“ボーイングが作った船”ジェットフォイル、実はかなり「旅客機」っぽい!? 飛行機目線で乗船
世界有数の航空機メーカー、米・ボーイング社。実は同社が設計を行った船があります。この“ジェットフォイル”こと「ボーイング929」は日本で乗ることが可能。実際に乗ってみたところ、旅客機らしさが詰まっていました。
ボーイング・川崎重工がタッグした「929」
世界有数の航空機メーカーとして知られる、アメリカのボーイング社。「ジャンボジェット」と呼ばれた超大型旅客機747シリーズをはじめとし、これまで多くの航空機を生み出してきました。このボーイング社、実は船を開発したことがあります。そして、日本ではその船にいまも乗ることができます。
佐渡汽船「ジェットフォイル」の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
新潟と佐渡・両津港などを海路で結ぶ佐渡汽船。このルートではフェリーのほか、「ジェットフォイル」と呼ばれる船に乗ることができます。このジェットフォイル、実は「ボーイング929」と呼ばれるモデルで、ボーイング社が開発設計を行ったのち、川崎重工がライセンスを引き継ぎ製造などを行っています。
ジェットフォイルの特徴はなんといってもその高速性。80km/hにも及ぶスピードで航行が可能なのです。これはボーイング社の航空機技術を駆使して開発したことによるもの。ガスタービンエンジンで駆動されるウォータージェットポンプにより1分間に約150tの海水を高圧力で噴射させ、高速推進を実現します。
また、船体の前後にある水中翼の揚力を用い、船体を海面から浮かせて航行するのも高速航行の秘訣です。航空機でいうところの大気の代わりに、水で揚力を得ており、翼走中のジェットフォイルは、航空機ときわめて似た仕組みで航行しているとのことです。
公式サイトによると、このスタイルから“海の飛行機”とも称されるというジェットフォイル。実際に乗ってみたところ、その呼び名に違わぬ飛行機らしさが詰まっていました。
出港後にまさかの「テイクオフ」の文字出現
佐渡汽船が運用するジェットフォイル「ボーイング929」を用いて新潟と両津を結ぶ場合、時刻上は67分。カーフェリーでは2時間半のルートを、半分以下の時間で結びます。
座席は全席指定で1階前方が横2-5-2列、1階後方が横3-6-3列、2階席が横2-4-2列の構成を基本とします。シートもまるで往年の旅客機のようで、シートポケットには航空会社で用いられているような安全のしおりや旅の冊子、エチケット袋などが装備されています。
一方客席には、大きな窓があるほか、速度計と電光表示板が設置されているのが、旅客機とは少々違うところです。化粧室も公共交通機関らしい室内ですが、便座は地上の建物で見られるようなしっかりとしたもの。温水洗浄もついていました。
佐渡汽船「ジェットフォイル」の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
ジェットフォイルは出港時にエンジンスタートしますが、その音は非常に甲高い、まるでサイレンのような音が特徴です。往年のジェット旅客機にも若干似通っているかもしれません。
そしてこの船は出港後、翼走の状態に入るまで加速を続けますが、電光表示板には、この過程を「テイクオフ」と表現します。これは、飛行機の”離陸”と同じ言葉です。
とはいえ、加速度を全身に感じる航空機の「テイクオフ」と比較すると、ジェットフォイルのそれはごく滑らかなもの。30kmから4〜5分かけてジワジワと60km以上に速度をあげるイメージでした。
電波状況まで飛行機っぽい?
この日、翼走中のジェットフォイルは、良好な天候もあって大きな揺れはありません。速度も、フルスピードの80km/hではなく、70km/hに満たないくらいの速さで航行していきます。
船内はWi-Fiは利用可能である一方、四方を海で囲まれたエリアに行くと、スマートフォンのモバイル通信が切れます。おそらく、旅客機に乗っているときに上空で起こるであろうこの現象まで、ジェットフォイルで体験できました。ちなみに、ジェットフォイルでは「携帯を機内モードにする」必要はありません。
佐渡汽船「ジェットフォイル」の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
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このように旅客機っぽさが多く見られた「ボーイング929」、運用開始から年数が経過していることもあり、置き換えが行われるという見立てが優勢です。
佐渡汽船では、新造の船を投入し、「ボーイング929」の後継機として導入する計画があるとのこと。新造船では「ボーイング929」を上回るスピードが掲げられていますが、おそらく旅客機らしさは今より薄れてしまうかもしれません。