「卵巣腫瘍」は「ウエストがきつい・便秘」といった症状が現れるの?医師が監修!

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卵巣腫瘍とは、卵巣にできる腫瘍です。良性悪性、良性と悪性の中間である境界悪性があります。初期症状は無症状の場合が多いですが、悪性の場合は全身に転移する可能性があるので、早急な受診と治療が重要です。

今回は卵巣腫瘍の概要や症状、検査や分類、治療方法などについて解説します。

卵巣腫瘍とは?

卵巣腫瘍とは、どのような疾患ですか?

卵巣は通常2~3cmの大きさで、左右に1つずつあります。この卵巣に発生した腫瘍が卵巣腫瘍です。卵巣腫瘍はさまざまな種類があり、発生起源によって表層上皮性・間質性、胚細胞、性索間質性などに分類されます。

そして、それぞれの腫瘍に良性・境界悪性・悪性があります。境界悪性は悪性と良性の中間的な腫瘍です。

腫瘍は大きくなると30cm以上になることがあります。

卵巣腫瘍の症状

卵巣腫瘍の症状を教えてください。

卵巣腫瘍が小さいうちは、多くの場合で無症状です。
月経も順調で妊娠にもあまり影響がないなど、日常生活に影響がでることはあまりありません。この場合、子宮がん検診などの検査で無症状のまま発見されることもあります。

腫瘍が大きくなったり腹水が溜まったりすると、腹部膨満感というお腹が張って苦しい感覚、ウエストがきつくなる、頻尿や下腹部痛、便秘や食欲不振、下腹部のしこり、脚のむくみなどの症状が現れます。これらの症状が現れてから受診して、腫瘍が見つかることも多いのです。

さらに腫瘍が進行すると、腫瘍がねじれる茎捻転や腫瘍が破裂して、急に強い腹痛が現れることもあります。

卵巣腫瘍の受診科目

卵巣腫瘍が疑われる場合、何科を受診すればいいでしょうか?

婦人科を受診しましょう。
悪性の可能性もあるので、できるだけ早期に発見して治療をすることが重要です。

卵巣腫瘍の検査

卵巣腫瘍が疑われる場合、どのような検査を行いますか?

まず問診で症状などを確認して、続いて触診や内診が行われます。この段階で診察するのは、卵巣の大きさや癒着の有無などです。さらに超音波検査を行うことで卵巣腫瘍の有無を確認します。この段階で良性か悪性か、境界性悪性か、ある程度予測がたちます。

腫瘍が嚢胞性と呼ばれる袋状の場合、多くは良性です。
一方で、充実性と呼ばれるかたまりだったり、充実性部分と嚢胞性部分が混在していたりする場合は、悪性か境界性悪性が疑われます。

さらに検査が必要と判断されれば、CT検査やMRI検査、腫瘍マーカーを測定します。これらの検査で診断するのは、腫瘍内部の性状やリンパ節腫大の有無、病気の広がりなどです。

この時点で医師は良性か悪性か境界性悪性かを診断しますが、確定させるには手術で腫瘍を摘出して、顕微鏡で確認する病理検査を行う必要があります。

なお、卵巣腫瘍の約90%は良性で、約10%が悪性です。

卵巣腫瘍の分類

卵巣腫瘍の分類について教えてください。

卵巣腫瘍が悪性だった場合、卵巣腫瘍の病期は大きく4段階に分けられます。

1期は卵巣あるいは卵管内限局発育と呼ばれ、悪性腫瘍が卵巣内にとどまっている状態です。
2期は悪性腫瘍が、卵管や子宮、直腸など、骨盤内に広がっている状態です。
3期になると悪性腫瘍が骨盤の外にある小腸や上腹部の腹膜、後腹膜リンパ節などに転移します。
4期は肺や肝臓などの臓器にまで、悪性腫瘍が転移している状態です。

これらの分類は卵巣がんの手術進行期分類と呼ばれ、各期の中でさらに細かく分類されます。例えば1期の中にも1A期や1B期などがあり、4分類の中に合計で15ほどの分類があります。

卵巣腫瘍の治療法

卵巣腫瘍の治療法を教えてください。

卵巣腫瘍が見つかった場合、原則として手術を行います。治療のやり方は、良性や悪性、境界悪性などによって異なります。

良性腫瘍の治療

良性腫瘍の場合は、どのように治療を行いますか?

良性腫瘍の場合は腫瘍のみを摘出して、卵巣を残す方法が一般的です。特に妊娠を望んでいる場合は、卵巣を残す選択肢をとる場合が多いです。

一方で、腫瘍が大きい場合や充実性部分がある場合は、付属器摘出術という卵巣と卵管を取り出す方法を行います。また、卵巣は2つあるため、片方の卵巣を摘出しても妊娠は可能です。

境界悪性腫瘍の治療

境界悪性腫瘍の場合は、どのように治療を行いますか?

