新橋〜横浜間に日本初の鉄道が開業して2022年で150年。アニバーサリーイヤーの今年は、さまざまな限定品のリリースやイベントが開催されています。なかでも話題を呼んでいるのが、シチズンの記念ウォッチです。

鉄道ファンも脱帽、シチズンのこだわりが半端ない

 今年2022年は日本初の鉄道開業150年というメモリアルイヤー。新橋〜横浜間で初の鉄道が開業したのは1872年10月14日、明治5年のことでした。ということで、10月14日の「鉄道の日」にちなみ、様々な記念イベントが催され、お得な切符や記念グッズも続々発売されています。そのなか、SNSなどで「欲しい!」といった声が多くみられるのが、シチズンから発売になった記念ウォッチです。


シチズンの鉄道開業150周年記念ウォッチ3種(画像:シチズン)。

 販売されているのは3種類。150年前の鉄道開業時にイギリスから輸入された1号機関車、1979年から約30年間活躍した中央線201系、そして2016年から営業運転を始めた山手線E235系、この3車両がそれぞれモチーフになっています。

 時計のベースとなっているのは、「アナデジテンプ」というモデル。世界初の温度センサー付き腕時計「サーモセンサー」を初号機とする1980年代のシチズンを代表する名作ウォッチです。アパレルブランドやセレクトショップとの別注など、たびたび復刻されている人気モデルですが、今回の記念モデルへの思いは別格だそう。その魅力と細部にわたるこだわりについて、シチズンにお話を伺いました。

 そもそも、今回のコラボ企画はシチズンという“市民”のためのブランドと、市民の足として活躍している通勤電車は親和性がとても高いということから始まったそうです。鉄道ファンにも満足してもらえるよう、車両の特徴を細かいところまでデザインに落とし込んだとのこと。

 そのひとつが、1号機関車と山手線E235系のアナログの「秒」表示部分に採用されたディスク型秒針です。シチズンの現ラインナップで、ディスク型秒針を採用したデザインはこの2本だけという珍しいもので、1号機関車では「動輪の動き」、E235系では「山手線の路線図」を表しています。この表現が通常の針状では難しかったので、ディスク型秒針を採用したとのこと。

 他方、中央線201系では、「秒」表示部分に運転台のメーターをイメージした秒針を採用しているほか、編成札(列車編成を前面から識別するための記号が書かれた札)をモチーフにしたカラーリングをこっそり忍び込ませています。

質感で「時代」を表現 どうやって?

 とにかく、シチズンのこの企画に対する思い入れは強く、「今回は鉄道開業150年の記念ということもあり、それぞれの時代の雰囲気を腕時計としてどう表現するか、時計メーカーとしてやりがいとこだわりをもって突き詰めてきました」とのこと。

 1号機関車では、日本鉄道界の始祖へのリスペクトも込め、通常このクラスの腕時計には採用されることの少ない、高級感のある金属部品をふんだんに使用しています。たとえば、左上にあるアナログ時計のインデック(目盛り部分)にも金属パーツを使用。通常だと文字盤に印刷することが多いなか、より機関車らしさを出すため立体的なパーツを使用したそうです。

 中央線201系では、その特徴的なオレンジバーミリオン色を文字板で表現、ペンキのような質感で当時のレトロな雰囲気を演出するため、塗装工程の試行錯誤を繰り返したといいます。

 また、山手線E235系は、最先端の車両ということもあり、現代的な雰囲気を出すためデザイナーがアイデアを絞り、文字板ではなく、ガラス自体にウグイス色と黒のドットパターンを施したそうです。これらの思いや追求の結果として、純粋な腕時計としての完成度を高めることにもつながった、とシチズンは話していました。


シチズンの鉄道開業150周年記念ウォッチ(画像:シチズン)。

 ちなみにこのモデル、基本的に店頭販売はなく受注生産となっています。その理由は、数量限定生産とした場合、本当に商品を購入したい人が購入できなくなってしまうかもしれないと考えたそう。純粋に鉄道を愛するすべての人に、鉄道愛のこもった腕時計をお届けするため、あえて完全受注販売の形をとった、といいます。

 受注期間は12月7日までで、お届けは来年6月下旬の予定。「おかげさまで、発表直後から予想以上の反響をいただいております」とのことでした。