ドトール「450円モーニング」不親切な価格設定の謎
ドトールのお得な朝メニューは現在、サンドイッチとコーヒーがセットで税込450円からとなっています(筆者撮影)
喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。
そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第34回となる今回、訪れたのは「ドトール」です。
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飲食チェーンが密かにしのぎを削っているジャンル、それが「モーニング」です。集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューは、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
今回はカフェチェーン店舗数第2位を誇る「ドトール」のモーニング、「朝ドトール」をレポートします。
朝ドトールは3種類から選べる
ドトールの朝限定メニュー「朝ドトール」の販売時間は、開店から午前10時30分までで、パンとドリンクを組み合わせた「モーニングセット」を提供しています。パンは以下の3種類です。
ハムポテトサラダのセットは450円から(筆者撮影)
ツナサラダチーズのセットも450円から(筆者撮影)
あんバターのセットも450円から。こちらは一部の店舗限定のようです(筆者撮影)
・ハムポテトサラダのトーストサンド
・ツナサラダチーズのトーストサンド
・ソフトフランスパンのあんバター
こちらのパンのいずれかに、「ブレンドコーヒーS」もしくは「アイスコーヒーS」をセットにして、最安値にして税込450円で販売しています(最安値にして、と書いたからには特別なニュアンスがあるわけですが、ややこしいので一旦ここでは「450円〜」と考えてください)。
ハムポテトサラダサンドはシャキシャキポテトの新食感
セルフサービスのカフェチェーンの軽食は、あくまでコーヒーの脇役的な扱いだったりするものですよね。
その点、「ドトール」で販売しているパンやサンドイッチは、具沢山かつ一手間かけた主役級においしいものが多い印象を筆者は持っていたのですが、「モーニングセット」もさすがの一言でした。
朝ドトールのハムポテトサラダセットは、アイスティーとセットで税込460円(筆者撮影)
「ハムポテトサラダ」は、8枚切り程度の厚みがある、食パンぐらいのサイズの小ぶりな山食パンで、ポテトサラダ、ハム、レタス、トマトをミルフィーユのように重ねてサンドした、ボリューム満点の豪華なサンドイッチです。
中央にぎっしり詰まったポテトサラダは、まさかの新食感。じゃがいもはみじん切りしたものを使用していました。硬めのシャキシャキした歯ごたえが楽しい。
ポテトサラダ、ハム、レタス、トマトが入ったトーストサンド(筆者撮影)
味付けはマスタードがピリリと利いて、眠気も吹き飛ぶ予想外のスパイシーさ。食べるとシャッキリするので、食欲の落ちた夏にぴったりです。
「朝限定のセットメニューのサンドイッチだし、無難なものを出しておけばいいや」……とはならないあたりに、「ドトール」の底力が発揮されているように感じます。
シャキシャキの刻みポテトをマスタードで和えたポテトサラダがぎっしり(筆者撮影)
パンはさっくり軽い食感で、事前にほんのりトーストしてあるため香ばしさもプラス。この一手間をかけるのが「ドトール」クオリティなんですよね。
昨今、コンビニのサンドイッチでも200円以上すると考えると、席代も込みでこの価格設定というのは、かなりのお得感。いろんな意味で、250円相当のメニューだとは思えません。
たっぷりレタスのみずみずしさをツナマヨとチーズでまろやかに
朝ドトールのツナサラダチーズセットはアイスコーヒーとセットで税込450円(筆者撮影)
もう一種類のトーストサンドイッチ「ツナサラダチーズ」も、ボリュームでは負けていません。たっぷりのレタスとベビーリーフという、みずみずしい葉野菜は、歯ごたえもよく体が目覚めるような、爽やかさ。
野菜たっぷりでサラダ感覚で食べられる、朝にぴったりのサンドイッチ(筆者撮影)
中央には、オレンジがかったチェダーチーズスライスと、マヨネーズで和えた優しい味付けのツナサラダ。コクがあってしっとりとした舌ざわりのやさしいチーズと、ジューシーなツナサラダがまろやかなハーモニーを奏でます。
断面も美しい、レタスたっぷりでボリューム満点です(筆者撮影)
朝ドトールのあんバターセットは、豆乳ラテとセットで税込540円(筆者撮影)
モーニングセット唯一のおやつパンが「あんバター」です。「ジャーマンドック」にも使用されている、約16センチの大きめサイズのソフトフランスに、たっぷりバターとずっしりつ粒あんが詰め込まれた、カロリーの権化のような罪深き食べ物です。
あんことバターの相性は抜群。バターは贅沢に厚切りでパンチのある味わい(筆者撮影)
柔らかく練られたツヤツヤの粒あんはしっかりと甘く、粒のホクホクとした食感も楽しめます。極厚のバターは有塩タイプで、一緒に食べると口のなかで甘じょっぱさが広がります。
そしてここでも一手間。ソフトフランスが軽く温めてあり、風味アップに加え、パン生地が柔らかくなって食べやすさもアップしていました。こういう小さなこだわりがニクい。
「ドトールモーニング ややこしい」
さて、ここからが余談かつ本題になるのですが、実はウェブブラウザの検索ボックスに「ドトール モーニング」と入力すると、予測変換で「わかりにくい」と出てくることをご存じでしょうか?
