セックスレス増加はスマホが原因!? アプリで不倫の前にスキンシップを - BLOGOS編集部

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※この記事は2018年11月26日にBLOGOSで公開されたものです

夫婦の2組に1組がセックスレス状態――。日本家族計画協会が2016年に行った調査では、日本人夫婦のうち47.2%がセックスレスだということがわかりました。

理由は、「めんどくさい」「仕事で疲れている」「出産後なんとなく」など様々ですが、10年前(34.6%)に比べ約1割も増加し、調査を始めた2004年以降右肩上がりで増え続けています。

夫婦のセックスレスがいま、日本で増える背景には何か理由があるのでしょうか。専門家に話を聞きました。【取材:石川奈津美】

百貨店で異例のアダルトグッズショップがオープン

11月22日の「いい夫婦」の日にあわせ、JR大阪駅前の百貨店「大丸梅田店」の6階の婦人服売り場の一角に「夫婦愛」をテーマにしたポップアップストアがオープンしました。

このイベントを企画したのはアダルトグッズの製造販売会社の「TENGA」(東京都)。8月に開いた際には約2週間で1500人が来店する盛況ぶりで今回の再オープンが決まったといいます。

広報宣伝部の工藤まおりさんは「家族やカップル友達のお出かけスポットである百貨店で商品を目にすることで、家庭内で『こんなイベントが百貨店でやっていたんだよ』と性について話すきっかけになれたらなと思っています」と企画の意図を話します。

女性がセックスを「面倒くさい」と思う理由

日本家族計画協会2010~14年の調査では、セックスをしない理由として男性は「仕事で疲れて」が最も多い回答になっています。一方、女性では「面倒くさい」がトップを占めています。

男女のこの差はどうして生まれるのでしょうか?カップル間のコミュニケーションの専門家として活動を続けて10年になるOliviAさんにお話を伺いました。

――夫婦のセックスレスがこの10年で約1割も増えているのはなぜなのでしょうか?

ひとつには、スマホの普及にあると思います。

近日発表されたインターネットの意識調査では、20代の「世界から消えたら困るものランキング」は、「家族」や「友達」を「インターネット」が上回り、第1位となっていました。

家庭内でもスマホをそれぞれ見ていて、ひとりで楽しめる時間が充実してきましたし、友人や恋人を探すツールとして出会い系アプリが増えたこともあり、夫婦間のセックスレスに向き合わずに、趣味に没頭したり、家庭外でセックスパートナーを見つけて折り合いをつけようとする方もいらっしゃいます。

また、エロ動画など性的な快楽を解消するコンテンツが増えているので、ふたりでするよりも、自分の好きな妄想で性欲だけをひとりで発散することができるようになってきているのかなと思います。

それはある種の娯楽の多様化なので否定されるものではありませんが、悩む年代の若年化を感じています。

私がアドバイザーとして相談に乗り始めたのが約10年ほど前ですが、当時は雑誌でも中高年のセックスレスの特集が中心でした。「お子さんが育ったから第二の夫婦生活をどうしよう」という悩みですね。

一方で、最近は20代、30代と年齢が下がっています。私は結婚情報誌の「ゼクシィ」のアプリでお悩み相談のコラムを書いているのですが、すごく興味を持っていただいて多くの方に読んでいただいているみたいなんです。

つまり、結婚準備中の方が何らかの性のお悩みがあって読む方が多いらしいんですね。「結婚前とか後は子作りしたいのにセックスレスでどうやって誘っていいのかわからない」とか。

20代30代など、人間的には性欲が強いはずの年代が興味を失ってセックスレスというのは、10年前ではほとんど聞かなかったことなので、私もはじめは驚きました。

――調査では、セックスをしない理由として男性は「仕事で疲れている」という外的なことが他を圧倒しているのに対して、女性は「めんどくさい」という内面的な理由がトップになっています。この差はなぜ生まれるのでしょうか?

