サラリーマンが放送作家で副収入!? パソコン一台でできる副業のススメ - 放送作家の徹夜は2日まで
※この記事は2020年09月11日にBLOGOSで公開されたものです
放送作家の松本建一です! 僕は放送作家を始めて約10年が経とうとしていますが、ここ1年ほどで放送作家を副業の1つとして選ぶ人が増えているように感じます。実際、他の仕事をしながら、「放送作家もやってみようかな」と、副業としての放送作家に興味がある人に出会う機会も増えました。僕がこの仕事を始めた10年前には考えられないことで、時代を反映している出来事だと思います。そこで今回は、副業として放送作家を選択する人が増えている理由と具体的に放送作家になるための方法をご紹介します。
そもそも、放送作家という仕事に明確な定義はありません。「放送作家はこれをしないといけない」というルールもないのです。例えば、ある番組では台本を書くことがメインの仕事でも、他の番組では企画のアイデアを出すだけということもよくあります。一方、ディレクターと一緒にVTRを構成するパターンもあったりします。
放送作家の仕事はテレビ番組の構成だけではありません。例えば、雑誌にコラムを執筆したり、ゲーム制作会社でストーリーを考えたりと様々。警察官が交通安全の大切さを子どもたちに教えるための台本を書く人もいます。
よく言えば自由ですが、オファーをもらえばどんなことでもやる雑食な職業とも言えるでしょう。近年でいうと、インターネットメディアの爆発的な増加によってYouTubeをプロデュースしたり、企業が自社ホームページにアップする動画制作をお手伝いしたりと、多様化はますます広がっています。
放送作家の中には「そんな仕事のやり方は邪道だ! 職人のように、1つのことに専念すべきだ!」という考えの人が一定数いることも事実ですが、新型コロナウイルスの影響で放送業界の景気も悪化、番組制作費の大幅削減は避けられないと言われる中、番組制作以外で稼げる能力を身に着けておきたいと考えるのは自然な流れでしょう。
営業マンも会社社長も、副業で放送作家に!?
番組制作という枠組みの中でも仕事内容は多岐にわたる放送作家ですが、その一方で、「誰でも放送作家を名乗っていい」という事実も存在します。資格や研修が必要なわけでもないので、会社員や公務員であっても名刺の肩書に“放送作家”を付ければその日からアナタは放送作家です。
こんなことを言うと「それは屁理屈であって、そんな副業ができるわけない」と思う人もいるかもしれませんが、実際にサラリーマンをしながら副業で放送作家になろうとしている人が、まだ少数ではあるものの実在します。
有吉弘行さん、劇団ひとりさんらが所属する太田プロダクションという芸能事務所で、僕は放送作家スクールの講師をしています。ここには年齢や経歴もバラバラな生徒さんたちが集まりますが、去年までは「スクールを卒業したら放送作家一本で勝負しよう」と言う人が多くいました。
しかし、今年は様子が違うのです。授業は土曜日に開催していますが、他の仕事をしながら放送作家を目指すという人を多く目にするようになりました。受講生の大半がそうだといっても過言ではないでしょう。営業の仕事をしているサラリーマンや、建築会社の社長なども参加してします。しかもこの社長は青森県在住。授業は東京で開催しているため、青森県からリモート参加しています。そこまでして放送作家スクールを受講しているのは、建築業界にエンタメ要素の強いイベントや企画を提案したいと考えたためだといいます。余談ですが、社員のみなさんには秘密で受講されています。
他にも、会社員でありながらYouTubeの編集をしつつ、放送作家としてテレビ業界への進出を考えている生徒もいます。そうした少し変わった経歴を持つ生徒に対して、企画の考え方や企画書の書き方などを教えているのです。
この動きの裏には、働き方改革によって会社員の労働時間が縮小されたことがあるのではないでしょうか。働く意欲はあるのに会社のルールで働けないため、給料が下がる。こうした社会の動きを受けて、副業に寛容な企業が増えています。
今後のテレビ業界では、普段は会社員として働きながら、アフター5や休日を利用して放送作家の仕事をする人が出てくるのではないかと感じます。現時点で、副業放送作家はごくわずかですが、やり方次第では十分に成立するでしょう。
副業でもやれる放送作家の仕事3選
具体的に、副業として成立する放送作家の仕事をいくつかご紹介します。放送作家業界には、下積み時代に行う仕事があり、この仕事を突き詰めて出世する人もいるほど。その仕事なら特別なスキルがなくても時間さえあれば始めることができます。
