熱血・森田健作知事、千葉県の介護人材確保でベトナムへ! - 渡邉裕二
※この記事は2018年11月27日にBLOGOSで公開されたものです
外国人労働者受け入れを拡大する「出入国管理法」などの改正案審議が衆議院で可決した。しかし、法令違反が相次ぐ技能実習制度など現在の外国人を取り巻く状況への批判は根強い。そういった中で「いつまでも国に頼ってばかりではいられない」と千葉県の森田健作知事は「外国人労働人材」の確保に向けて、ベトナム・ホーチミンを訪問した。
介護分野での外国人労働者受け入れが急務
森田知事は「もちろん国会の動きは注視しています」とは言いつつ、一方で「結局、外国人労働者を受け入れるのは地方ですからね。そういった意味でいえば国の動きだけを見ている時間はないのです。地方としてもやるべきことはあるのだと思っています」。 千葉県が今、急務としているのが「介護分野」での人材確保だという。「正直言って、もはや待ったなしの現実なんですよ。それに本来、こういったことは、まず県の問題として捉えていかなくてはならないと私は思っているんです」。
そのようなことから「まず現地に行って人材育成の実情を知りたい」と、森田知事はホーチミンの日本企業向け人材育成施設「ESUHAI KAIZEN吉田スクール」に出向き、留学生の日本語教育など技能実習生の送出に向けての取り組みを視察した。
現在、千葉県には5万人を超える外国人労働者がいるが、その大多数がベトナムからの労働者だという。
「ベトナム人というのは真面目で勤勉、それに誠実な人が多いと評判です。そういったことから、ぜひ、ベトナムの人たちに来て頂きたいと思っているのです」(森田知事)。
同スクールには現在約3700人が在籍し、このうち1000人は、すでに技能実習生として日本企業から内定を受けていて、さらに、その予備軍として1000人が控えているそうだ。残りの1700人は現在、大学や高校の学生だという。
もっとも同スクールの教育プログラムは製造業や惣菜など食品加工の業種を専門としており、介護分野のプログラムはない。しかし、千葉県に限らず、多くの地域からの要望も高まっていることから、同スクールの代表兼校長のレ・ロンソン氏は「介護分野の人材育成に関しても現在、国に申請しています。間もなく許可が下りると思う」と話していた。
ベトナムからの介護人材の受け入れを巡っては、既に横浜市がホーチミン市やダナン市などと、介護技能実習生らの学費や家賃などを一部補助することなどで連携していく「覚書」を締結している。
それだけに「千葉県も…」ということかもしれないが、森田知事は、独自の助成や支援策を構築し「千葉県で働いてもらえるよう魅力を高めていきたい」としていた。
介護サービスは製造業とは訳が違う
しかし、レ・ロンソン氏は介護に特化した教育プログラムに対しては慎重な態度も示している。「現実に送り出そうということになれば、その人が本当に介護サービスに向いているかどうか、我々としては慎重に確認していかなければならないと思っている。製造や加工の技能実習生とは全くタイプが違う。いくら人材確保の要望があっても、人間相手なので、日本で続けていこうとするならメンタルでのケアも重要になってくる。そこは賃金だけの問題ではない。誰でも送り出せばいいと言うことではない。常にセミナーや説明会を繰り返しながら、性格など見極めながら募集していかなければならないと思っている」。
確かにそうだろう。言葉の問題も当然だが、ベトナムと日本では生活や文化の違いもある。もちろん介護に必要な心構えも重要だ。単に賃金の問題ではない。
レ・ロンソン氏は、賃金や金銭的な支援に対しても「単にお金を渡せばいいということでもない。私としては、例えば教育段階から奨学金制度を設けてモチベーションを高めるようなことも重要だと思っている」とも語っていた。
森田知事は千葉県として、日本語学習費用などにも財政支援をしていくことを検討していくというが、少子高齢化社会と共に介護分野での人手不足は年々深刻さを増していく。
「もちろん独りよがりになってはいけないと思っています。あらゆる方面としっかりとすり合わせながら、迅速にやっていきたい」。
熱血・森田健作が、千葉県の介護不足問題で今後、どう突き進むのか?大いに見所である。