旅行需要は戻るか 4年ぶり開催のツーリズムEXPOに各業界が“賭けた”ワケ しかし温度差も
旅行の祭典「ツーリズムEXPO」が開催されました。新型コロナの影響を脱しつつあるなか、これからの旅行需要の高まりを反映するかのように各方面から期待された展示会は、新機軸も多く盛り込まれました。
コロナ禍の鬱憤を晴らす展示会に
ここ数年間に渡り世界経済と日常生活に大きく影響を与えてきた「新型コロナ感染」。欧米諸国ではマスク着用や旅行制限の緩和が進む2022年後半、やっと日本政府も重い腰を挙げざるを得ない状況となり、9月には外国人旅行者や日本人帰国者のいわゆる水際制限緩和が発表されたほか、10月11日からは政府による全国旅行割がはじまるなど、国内外における旅行や移動制限が解消の方向にあります。
ツーリズムEXPO会場の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
そのなか観光・旅行分野の展示会となる「ツーリズムEXPOジャパン2022」が9月22日(木)から25日(日)まで、東京ビックサイトで開催されました。うち24日(土)と25日(日)が一般公開日で、4日間の入場者総数は前回の2018年を大きく上回る12万2000万人を記録。3年余りの旅行制限の鬱憤を覆す結果となりました。
この展示会は、国内旅行分野(公益社団法人 日本観光振興協会)、海外旅行分野(一般社団法人 日本旅行業協会〈JATA〉)、訪日旅行者受け入れ分野(日本政府観光局〈JNTO〉)、で構成されます。
出展スタイルは都道府県単位から、地域の市町村単位も積極アピールに
展示会はコロナ禍で大打撃を受けた旅行会社やホテルや旅館などの宿泊業界だけでなく、国内外はじめ海外と結ぶ航空業界や鉄道、バス、クルーズ業界などからの出展も。加えて国内外の観光局や旅行業界。エアラインやクルーズ誘致を図る港湾都市などの地方自治体の出展が目立ちました。
なかでも瀬戸内海に面した港をもつ複数自治体では合同の客船誘致を展開する一方、徳島県からはバスと鉄道路線の両方を“一つの車両で結ぶ”、阿佐海岸鉄道のDMV(デュアルモードビークル)を紹介する展示も。従来の都道府県単位による紹介から、個別の市町村単位、さらには地域の歴史や伝統に関係する得意分野の団体などによる出展など、従来にない観光素材や多様な旅の提案がみられました。
体験型展示も仕込んだエアライン業界 鉄道業界は様子見?
他方、鉄道各社の展示では、鉄道開業150年の発祥地をもつJR東日本や、9月23日に開通した西九州新幹線についてJR九州などがパネル展示としているなど、各社の台所事情や久々の展示会に対する様子見の印象を受けました。
それに対して元気なのが、国内外線の運航が次第に回復しつつある航空会社の展示ブース。ANA(全日空)では、TVアニメ「鬼滅の刃」とコラボしたデザイン機や機内サービス、ハワイ路線の主力機種であるエアバスA380「フライング・ホヌ」の紹介だけでなく、スマートフォンを活用した新しい搭乗手続きの疑似体験もできるようになっていました。
片やJAL(日本航空)はボーイング787やエアバスA350に搭載している実物のシートを展示し着座体験をPRするとともに、同社が以前から展開する日本各地との連携を通じたふるさと事業などを紹介しています。
JR東日本ブース(乗りものニュース編集部撮影)。
海外旅行の復活に期待を寄せる各国政府観光局
国際交流の一翼を担うのが、各国と地域の「観光局」です。より多くの外国人旅行者の自国訪問と国内移動や体験、滞在や食事、お土産購入機会を促進するアピールをしていました。
そのなか目を引いたのが日本と季節が反対のオーストラリア政府観光局です。観光局では世界初となるオーディオ・エフェクト技術を駆使した動画「8Dエスケープ」による展示を実施。自然豊かな現地映像を紹介するものです。
他方、海外リゾートの代名詞ともいえるハワイ州観光局は「マラワハワイ・地球にやさしい旅」を提言。ハワイの自然保全や文化継承をアピールし、これまで定番とされてきたワイキキビーチから自然豊かなオアフ島や他の島などに着目し、新たなハワイ体験を提言しました。
勃興する「ドライブ・ツーリズム」
コロナ禍による旅行制限では“密を避ける”意味で、マイカーやレンタカーでの旅行形態も復活したほか、オートキャンプ場の普及などもあり、キャンピングカーによる旅も一般化しています。年々多様化するキャンピングカーの種類もバン型はじめ、トラックキャンパーやマイクロバスを改造したモデルなど多岐に渡っていますが、その一方設備や装備も増える関係で日常的な乗用車とは異なるので、走行面や取り扱いに配慮が求められる意味から、キャンピングカーの正しい利用法をPRすべく一般社団法人日本RV協会も出展していました。
他方、全国的にネットワークが普及する高速道路の自動車旅を提案すべく、NEXCO3社(東日本、中日本、西日本)は合同の展示ブースを設け、ETCドライブプランや安全啓発、設備が充実するサービスエリアの利用を通じた事故防止のPRなどを行いました。
日本RV協会のブース。キャンピングカーの実車展示も(乗りものニュース編集部撮影)。
旅行業界の交流も活発に
にぎやかな展示会場にあって少し風景が異なるのが、日本政府観光局(JNTO)の「VISIT JAPANトラベル&MICEマート2022」(9月22〜24日)です。訪日旅行者(インバウント)のための国内側“セールス”と、海外の旅行会社“バイヤー”との商談会です。
商談会の参加者は日本国内のセラー側が626名と、海外のバイヤー側が28の国と地域の554名で、そのうち50名は来日バイヤーです。リアルとオンラインの活発な商談会が行われました。JNTOは主要諸国を中心に現地事務所を設けて活動がしており、訪日旅行者促進の最前線を担っています。
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前出の通り10月からは国による全国旅行支援も始まるなど、本格的な旅行シーズンを迎えます。まだまだコロナ禍は続くものの、“ウィズコロナ”のなかで、旅行者はじめ、旅行・観光業界ともども感染防止に努めることが求められます。ビジネスや勤務環境も変化しているので、密を避ける意味でも分散旅行、余裕のあるスケジュールでゆったりと旅をしたいものです。