1:企画書を書く
テレビ業界では「企画書を書く」という仕事への需要が多くあります。テレビマンが「こんな番組がやりたい!」とテレビ局に提案する時や、出演してほしい芸能人にオファーする時に欠かせません。
そんな企画書の作成は、放送作家が下積み時代に担当することが多くあります。時々、企画書の作成が信じられないほど速く、クオリティの高い作家もいます。
これは都市伝説ですが、とあるテレビ局で集めた大量の企画書のうち、30%を1人の放送作家が書いていた…なんてこともあったと聞きます。そこまで速く書けなくても、慣れれば2~3時間で1つの企画書をまとめることができます。初心者でも1日あれば作成できるでしょう。
そして気になる報酬ですが、企画書を1つ作成すると、平均で数千円から1万円ほどもらえます。“平均で”としたのは理由があり、企画書作りは必ず報酬が発生するわけではありません。「企画が実現して番組化した時、スタッフとなり制作費からギャラを払う」というパターンが多いため、企画が通らなければ報酬がもらえないことはザラ。稀に企画が通らなくても報酬がもらえることもあるため、事前に依頼主に確認することをオススメします。
2:リサーチをする
昨今のテレビ業界では、生活に使える身近な情報が全く入らない純粋なバラエティ番組は、かなり少なくなりました。大食い企画では実在する店舗が舞台となり、検証系の企画では視聴者が実践できるテーマが採用されるなど、常に情報性が求められています。
そんな、番組を制作するにあたって必要となる様々な情報を集めるのがリサーチという仕事。インターネットが普及していない時代には、専門家に電話をかけて取材をしたり、実際に現場に行って聞き込みをして情報を集めていました。
しかし現在では、インターネット検索を駆使したリサーチがほとんど。検索のテクニックは確かに存在しますが、時間をかけて根気よく探せば良い情報にたどり着けるでしょう。
番組制作の現場では指定されたお題について、週1回程のペースで資料を提出。突発的に発注がくることも珍しくありません。このようなリサーチの仕事では、1週間に資料を数回提出して数千円から数万円の報酬をもらえます。
3:ネタ出し
ネタ出しは、番組企画案やコーナー案を考えて提出することです。中には「出演者の面白い一言案」や「面白いナレーション案」という発注もあります。
この仕事に求められるのはセンスです。企画書やリサーチと違い、時間をかければいいものを提出できるわけではありません。しかし、センスがあれば、1分で価値を生み出せる可能性も秘める作業です。もし、テレビを見ていて「自分の方が面白いことを考えられる!」と感じたなら、ネタ出しのセンスがあるのかもしれません。
結局、最後に物を言うのはセンスですが、ネタを考える上で参考になるノウハウは存在しています。ノウハウを学んでセンスを磨けば、日本中を驚かせたり笑わせたりできる企画を生み出せるでしょう。
ここで挙げた3つの仕事は、直接会議に出なくても成立するものです。もし仕事ぶりが認められたら、「会議に出てほしい」と声がかかる可能性もあります。現在、放送業界も新型コロナウイルスの影響を受けて、リモート会議が主流です。つまり会議に声をかけてもらえれば、副業としての道がさらに開けます。もちろんスケジュールの調整は必要ですが。
ちなみに、自分の名前が番組の最後に流れるエンドロールに初めて載った瞬間の喜びは、何にも代えがたいものがあります。田舎に住む両親が喜んでくれるのも嬉しいポイントです。
でも、どうやってなればいいの?
放送作家の仕事の中で副業としてできることをお話してきましたが、そもそも放送作家は「業界に入ることが一番難しい」と言われるくらい『なり方』が曖昧な仕事でした。しかし今は様々な芸能事務所や団体がスクールを開講しています。そこで基本的なノウハウを学び、講師の方に相談して、どこかの現場を紹介してもらうのが最も良い方法だと思います。
あまりオススメしませんが、「スクールに通うお金がない」という方には、番組宛てに自分で考えた企画案やリサーチ資料を送るという手もあります。ほとんど報われることはないですが、ごく稀にこの方法でスタッフから声をかけられる人がいます。
副業としての放送作家。興味のある方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
松本建一
放送作家
担当番組/「それって!?実際どうなの課」「ポケモンの家あつまる?」「全国高校サッカー選手権」など。