森保ジャパン「カタールW杯メンバー26人」を予想【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

写真拡大

【識者コラム】サプライズは考えにくいカタールW杯行きの26人

 森保一監督は、その実サプライズ好きな監督かもしれない。

 カタール・ワールドカップ(W杯)メンバー入りのテストとなったE-1選手権の日本代表、森保一監督は発表の1週間前に「すみません、サプライズはないかな。それ(サプライズ)はないと思います」と語っていたのに、いざ蓋を開けてみると初招集の選手が11人も含まれていたのだから。

 ただし、W杯に向けてはもうサプライズはないだろう。なぜそう言えるのか、まずは今年の招集データを見る。

 まず、一番大切だったW杯出場を決めた試合、今年3月のアウェー・オーストラリア戦に向けて招集したメンバーは27人だった。

【GK】(4人)
川島永嗣、権田修一、シュミット・ダニエル、谷晃生

【DF】(9人)
長友佑都、吉田麻也、佐々木翔、酒井宏樹、谷口彰悟、山根視来、植田直通、板倉滉、中山雄太

【MF/FW】(14人)
大迫勇也、原口元気、柴崎岳、遠藤航、伊東純也、浅野拓磨、南野拓実、守田英正、三笘薫、前田大然、旗手怜央、上田綺世、田中碧、久保建英

 これだけでも、もう登録人数をオーバーしている。では、今年の招集選手を時系列で追っていく。1月に行われた国内組だけの合宿に呼ばれた選手は、上のメンバーに入っていない選手が13人いた。

【DF】(3人)
中谷進之介、瀬古歩夢、西尾隆矢

【MF/FW】(10人)
稲垣祥、江坂任、武藤嘉紀、脇坂泰斗、相馬勇紀、小柏剛、渡辺皓太、荒木遼太郎、松岡大起、鈴木唯人

 6月の4試合に向けては、さらに7人が加わる。GK大迫敬介以外はすべて海外組だった。

【GK】(1人)
大迫敬介

【DF】(3人)
冨安健洋、伊藤洋輝、菅原由勢

【MF/FW】(3人)
古橋亨梧、鎌田大地、堂安律

 さらに今回のE-1選手権では18人の選択肢が増えた。

【GK】(1人)
鈴木彩艶

【DF】(5人)
畠中槙之輔、小池龍太、荒木隼人、大南拓磨、杉岡大暉

【MF/FW】(12人)
水沼宏太、宮市亮、橋本拳人、野津田岳人、西村拓真、岩田智輝、森島司、満田誠、町野修斗、細谷真大、藤田譲瑠チマ、岩崎悠人

 つまり、今年に入って招集された人数だけでも、GK6人、DF19人、MF/FW39人の合計64人。カタールW杯は予備登録できる人数が前回大会の35人から大幅に増えて55人までになっているが、それでも余る。

 となると、怪我や不調で選手を入れ替えるにしても、今年招集された選手の中からが当然だろう。では、そうやって入る選手は「サプライズ」と言えるだろうか、という問題が出てくる。

 そのため、本稿では「サプライズ」ではなく、すぐにでも入れ替えられる「ボーダー上」だと考えている。

 そしてリストを作って見ていると……ぼ、凡庸すぎる!! 64人の中から選んだとは思えないくらい、読者の方にとっても「こりゃ当然だよね」と言いたくなるくらいのメンバーになってしまった!!

最終予選メンバーが必然的にメンバー入りか

【GK/3人】
権田修一(清水エスパルス/33歳)
川島永嗣(ストラスブール/39歳)
谷 晃生(湘南ベルマーレ/21歳)

▼サプライズ候補
シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/30歳)
大迫敬介(サンフレッチェ広島/23歳)

 正GKは、これまで信頼して使われてきた権田修一から変える必要はない。そして権田に万が一のことがあった時、急に回ってきたピンチに対応できるのは、経験豊かな川島永嗣であることも間違いない。

