なぜ磐田は残留できなかったのか。理想に現実が追いつかず、ビジョンの曖昧さが招いたJ2降格
伊藤彰前監督(現・ベガルタ仙台監督)が0-6で敗れた8月13日の浦和戦(25節)の直後に解任、残り9試合はヘッドコーチから昇格した渋谷洋樹監督に託されたが、ここまで8試合で1勝4分3敗と挽回できずに、最下位からの脱出もできなかった。
ただ、今シーズンの磐田が100パーセント、失敗しかないチームだったかと言うと、そうではない。一つひとつの試合を振り返れば、伊藤前監督の時期から勝点1を3にできた試合、0を少なくとも1にできた試合はあった。
終盤まで残留争いをしている全てのチームに当てはまるが、シーズンはそうした紙一重の積み重ねでもあるのだ。磐田もその例外ではないが、降格という結果に妥当性があるのも確かだ。
J2昇格に導いた鈴木政一氏からベースを引き継いだ主力メンバーは平均年齢が高く、シーズンを戦いながら若手の組み込みも進めないといけないのは明らかだった。やはり途中解任となったガンバ大阪の片野坂知宏前監督にも言えることだが、新監督が同時にいろんなタスクを担うと非常にリスクが大きい。
まして、J1チームを率いた経験が無い新監督のもとで、“昇格組”がいきなり“自分たちのサッカー”を簡単にやらせてもらえるほど甘い世界ではない。
その現実をいきなり突き付けられたのが、1-2で敗れた第2節の清水エスパルスとの静岡ダービーだった。5-4-1で守りながらボールを持てば、4-3-3や3-4-3と可変していくスタイルは構築の初期段階で、ボールを失った直後など、攻守のトランジションなどで隙が生じやすい。そこをシンプルに突かれての敗戦だった。
それでも試合を重ねながら徐々にオプションが増えたり、上向いている部分もあった。だが、そうしたスタイルの割に全体の走行距離が低く、可変システムも相手を見ながら臨機応変にというより、パターンになってしまう現象が起きるなかで、序盤戦にゴールを量産した右サイドの鈴木雄斗の動きなども、相手に読まれやすくなった。