学校で性について学ぶ機会はほとんどありません。なので、私たちは「セックスの仕方」について意識して自ら動かない限り、どうしたらいいのか何もわからないわけです。

そうすると、ほとんどの男性はAVを参考にして、作られた映像の中で「女性の楽しませ方」を覚えます。

男性が見るAVは、基本男性のマスターベーション用です。そのため「どうしたら男性が興奮するか?」という視点で作られているんですね。

例えば、女性向けAVと男性向けのAVの決定的な違いは、コンドームを付けるシーンが入っているかどうかなんです。男性用は中出しをうたった物が多いですが、女性向けのAVにはコンドームを付けるシーンを意図的に入れている作品があります。

男性からは無駄なカットに見えるかもしれません。でも、女性としては「感染症でも避妊のリスクでも考えてくれている、私のことを考えてくれている」という行為そのものというよりも、心理的な安心につながるという意味があるんですね。こうした一例を取っても、男女でのセックスへの感覚は異なることが分かると思います。

男性がそれを鵜呑みにしてセックスをすると、女性は「彼に身体を貸している」という感覚になり満足度が低くなっていきます。そうすると徐々に女性側としては「しないほうがまし」となり「めんどくさいから拒否」という悪循環に陥っていってしまうのです。

海外のようなロマンティックラブでなくてもいい

――日本は海外と比較しても「セックスレス大国」といわれますが、その違いはどこから生まれるのでしょうか

家族観の違いがあると思いますね。ヨーロッパは夫婦のセックスレスが少ないといわれていますが、カップル文化がベースにあります。日本は、結婚して子供が産まれるとカップル(夫婦)ではなく、子供を中心においた家族になる傾向があります。

愛やパートナーシップを大事にする文化が基盤にあるので、日本のように「結婚したら家族になる」という家族重視の価値観とはやはり違うと思うんです。

春画(江戸時代に流行した性風俗を描いた絵画)では、子供と川の字で寝ながら夫婦がつながっているなど、日常生活の中に性が溶け込んでいます。私は、日本人の「和のエロス」とは、日常に根ざしているものなのではないかと思っています。

普段、「LOVEもみ」というスキンシップの講座を開いているのですが、そこでは夜のテクニックを教えるのではなく、普段の昼間のふれあいの大切さを伝えています。

まずは目と目を合わせて会話をすることから始まりますし、肩もみや耳掃除、腕枕など、セックスではなくても肌と肌が直接ふれあう時間が増えるようになると、最終的にセックスに導入しやすくなっていきます。

もちろん好みはありますが、海外のロマンティックラブではなく、一緒に布団の中で寝ているうちにムラムラしてきた、というような、日常生活のスキンシップの延長にある、「肌なじみが良い」興奮があってもいいなと思っていますし、その方が日本人に向いているのではないかなと思います。

みんな性生活に悩みや不安を持っている

――セックスレスの悩みは相手がいることなので、特に周囲には相談しづらいかもしれません

特に既婚の場合は、「夫のプライベートなことを言ってしまい面目がつぶれちゃうといけない」「ママ友には噂されたくない」という方が多いですね。でも、そうすると結局誰にも相談できず孤立していってしまいます。

そうすると、誰にもいえないからひとりで「セックスレス 解消法」などとネット上で調べて、実践することになりますが、効果がなくてどうしようとさらに落ち込むなど、悪循環に入っている人もいるんじゃないかなと思いますね。

以前、世界各国の男性をテーマに取材しているオランダのメディアから取材を受けたことがあります。オランダでは幼少期から性教育があり、友達とも家族とも性の話をオープンにするんだそうです。だから誰にも打ち明けられなくて抱え込むという環境がない。

なので、彼らからは「オランダで君のようにセックスカウンセリングをしても、相談相手はたくさんいるからニーズがないよ」と言われたんです。

それくらい、セックスは人生にとって大事なことだからこそ、悩んだら近い友達や家族に相談するという土壌ができているようです。それはとても大切なことだと思っています。

どの家庭も、性生活に対する悩みや不安、疑問に思っていることはあります。だから、話し始めたら気が楽になるし、「うちもだ」ということはあると思うんです。

ひとりでもいいので、共感しあえる人を見つけるだけでもとても安心しますし、セックスに対する視点が変わってくるのではないかと思います。

「夫婦愛」をテーマにした、女性向けプレジャーアイテムブランド「iroha」のポップアップストアが12月25日まで大丸梅田店で開催中
https://iroha-tenga.com/topics/news/2018/2935/