 問題は第3GKだ。6月の4試合のうち、パラグアイ戦、チュニジア戦の2試合に先発したシュミット・ダニエルへの監督の期待は大きかったはず。ところがパラグアイ戦で1失点、チュニジア戦では3失点と、いずれもシュミットに大きな責任がある点ではなかったものの、ポジションを確保したとまでは言えない結果になった。

 一方で、谷晃生はE-1選手権で最も強敵とされた韓国戦を任せられるなど、招集された3人の中で一番信頼が厚かった。実際、攻められる場面は多くなかったものの、決定的なピンチも1回防いで勝利に導いており、印象はいいはずだ。また、普通なら第3GKに出番が回ってくることは少なく、そう考えると大会の雰囲気などを経験させるためにも、若い谷を選ぶのではないかと考えられる。

 もっとも、2010年南アフリカW杯は、大会直前で調子を上げた川島永嗣が正GKとして大会に臨んでいる。これからの活躍次第では序列が入れ代わる可能性も十分に残っている。

【DF/8人】
酒井宏樹(浦和レッズ/32歳)
吉田麻也(シャルケ/33歳)
冨安健洋(アーセナル/23歳)
長友佑都(FC東京/35歳)
山根視来(川崎フロンターレ/28歳)
板倉 滉(ボルシアMG/25歳)
谷口彰悟(川崎フロンターレ/31歳)
中山雄太(ハダースフィールド/25歳)

▼サプライズ候補
伊藤洋輝(シュツットガルト/23歳)
畠中槙之輔(横浜F・マリノス/26歳)
中谷進之介(名古屋グランパス/26歳)

 岡田武史監督、西野朗監督が4バックを採用しているのを見て、森保監督は日本代表チームでも4バックをベースにすることを決めた。そのため、今回も4バックでそれぞれのポジションに2人ずつ選んでいる。すると、成熟度が高いW杯アジア最終予選の時のメンバーが必然的にそのまま選ばれることになるだろう。

 問題は左サイドをどう考えるか。最終予選で、左アウトサイドに南野拓実を配置した時の考え方はこうだった。

 右サイドで崩して、左サイドから中央に侵入してきた選手がゴールを奪う。そして、左サイドの選手が中央に入ることで空いているところを左サイドバック(SB)が埋める。左SBが出て行った穴はボランチ1枚とセンターバック(CB)のコンビで埋める。

 アルベルト・ザッケローニ監督時代には左サイドの香川真司と長友佑都で崩し、右の岡崎慎司がゴールを挙げるというのがパターンとしてでき上がっていた。現在は左右を逆にして同じ考えをしているが、選手の違いもあり奏功しているとは言いがたい。

 ただし、今回の対戦相手を考えると守備に追われる時間が圧倒的に増えそうなため、守備、特にコンビネーションを考えて選出するのではないか。6月の試合で活躍した伊藤洋輝だが、CBとしてプレーしたパラグアイ戦の後半は連係ミスからピンチを招いた。そのためレギュラー確定とまではいかないこと、選手枠が3人増えた部分をすべて攻撃のオプションに使うだろうと予測している。

 1月、E-1選手権と招集されていた中谷進之介だが、E-1選手権の出場時間を見ると、現時点では畠中槙之輔のほうが序列は上と見られているようだ。

群雄割拠のMF/FW部門、入れ替わりのメンバー入りを狙うのは?

【MF/FW】
遠藤 航(シュツットガルト/29歳)
守田英正(スポルティングCP/27歳)
田中 碧(デュッセルドルフ/23歳)
橋本拳人(ウエスカ/28歳)
原口元気(ウニオン・ベルリン/31歳)
鎌田大地(フランクフルト/26歳)
伊東純也(スタッド・ランス/29歳)
大迫勇也(ヴィッセル神戸/32歳)
南野拓実(ASモナコ/27歳)
堂安 律(フライブルク/24歳)
古橋亨梧(セルティック/27歳)
三笘 薫(ブライトン/25歳)
浅野拓磨(ボーフム/27歳)
上田綺世(サークル・ブルージュ/23歳)
久保建英(レアル・ソシエダ/21歳)

