセスです。男性は男性同士のネットワークで情報を得やすかったり、採用側のバイアスにより採用されやすい傾向があると思います。東京大学でも時代の流れにより女性が少しずつ増えてきていますが、ペースは遅いです。国際的に見ても極端な偏りがある状態を早く抜け出すことが重要です。女性教員比率を上げることは多様性ある大学環境につながり、女性学生にとってだけではなく男性学生にとっても、多様な視点や知見を学べる環境に身を置いて教育を受けることはとても重要だと考えます」

また、東京大学は学部生の時点で女性の割合が少ないが、それについては「東京大学を受験してくれる女性が少ないからです。合格率に男女差はありません」とした上で、「女性の中高生に東京大学に興味を持っていただけるよう、各学部・研究科で様々なイベントを実施しています」とした。東京大学男女共同参画室の公式サイトによると、女子高生のための大学説明会や女子中高生向け冊子の制作、女性の在学生による母校の訪問などが行われている。

さらに田野井教授は、男性中心文化の改善にも取り組んでいると話した。

「男性中心文化になっているキャンパス環境を改善すべく、男女共同参画室では全教職員の意識改革などにも取り組んでいます。女性教員を増やすこともまた、女性の学生に来てもらいやすい環境づくりの一つになると思います」