「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、異業界・異業種から転職し、企業広報(PR)・ブランディング担当として活躍を続ける柴山紗代子氏にインタビューを行いました。

柴山紗代子氏

○自己投資としての転職とキャリアチェンジ

――柴山さんは、ものすごい振れ幅の転職、キャリアチェンジを鮮やかにされている印象なのですが、まずはご経歴と自己紹介をお願いします。

柴山紗代子氏(以下、柴山氏):キャリアの始まりは、ラグジュアリーブランドの販売でした。その後、ラグジュアリーホテルのスタッフへ転身し、ホテル広報としてサービスを作る人々を支えるための縁の下の力持ち的な仕事になりました。

現在は企業のブランディングという点では共通する業務ですが、ホテルとは全く異なる業界に身を置いています。現職の前はインシュアテック(保険×テック)のスタートアップ企業で広報の仕事をしていました。

――ホテル業界から転職した理由は何だったのでしょうか?

柴山氏:きっかけはコロナです。2019年の秋頃は、翌年はオリンピックもあるし、インバウンド需要も高まるだろうと、ホテル業界の人たちはみんな思っていました。ところが、その翌々月にはコロナで外国人は来日できない。外出や国内旅行の自由もなくなりました。

当然、ホテルの業績は落ちます。幸い、そのときの会社は給与や人員への影響はなかったのですが、「自分はこの先どうなるんだろう」というリスクを強く認識しました。

ちょうどこの頃、お金を守ることの重要性に初めて触れる機会がありました。それまでどこか他人事だったのですが、身近で起きたこの機会をきっかけに、「もしも自分が同じ立場になったら、何もわからない」と危機感を覚えました。そこで、当時、時間ができたこともありFPの勉強を始めました。勉強していくうちに面白くなり「お金の大切さを伝えられる仕事がしたい」と思うようになったのですが、そこで出会ったのが前職でした。広報の仕事を募集していたこともあり、良いご縁だと思ったわけです。

当時はリモートワークやテレワークを導入するスタートアップ企業が増えていて、自分の都合と調整しながら柔軟な働き方ができると知りました。実家が離れているため、家族に何かあった時でも調整しつつ仕事ができる、リモートワークという選択肢があることはとても魅力的でした。

海外ではうまく転職を重ねることで、ステップアップするものという話を聞いたことがあります。当時の周りの方々もそのようにキャリアを積んでいる方が多く、私自身も自然とそういった感覚になっていました。1社に勤め上げてキャリアップしていくというよりは、自分の中で達成できた、次に挑戦してみたいと思えたら、次のステップを検討していく、という感覚です。そういった感覚が養われていたことも、今につながっていると思います。

「広報」や「ブランドマーケティングコミュニケーション(BMC)」という仕事は、会社の存在や良さを知っていただくうえで欠かせないことなのですが、情報発信をすれば炎上リスクもあります。マスメディアに取り上げられるのは簡単なことではありませんし、日々の積み重ねがとても重要だと再認識しています。このような取材も、これまで積み重ねてきたことがつながっているのだと感じています。

――そうですよね。某グループチャットでやり取りをしていてこの取材に至ったのですが、いろいろな偶然が重なって今につながっていると思います。広報やBMCの仕事は、「メディア露出を増やすこと」と短絡的に考えられがちなのですが、顧客や社員、取引先、株主、地域、社会、政府、国などとの関係構築がその本質です。メディアに取り上げられて瞬間的に問い合わせが増えても、ハードワークになって貴重な人材が辞めてしまうかもしれない。ハイリスク・ハイリターンな面もありますから、採用や組織体制づくりも重要なのですよね。採用のためにも広報活動は必要で、グルグル巡っているものだと思います。

○異業種へのキャリアチェンジはリスク? それともチャンス?



――愚問かもしれませんが、異業種や異業界へのキャリアチェンジは、柴山さんにとってリスクでしたか?それともチャンスだったのでしょうか?

柴山氏:異業種へのキャリアチェンジですが、私の場合、転職で異業種、同じ会社内で異業種というどちらのキャリアチェンジも経験しています。どちらもリスクはあるのですが、チャンスの方が大きいと思っています。

少しストイックですが、難しい道の方が学ぶこともたくさんありますし、私自身の意思でステップを選んでいるので、背水の陣の精神を持ち、まずは3ヶ月、越えられたら次は6ヶ月、というスタンスで向き合っていました。周りのメンバーに恵まれていることもありますが、キャリアチェンジしても努力次第で徐々に自分のペースをつかむことができます。

もちろん困難はたくさんありますが自分で拓けた道だからこそ、新しい世界が広がってくるので、キャリアチェンジはチャンスとしか思っていないですね。異業界へのキャリアチェンジの場合も、リスクがありますし、異業種へのキャリアチェンジよりももっと強い信念が必要になると思います。そのためには徹底的に自分と向き合い、なぜその業界を選んだのか、そこで自分自身がどうなりたいのか、何をやりたいのかを自分なりの答えを明確にすることが大切だと思っています。

昨今話題にも挙がっているリスキリングやアンラーニングの精神を持ち、ゼロから勉強するつもりで面白いところを探求していれば、自然とチャンスが力になってくると思います。しかし、全てにおいて大切なのは、自分自身にぶれない軸を持っておくことだと思っています。心が疲れることもありますが、徹底的に自分に向き合った先の答えがぶれない軸でありヤドリギになってくれて、助けてくれます。

私は業界を変えたことで、今まで知り合えなかったような多くの方に出会い、お話を聞き、刺激を受けています。もちろん、上手くいかないこともありますが、自分の強みと弱みを知り、自分自身が受け入れて、相手に対して何か自分ができることをギブ(与える)することを意識していれば、大抵は上手くいくのではないかと思いますね。

(後編に続きます)

中島宏明 なかじまひろあき 1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。 この著者の記事一覧はこちら