▼サプライズ候補
柴崎 岳(レガネス/30歳)
前田大然(セルティック/24歳)
相馬勇紀(名古屋グランパス/25歳)
町野修斗(湘南ベルマーレ/22歳)
藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス/20歳)

 群雄割拠のMF/FWには、各ポジションに2人+3人のバリエーションを考えている。

 もはやレギュラーと言っても過言ではない遠藤航、守田英正、田中碧の中盤は、そのバックアップとして、守備力が目立った橋本拳人、勝負所で投入できる、インサイドハーフとしての働きが目立つ原口元気、鎌田大地を入れた。

 また、3トップは伊東純也、大迫勇也、南野拓実がファーストチョイス。伊東の縦の突破に相手が対応してきたら、左利きで中に入っていける堂安律、大迫に代わって裏に飛び出す古橋亨梧、左サイドは切り札となる三笘薫というバックアップだ。

 さらにバリエーションとして浅野拓磨、上田綾世、久保建英の3人を加えて合計26人とした。ただし、柴崎岳、前田大然はいつ入れ代わってもおかしくない。

 E-1選手権で活躍した相馬勇紀も当然森保監督の視界に入っているだろうし、東京五輪の時に林大地が入ったように、森保監督が前線で身体を張れる選手を欲した場合は、町野修斗にもチャンスが広がるはずだ。藤田譲瑠チマは若いが故に期待を集めている部分も大きいが、今後の中心選手として経験を積ませてもいいのではないかと思う。

「もしこんなドラマが見られたら最高」なのは?

 今回のこの予想は、あまりにも妥当すぎる。これまでの日本代表の試合を見てきた人なら、多少の違いはあっても当然このメンバー選考に行き着いているだろう。

 たぶん国民の8割が「ボランチは遠藤航だよね」だと言っているだろうし、9割が「右は伊東純也でしょ」と語っているのは間違いない--ことはない。

 なぜなら、W杯前なのにまだ盛り上がりが小さいからだ。W杯は日頃サッカーを見ない層にもサッカーの楽しさを伝えられるはずなのに、「どうせ分かり切ったメンバーで行って、強豪相手に負けちゃうんでしょ」みたいな空気感も生まれていない。

 そうであるなら、やはりこのメンバー選考でサプライズが必要ではないか。過去のW杯でも「たぶん試合には出ないだろう」けれども、チームを精神的に支える選手がメンバーに入ってきた。有名なところでは2002年日韓W杯の時の中山雅史や秋田豊、2006年ドイツW杯は負傷が癒えていない川口能活が入っている。

 つまり23人でギリギリに見えているかもしれないが、それでも1、2人は余裕がある。まして今回は26人登録できる。ということは、4人ぐらいは話題になりそうな選手を選んでもいいのではないだろうか、ということになる。

 では、戦力や精神的支柱になりそうな選手は? 先に言っておくが、名前を挙げる選手を決して茶化しているわけではない。もしこんなドラマが見られたら最高だと思っているのだ。

 まずGKでは西川周作(浦和レッズ)を入れる。すると、GKに惨敗した2014年ブラジルW杯のメンバーが揃う。これで勝てば8年前の悪夢を払拭したということにならないだろうか。

 MF/FWには動けなくてもいいから宮市亮(横浜F・マリノス)。この苦労人を栄光の舞台に連れてってあげてください。あと、前回メンバー発表の日に怪我で外されることになった小林悠(川崎フロンターレ)もお願いしたい。

 そして最後は、いつでも必ず話題になる三浦知良(鈴鹿ポイントゲッターズ)。カズの悲願が、ドーハの悲劇の時のチームメイトの手で叶った、というストーリーは世界中でサプライズになる。

 森保監督は生真面目だから、きっとそんなサプライズはないだろう。もちろん、サプライズなんかなくていい。森保監督にはただひたすらW杯で勝つためのメンバーを選んでほしい。そして森保監督が選ぶと、今回の選考どおりになりそうな気がとてもしている。あぁ、これがtotoだったら……。(森雅史 / Masafumi Mori)