世界各国で、社会的な課題を解決するような新型航空機の開発がトレンドとなるなか、2022年、いくつかの機体に大きな動きや進展が見られました。これらの機体はいずれも“異形”といえる革新的な設計が施されていました。

胴体2本&プロペラ10基!

 ここ数年世界各国で、これまでより環境負荷を大きく減らすなど、社会的な課題を解決するような新型航空機の開発がトレンドとなっています。2022年も、いくつかの新型機に大きな動きや進展が見られました。これらの航空機はいずれも、まさに“異形”としかいいようがない革新的な設計が施されています。どのようなものがあったのでしょうか。


ボンバルディア「エコジェット」のイメージ(ボンバルディアの公式動画より)。

●異形で巨大な水上飛行機「リバティー・リフター」

 5月、アメリカのDARPA(国防高等研究計画局)が「革新的で破壊的な(innovative and disruptive)」な設計を特徴とする超大型水上飛行機「リバティー・リフター(Liberty Lifter)」の開発計画を発表しました。

「リバティー・リフター」は、2本の胴体をもつ「双胴機」のスタイルを採用し、翼に10基のプロペラがついたデザインが公開されています。具体的なサイズについては現在発表されていませんが、国防総省の重量物運搬要件に基づき、大型輸送機並みの100t以上の貨物を搭載できる仕様が計画されています。飛行高度は1万フィート(約3050m)を維持できるよう設計されることなども開発要件に組み込まれています。

 また仕様には、翼状の物体が地面や水面近くを移動する際、それらのあいだの空気流の変化に物体が影響を受ける「地面効果」を用いて、水面から100フィート(約30m)未満の超低空で飛行することができることも盛り込まれています。

 DARPAによると、現在の海上輸送は大量の貨物輸送には非常に効率的ではあるものの、脅威に対して脆弱で、整備された港が必要であり、輸送時間も長くなるというデメリットがあるそう。一方で、空輸は高速であるのに対し、海上での軍事行動を補助できる範囲が限られているといいます。「リバティー・リフター」の開発は、これらの課題を解決できるものとされています。

民間機は「エイ」「ヒラメ」「翼付きの魚」!

●民間機の老舗メーカーは「エイみたいなビジネスジェット」案を公開

 カナダの航空機メーカー、ボンバルディアが「エコジェット研究プロジェクト」と銘打った新たな研究を進めています。この技術検証の一環として9月、これまでとは全く異なった形状のビジネス・ジェットの設計案「エコジェット」が公開されています。

「エコジェット」のデザイン案は、主翼を胴体と一体化させた「ブレンデッドウィングボディ(Blended Wing Body/全翼機)」に近い形状を採用。胴体はこれまでのジェット機よりも平べったい設計となっており、そのルックスは「エイ」や「ヒラメ」にたとえられるようなものとなっています。なお、エンジンは胴体後方上部に2基設置されています。

 この研究はボンバルディアの低炭素・脱炭素社会実現への取り組みの一環で、空力と推進力を改善させることによって、二酸化炭素排出量を最大50%改善できる可能性を持つとのこと。今後は、大学などの研究機関などとの提携を進め、プロトタイプ(試作機)を製作する方針し、実現可能性を模索する方針です。


超大型水上飛行機「リバティー・リフター」のイメージ(画像:DARPA)。

●ホントに飛んだ!異形の「史上初の完全電気飛行機」

 スタートアップ企業Eviation社が手掛ける完全電気飛行機「アリス」が9月27日、初飛行に成功しました。

 同社は「アリス」を「史上初の完全電気飛行機」と称しています。電気を動力源とする飛行機は世界各国で開発競争が進んでいるなかで、「アリス」はそのなかでも先んじて実際にフライトしたモデルのひとつです。

「アリス」は翼の生えた魚やクジラのような、独特な形状をしています。旅客機としては9席を設置することができるとのこと。最大航続距離は815km(440海里)としています。推進装置は、胴体後部に装備された2発の電動プロペラで、二酸化炭素排出をゼロにできるほか、従来のエンジンより騒音を抑えられるとのことです。この機はすでに、地域航空会社や貨物航空会社からの受注を獲得しています。

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 このほかにも近年、こういった異形の新型航空機の設計案は海外を中心に次々に生まれています。2023年はどのようなビックリルックスの機体が世に出るのかが注目されます。