スタッドレスタイヤに履き替えるときなどに、タイヤの表面を見るとひび割れを見つけたという人もいるかもしれません。浅いものならそれほど問題ではない、ともいわれますが、最悪、ひび割れが原因でバーストに至るケースも。どう対処すればよいのでしょうか。

経年変化で生じるタイヤのひび割れ

 スタッドレスタイヤに交換する際、夏タイヤの溝の間に小さなひび割れを見つけた、という人もいるのではないでしょうか。ひび割れは、タイヤのゴムがオゾンや紫外線に反応して油分が揮発することなどによって生じるもの、つまり経年劣化による現象のひとつです。そのため、走行距離が短く溝が残っているタイヤでも、製造から長時間が経過していると、ひび割れが生じることがあります。


タイヤの溝の中に生じた小さなひび割れ。シワから小さなひび割れに発展しかけている(小林祐史撮影)。

 タイヤのゴムの油分は時間が経てば揮発するため、やがてひび割れが生じるのは避けられません。そのため、タイヤメーカーは浅く小さなひび割れなら問題なく走行できるようにタイヤを設計しています。

 ただし、ひび割れが深く大きなものに進行すると、ゴム内部にあるカーカスやベルト、ビートといったタイヤの背骨にあたる重要な構造材が雨水などの水分に触れることになります。それらの構造材は金属や化学繊維、高炭素鋼などが素材であるため、水分に触れるとサビや腐食が生じます。

 内部に侵入した水分は、ゴムの劣化を促進させるとともに、内部構造を腐食させ、それによって内部の体積が増加します。この内側から外側に向かう力(膨張)が高じると、タイヤはバーストしてしまうのです。

シワのような小さなものは要観察。地割れのようなものは危険

 タイヤのひび割れを問題アリ・ナシなしと判断する基準は、ひびの大きさと深さです。初期はシワのようなもので、それが徐々に大きく深くなります。シワが小さなひび割れとなったら要注意です。

 その時点で、整備工場やタイヤ専門店に点検を依頼すべきでしょう。プロの目でひび割れの進行度を判断してもらうとともに、そのひびがどこまで深く大きくなったら危険になるのかを確認しておきます。もし、小さなうちに見過ごしてしまい、発見時には地割れのような深く大きなひび割れとなっているようなら即交換です。

 ひび割れが接地面(トレッド)の溝の間ではなく、側面(サイドウォール)や、両者の間にあるショルダー部に生じている場合は、より危険度が高くなります。接地面は地面に触れる部分なので、もともと素材の厚みや強度がありますが、側面やショルダーは変形して地面からのショックを吸収するために、薄く、しなやかなゴムが使われています。そのため、見た目は浅く小さいひび割れでも、カーカスやベルトやビートまで達している可能性があるのです。

 また、ひび割れはタイヤの空気圧や洗車の仕方、タイヤの保管状況によってさらに悪化する可能性があります。中でも空気圧不足は一番の大敵です。空気圧が足りないとタイヤは正常な形状を保てなくなり、サイドウォールに歪み、ひび割れが生じやすくなります。また、定められた重量以上のものを積載して走行することも、サイドウォールを歪ませることにつながるので、空気圧とともに積載物の重量にも配慮する必要があります。


バーストし、ひしゃげたタイヤのイメージ(画像:Akhararat Wathanasing/123RF)。

 過度な洗車もタイヤに悪影響を及ぼします。タイヤの洗浄をしすぎると、泥汚れとともに油分まで流してしまうことになり、ひび割れが起きやすくなります。また洗車剤が残っているような不完全なすすぎもNGです。適量の洗剤で洗車し、よくすすぐことを心がけるべきでしょう。

 タイヤを保管する際は、紫外線によるゴムの劣化を避けるため、直射日光を避け、日陰や保管用のタイヤカバーで覆うなどの対策が、安全に長持ちさせるための必須条件となります。