46年前の10月12日、シコルスキー社製の実験機「S-72」が初飛行しました。

まさに「いいとこ取り」の実験機


Xウイングのコンセプトが搭載された後期S-72試験機(画像:NASA)。

 今から46年前の1976(昭和51)年10月12日、アメリカ・シコルスキー社(現ボーイング)の複合ヘリコプター試験用機、「S-72」が初飛行しました。

 天井にローターがあることから、疑いもなくヘリコプター(回転翼機)ですが、本体の形状、存在感のある主翼、そして2機のジェットエンジン(ターボファン)は、明らかに飛行機(固定翼機)のものです。

 この「キメラ」ともいうべき実験機、ローターを使用し垂直に離着陸し、空中で静止することが可能なのに、エンジンと大型の主翼で高速飛行ができるという、まさにヘリコプターと飛行機の「いいとこ取り」をめざして設計されたものです。ゆくゆくは救助活動から潜水艦に対する攻撃まで、マルチな活躍が期待されていました。

 野心的な研究成果を試してみた初飛行。しかしその裏では、さらなるコンセプト「Xウイング」の計画も始まっていました。

 機体上部に装備したXウイング、その見た目はヘリコプターのメインローターですが、翼のようにしっかりとした構造で、しなりません。ヘリコプターと同様に垂直離着陸ができますが、飛行中はこのXウイングが文字どおり「X」の形で静止し、翼のように揚力を得ることができる仕組み。さらにジェットの吸気の一部をXウイングから排気することで、ヘリのローターブレードのような微調整と同じ効果を得ることができるという、革新的なコンセプトが複数盛り込まれていました。

 ただ「Xウイング」のほうは実用化に至る前に、予算の関係で開発はストップ。夢とロマンにあふれた実験機も結局、その後の研究が進められることなく終わりました。