境界性悪性腫瘍の場合は、病期によって治療法が分かれます。

1期の場合は、両側の卵巣や卵管、子宮の摘出、大腸と胃の間の膜である大網を切除する手術を行うことが多いです。これが基本術式になります。1期と確定されたあとは、手術後の化学療法は不要です。

妊娠を希望する場合、手術前のMRIなどの画像検査で腹腔内に異常が見られず、さらに手術で開腹しても異常が見られない場合のみ、腫瘍側の卵管と卵巣の摘出と大網を切除します。子宮と片方の卵巣と卵管を残すことで、妊娠が可能です。

しかし、再発する可能性が少し高くなるので妊娠の希望がなければ、先ほど解説した基本術式を検討します。

病期が2~4期と診断された場合には基本術式に加えて、腫瘍減量術を行います。腹腔内の腹膜に病気が広がっていると疑われる場合は、その部位を摘出して病理検査が必要です。また、腹膜まで病気が広がっていた場合や骨盤の外にまで病気が広がっている場合は、悪性腫瘍と同様の化学療法を行うことを検討します。

病期が2~4期でも妊娠を希望する場合は、子宮と片方の卵管・卵巣を残さなければならないため、基本術式を行わない治療をしなければなりません。しかし、基本術式を行わなかった場合、リスクは高まります。医師としっかりと相談をしてから治療方針を決めましょう。

なお、境界性悪性腫瘍の治療成績は多くの場合良好ですが、稀に転移や再発することもあります。

悪性腫瘍の治療

悪性腫瘍の治療方法を教えてください。

卵巣の悪性腫瘍の90%以上は表層上皮性や間質性です。大腸がんや胃がんなどから転移してくることもあります。

悪性腫瘍の場合は、手術と化学療法が基本です。手術では基本術式を行い、病気の進行具合に応じてリンパ節の摘出、腸管や腹膜の切除、などが行われます。腫瘍を可能な限り摘出して、できるだけ残さないことが原則です。

手術後は抗がん剤を用いた化学療法を行って、腫瘍細胞の完全消滅を狙います。上皮性の場合は、タキサン製剤とプラチナ製剤を用いることが一般的です。手術後にこれらの抗がん剤で化学療法を行った場合の5年生存率は、1期が約90%、2期が約70%、3と4期で約30%です。

1回目の手術で腫瘍の1部しか摘出できなくても、病理検査後に有効な抗がん剤を見極めて、化学療法で効果を狙うこともあります。その後に二次的腫瘍摘出術を行う場合もあります。

どちらにせよ病期が進行する前に、できるだけ早く治療を開始することが重要です。

卵巣腫瘍の転移・再発

卵巣腫瘍の転移と再発について教えてください。

がん細胞が血液やリンパ液によって、別の臓器に移動して成長することを転移といいます。また、治療によって小さくなったり見えなくなったりした腫瘍が、再び出現することを再発といいます。

転移や再発のリスクが高いのは悪性腫瘍で、良性腫瘍が転移や再発するリスクはかなり低いです。

卵巣の悪性腫瘍は、肺や肝臓、脳や骨、後腹膜リンパ節などに転移するリスクがあります。転移や再発した場合は、化学療法や放射線治療などが選択肢です。医師としっかり相談をして決めましょう。

編集部まとめ

卵巣腫瘍とは卵巣にできる腫瘍で、良性・悪性・境界性悪性などがあります。小さいうちは多くの場合が無症状ですが、進行すると腹部膨満感や下腹部痛、頻尿や便秘、食欲不振などの症状が現れます。

最初に行われる検査は問診や触診、内診です。その後、超音波検査やCT検査、MRI検査、腫瘍マーカーの測定なども行われます。確定診断には手術で摘出した腫瘍の病理検査が必要です。

良性の場合は腫瘍のみを摘出して卵巣を残す治療法が一般的です。境界悪性腫瘍は、両側の卵巣や卵管、子宮の摘出、大網を切除する基本術式が行われる場合が多いです。

悪性の場合は、手術と抗がん剤による化学療法が行われます。

疑われる場合は早急に婦人科を受診してください。卵巣腫瘍の約90%は良性ですが、約10%は悪性なため、早期の治療開始が重要です。

参考文献

「卵巣腫瘍」日本産科婦人科学会

「卵巣腫瘍」日本婦人科腫瘍学会

「卵巣がん・卵管がんについて」がん情報サービス

「卵巣がん・卵管がん 検査」がん情報サービス

「卵巣がん・卵管がん 治療」がん情報サービス