転落防止などのために設置が進んでいる駅のホームドア。ただのドアかと思いきや、設置するために細かな工夫と配慮がされているようです。ずれている理由や重さなど素朴な疑問を、メーカーに聞いてみました。

ドア同士がぶつからないような工夫も

 駅のホームドアを眺めると、左右2枚のドアがずれているケースがあります。2枚のドアの長さが違うため、閉まっている時に2枚の接合部は中央に来ず、左右のどちらかに偏るわけです。

 このようなホームドアは特に、複数の形式の車両(あるいは複数の鉄道会社)が乗り入れる路線で見られます。ずれる理由は戸袋の長さが違うから。なぜ違うのかというと、戸袋は車両のドアに干渉しない箇所に設けられますが、この箇所が、乗り入れる全ての車両に合わせた位置となるよう、号車ごとに調整されるためです。加えて、ホームドアには非常脱出口も設けられますが、するとその分、戸袋長は制限されます。


複数の形式(鉄道会社)の車両が乗り入れる路線では、左右2枚のドア長が違うホームドアを見かける。写真はイメージ(2022年9月、大藤碩哉撮影)。

 さらに観察すると、ドアは線路側とプラットホーム側にもずれていることに気づきます。「ドアが開き戸袋に収納された際、2枚のドアの干渉を防ぐため」というのは分かるのですが、メーカーであるナブテスコに聞くと同じ回答でした。ちなみにずれ幅は、種類にもよりますが8.5cmほどだそうです。

ホームドアが「鉄道会社にとって」収入源に!?

 ドアはいくつか種類があり、重さは360〜500kgもあるそうです。例えば東京メトロ半蔵門線の永田町駅にあるナブテスコ製のドアの重さは、1セット(ドア2枚分)で500kg。1両にドアが4セット分必要として、10両編成なら40セット分。つまり単純計算で500kg×40セット=2万kg、計20トンという総重量になります。プラットホームにかかる負担はかなり大きく、本体の値段や設置費用に加え、重さに耐えうるホームの強化工事費を考えると、鉄道会社の経済的負担は相当なものです。

 負担軽減にドアの軽量化は欠かせません。ドア一式を金属製にするのではなく、例えばドア部分は、筆者(武田信晃)が触った感触だと、透明ガラスのような異なる素材に見受けられました。

 透明にするもうひとつの意味は、視認性を高めるためです。万が一、ホームドアと車両のあいだに人などが取り残された場合にホームから確認しやすくなるほか、利用客があらかじめ、車両とホームの隙間を認識しやすくなります。また、ホームに開放感も持たせています。

 ところで冒頭、ドアの左右がずれているケースを紹介しましたが、ナブテスコは左右を同じ寸法にする代わりに「大開口ホーム柵」というドアを導入することで、多彩な車両に対応できるようにしているそうです。

 ホームドアには、電車待ちのあいだも楽しませてくれるものもあります。戸袋部分に縦型のスクリーンが設置されており、ここには運行情報などのほか、広告も流れます。ただしスクリーンの有無は、鉄道会社によって異なります。もし、ここをデッドスペースにせず活用するならば、鉄道会社にとっても新たな広告収入源となることでしょう。