どうやら、注文カウンターのメニュー表には「お好きなドリンクとセットにできます」「ブレンド・アイスコーヒーとセットで450円〜」としか記載されていないことが原因のようです(記事序盤の写真をご覧ください)。
公式サイトを見ると、やや詳しめなこんな文言が記されています。
★セットドリンクは、ドリンクメニューからお選びください(会計金額から¥50引き)
※記載の価格はブレンドコーヒー(S)、アイスコーヒー(S)とセットの場合
※モーニング・セットのサンドイッチは単品販売しておりません。
そうなのです。モーニング・セットのサンドイッチは単品販売されておらず、価格がぱっと見ではわからないのです。
やっぱり、なかなかややこしいので、箇条書きにしてみます。
・「ドトール」のモーニングでは、フードメニューが3〜4種類である一方、セットドリンクは好きなものを選ぶことができる
・モーニング・セットは、会計金額から50円引きとなる。つまり、「フードメニュー+セットドリンク-50円=……」という計算式になる
・が、モーニング・セットのフードメニューは単品販売しておらず、肝心のフードメニューの単品価格がわからない
・その結果、『ブレンドコーヒーS/アイスコーヒーS』を全体の価格から引き算し、フードメニューの単体価格を求める必要がある
・そうして求めたフードメニューの単体価格に、好きなセットドリンクの価格を足し、そこから50円引いたのが最終的に支払う価格になる
ご理解いただけたでしょうか?
2023年7月現在、モーニングセットのフードメニューはどれも単品価格が250円ですので、「アイスティーS」税込260円とセットにすると税込460円、「豆乳ラテS」税込340円とセットにすると税込540円となります(それぞれフードメニューとドリンクの合計金額から、50円を引いています)。
シンプルで意外と(?)おしゃれなメニュー表です(筆者撮影)
ドリンクの価格に応じて販売価格が変化する、ということなのですが、差額の表記がどこにもない(¥450〜としか書いていない)ので、利用客としては「何がどうして450円以上の代金を支払っているのか」という気持ちになるようです。
また、モーニングのフードメニューは時期によって変わるので、コスパ重視の方々や、「コーヒーは得意じゃないから、他のドリンクを飲みたい」という方々には、その辺りの注意も必要です。
とはいえ、そこはかとなく感じる「習うより慣れろ」的な温度感が、筆者としては嫌いではないのも事実。高いであろう原価率との兼ね合いなどもあるのかもしれません(今回は商品レビューメインですが、いつか計算式については取材してみたいものです)。
チェーン店のモーニング連載をしていると「店によってサービスや価格が違う」「公式サイトで詳しい説明がない」といったことはよくあるのですが、ドトールはそれらとは種類の違う不思議さで、個人経営のそっけない純喫茶のような味わいを感じます。
ドトールのコーヒーは安いのにおいしい
謎は深まるばかり……などと思う一方で、今回改めて感じたのは「ドトールのコーヒーはおいしい」ということ。アイスコーヒーを飲んだのですが、スッキリとした苦味で爽やかでした。流行りの味というよりは、昭和の喫茶店のコーヒーを今風にした味で、雑味が少なくて飲みやすかったです。
冷えたアイスコーヒーは真夏のオアシス。スッキリコクがあって爽やかな味わい(筆者撮影)
「スターバックス」の深煎り豆ならではの苦味とコクもおいしいし、サードウェーブコーヒー店の浅煎りのフルーティーさもおいしいのですが、こういう普通のコーヒーがおいしいとホッとします。
単品価格で税込250円という、同業他社と比べると圧倒的な低価格でコーヒーが飲めるのは「ドトール」最大の魅力だといえるでしょう。
今回筆者が利用したのは、JR山手線の駅から徒歩3分ほどの立地にある、飲食チェーンが乱立する激戦区に位置する路面店です。土曜日の朝、近隣のカフェチェーンも覗きがてら来たのですが、「ドトール」がどの店よりも混み合っていました。
450円でこのクオリティのパンとコーヒーが出てくるというのは、原価率が高いということが予想できます。利益を生み出すには、経費を節減し、回転率をあげるしかありません。現在のカフェチェーンは、安さで勝負せずブランド価値や居心地の良さを重視する傾向がありますが、どうやら「ドトール」はその逆の戦略で戦っているようです。
ショーケースに並んだサンドイッチもお手頃価格でした(筆者撮影)
お値段以上の価値を感じる「モーニングセット」
インテリアは至って簡素。店内レイアウトからは、限られた床面積にいかに多く席を作るか苦心したのが伝わってきます。
店の奥まで行くために座っている人の背中をこすりながら進まねばならぬほどに通路は狭く、壁をうまく使い、テトリスのようにカウンターテーブルを組み合わせて、20席ほど設置した客席は、もはや立ち食いそば屋の様相を呈しています。
お世辞にも居心地が良いとは言えないかもしれませんが、それでも繁盛しつづけるのは、皆が「ドトールは安くておいしい」というのを知っているから。時間のない朝にサッと食べてサッと出ていくなら、おしゃれな内装も座り心地の良い椅子もそんなに重要ではないのです。
税込450円。お値段以上の価値を感じる、そして少しの謎もくれる(?)魅力的な「モーニングセット」がそこにはありました。
編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。
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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)