日本初のLNG燃料フェリー「さんふらわあ くれない」が、ついに発着港である別府国際観光港へ姿を現しました。就航と同時に開業する新フェリーターミナルも実見。従来船からだいぶ大型化する新造船は、どう便利になるのでしょうか。

別府港は新ターミナルに発着「さんふらわあ くれない」

 商船三井グループの「フェリーさんふらわあ」が大阪〜別府航路に投入する国内初のLNG(液化天然ガス)燃料フェリー「さんふらわあ くれない」が2022年12月16日、三菱造船から引き渡されました。同船は建造ヤードの三菱重工業下関造船所から別府国際観光港に移動。来年1月13日の就航に合わせて供用を始める新ターミナルの前に接岸し、ベッドなど備品の設置やLNG燃料供給といった就航に向けた準備を進めています。


さんふらわあ くれない(深水千翔撮影)。

 この別府港の新しいターミナルは、「さんふらわあ くれない」の就航に合わせて整備されました。

 LNG燃料フェリーである「さんふらわあ くれない」ならびに同型船「さんふらわあ むらさき」の船体規模は1万7300総トン、全長は199.9mで、夜間の瀬戸内海を航行できる最大級の長さです。積載能力は13mトラック換算で約137台。右舷側にランプウェイを2か所備えており、ここから車両の荷役を行います。

 現在、大阪〜別府航路で運航している「さんふらわあ あいぼり」「さんふらわあ こばると」は全長153m、9245総トンですから、比較すると新造船がどれだけ大きいかわかるでしょう。

 ただ、「くれない/むらさき」を運航するためには、LNG燃料の供給場所と、積載能力の強化に伴って増加するトレーラーシャーシ置き場の確保、そして乗船口から船内のエントランスにバリアフリーで直接アクセスできるボーディングブリッジを整備する必要があります。

 一方で1980年代に建設された別府観光港のフェリーターミナルの周囲は、フェリーを活用した車両航送の規模が今ほど大きくなく、タラップから乗船していた頃の設備が残っています。ターミナルから伸びるボーディングブリッジも大型フェリーに対応しておらず、岸壁の浚渫も必要です。

 このため既存のフェリーターミナルの北側に、2階建ての新ターミナルを建設。併せて船首と船尾両方のランプを使用できるよう整備しました。岸壁には、タンクローリー4台を使用して陸上から船上へのLNG燃料供給を行う「トラックtoシップ方式」のためのスペースを確保しています。

新ターミナルの“今っぽい”施設とは 今後は宇和島航路も統合

 新ターミナルの内部はコンパクトながら、チケットカウンターも含めて明るく開放的な雰囲気になっています。ユニバーサルデザインを意識し、バリアフリートイレやベビーケアルームなどを設けたほか、「祈祷室」「カームダウン・クールダウンルーム」など多様な宗教・文化に対応した施設も特徴です。屋外にはペットと一緒に乗船する客のため「ペットお散歩広場」も設けました。

 エレベーターでターミナル2階に上がると、すぐにボーディングブリッジから乗船口に入ることができます。重いトランクやカートを持っていても、これまでのように船内の階段を上る必要はありません。

 大分県は「別府港再編計画」として、フェリーさんふらわあ(大阪〜別府)と宇和島運輸(八幡浜〜別府)の2か所に分かれているフェリーターミナルを1か所に集約する構想を打ち出しています。このため既存のターミナルは「さんふらわあ こばると」の引退をもって、関西汽船時代から続く大阪との玄関口としての役目を終えます。


さんふらわあ こばるとのデッキから見た、さんふらわあ くれない(深水千翔撮影)。

 なお、新ターミナルに関しても、大阪航路と宇和島航路の待合室を集約したターミナルの完成後は、そちらへ移転する予定となっています。

 別府観光港の受け入れ設備も完成し、期待の新船である「さんふらわあ くれない」の運航に向けた準備は整いつつあります。同船は習熟航海を行った後、いよいよ2023年1月13日にデビューします。