NVIDIAが2023年5月24日に発売したミドルレンジGPU「RTX 4060 Ti」と、AMDが5月26日から発売予定のミドルレンジGPU「Radeon RX 7600」を比較したレポートが、海外メディアのThe Vergeに公開されました。いずれも比較的安価で入手しやすいゲーマー向けGPUとなっていますが、ライターのトム・ウォーレン氏は「失望しました」と苦言を呈しています。



AMD’s and Nvidia’s latest sub-$400 GPUs fail to push the bar on 1440p gaming - The Verge

https://www.theverge.com/2023/5/24/23734022/nvidia-rtx-4060-ti-amd-rx-7600-gpu-graphics-card-benchmark-test

NVIDIAの「RTX 4060 Ti」とAMDの「Radeon RX 7600」はほぼ同時期に発売されたゲーマー向けミドルレンジGPUであり、「RTX 4060 Ti」はVRAMが8GBのモデルで価格は399ドル(日本での販売価格は税込6万9800円)、「Radeon RX 7600」はVRAMが8GBのモデルのみで269ドル(日本では税込約4万円台半ば)となっています。

いずれのGPUも比較的手が出しやすい価格帯で登場していますが、ウォーレン氏は2つとも最適解像度が1080p(フルHD)となっている点に不満を漏らしています。ウォーレン氏は、AMDとNVIDIAには同様の価格帯で最適解像度が1440pのGPUを出すことを望んでいたそうで、「失望しました。私はAMDとNVIDIAが、1440pをメインストリームに押し上げられるこの世代のGPUで、より手頃な価格のオプションを提供することを待ち望んでいました。しかし、この1週間で見たものは私の期待に応えるものではなかったのです」と述べています。

近年では4Kでプレイできるゲームも増えているものの、約7年にわたりゲーム市場のメインストリームは1080pであり続けています。ウォーレン氏は、NVIDIA「RTX 4060 Ti」の399ドルという価格帯では1440pにするべきであり、AMD「Radeon RX 7600」の269ドルという価格帯では1080pが適しているものの、AMDには価格を400ドル(約5万5000円)まで上げて1440pのパフォーマンスを発揮するGPUを出してほしかったと述べています。



もちろんNVIDIAやAMDも市場の要望を無視したわけではありません。ゲーム販売プラットフォームのSteamを運営するValveのデータによると、PCゲーマーの60%以上が1080pでゲームをプレイしていることがわかっています。つまり、NVIDIAやAMDは「1440pの需要は低い」と判断し、ミドルレンジGPUにおいて1440pをターゲットにする必要はないと考えた可能性があるわけです。

しかし、ウォーレン氏は「1440pの需要の低さは、PCゲーマーにとってモニターのアップグレードが一般的ではないことや、1440pに対応するためにGPUへもっとお金を支払わなければならないことが、理由の1つかもしれません。1080pをターゲットにするのであればそれ以上のVRAMを搭載する必要がないので、これらのカードが8GBのVRAMで出荷されているのはそのためです。解像度が低ければ、テクスチャーの質を高めるためにそれほど多くのVRAMを必要としません」と述べています。

「RTX 4060 Ti」と「Radeon RX 7600」は最適解像度こそ1080pに設定されていますが、1440pでゲームをプレイできないというわけではありません。そこでウォーレン氏は、実際に「RX 7600」「RTX 4060 Ti」と比較対象として「RTX 3060 Ti」「RTX 3070」「RTX 3070 Ti」「RTX 4070」を用いて、1440pでゲームをプレイした際の平均fpsを測定しました。測定結果を表にしたものが以下。

ベンチマークRX 7600RTX 4060 TiRTX 3060 TiRTX 3070RTX 3070 TiRTX 4070シャドウ オブ ザ トゥームレイダー93118108118132159Forza Horizon 571988897107128CS:GO274371486536555487Gears 574989096108129メトロ エクソダス456255696882Returnal577269798395アサシン クリード ヴァルハラ6486798596111ウォッチドッグス レギオン466962727990サイバーパンク2077527359667380

ウォーレン氏は、1440pにおける「RTX 3060 Ti」から「RTX 4060 Ti」への性能向上は平均して12%ほどであり、新たな世代のGPUに期待するほどの向上ではなかったと指摘し、「非常に残念です」と述べています。また、「RTX 4060 Ti」よりも「RTX 4070」の性能が平均30%ほど高く、価格はRTX 4070の方が200ドル(約2万8000円)ほど高いことを考えると、最適解像度が1440pのGPUは「RTX 4060 Ti」と「RTX 4070」の中間ほどの価格になるのが現実的だろうとも述べました。

一方、「Radeon RX 7600」ではいくつかのゲームで60fpsを下回っており、ウォーレン氏は「最新かつ最高のゲームをプレイしたい場合、RX 7600を1440pゲームに推奨するのは難しいです」と分析しています。

さらに、「Radeon RX 7600」「RTX 3060 Ti」「RTX 4060 Ti」を使用して、同じゲームを1080pでプレイしてfpsを測定した表が以下。ウォーレン氏は、「1080pで特に設定を最大化しないままプレイする場合、AMDのRadeon RX 7600は堅実なパフォーマンスを発揮します」と述べ、1080pで普通にゲームをプレイする分には問題ない性能だと述べています。なお、Forza Horizon 5ではゲーム開始時にエラーが表示されたためテストできなかったそうで、5月24日のレポート公開時点でAMDは問題について調査中だったとのこと。

ベンチマークRX 7600RTX 3060 TiRTX 4060 Tiシャドウ オブ ザ トゥームレイダー147160182Forza Horizon 5N/A103122CS:GO463602542Gears 5106131141メトロ エクソダス667585Returnal799297アサシン クリード ヴァルハラ93103116ウォッチドッグス レギオン718994サイバーパンク20778593   99

いずれのGPUも最適解像度が1080pであることに加え、VRAMが8GBであることにもウォーレン氏は苦言を呈しています。Radeon RX 7600は8GBモデルしかない一方、NVIDIAは16GBモデルの「RTX 4060 Ti」も7月に発売予定ですが、ウォーレン氏はRTX 4060 Tiはメモリのバス幅が128bitにとどまりRTX 3060 Tiより減っている点を指摘し、「なぜ1440pで制限があるこのGPUの16GB版を購入するのでしょう?」と述べています。

さまざまな不満点を挙げてきたウォーレン氏ですが、電力効率が非常に優れている点は「RTX 4060 Ti」の美点だとも述べています。RTX 3060 Tiの総グラフィックスパワーは200ワットである一方、RTX 4060 Tiでは160ワットにとどまり、多くのゲームで140ワットを下回るとのこと。ウォーレン氏は、「新世代のGPUがより少ない電力で動作するようになったのは素晴らしいことです」とコメントました。