ファイル転送はエンターテインメント!ギガファイル便が新OPENした無料ラウンジが神すぎた - BLOGOS編集部
※この記事は2018年10月19日にBLOGOSで公開されたものです
写真や映像、音楽などの大きなデータの送受信に欠かせないファイル転送サービス。そのなかでも1ファイル100GBまで無料で送受信できる「ギガファイル便」を使ったことのあるユーザーも多いのではないだろうか。だが、日頃からよく使うサービスでありながら運営する会社についてはあまり知られていない。今回、秋葉原にオープンした高速で転送が行えるスペース「ギガスタ」を訪れ、運営の方に話を伺った。【取材:島村優】
ファイル転送を楽しいものにしたい
--いつも、大きなデータを扱うときはギガファイル便を使わせてもらっています。ただ、よく使う割にギガファイル便のことって全然知らないなと思って、お話を聞きに来ました。面白いことをやってるなって印象はあるんですけど。
うん、よくわからないですよね。ただ、面白いことをやってるっていうのはすごく大事で、ギガファイル自体もそれを大事な思想にしています。今回webサービスなのにリアルな店を出すっていうこともそうですね。
根本的な話をすると、ファイル転送って無機質で楽しくないですよね?
--ファイル転送を楽しいか楽しくないかの物差しで考えたことはなかったです。
うんうん。ただ、ファイル転送もエンターテインメントなんだって思わせることが、ギガファイル便の目指すことでもあるんです。
--単なるファイルのやりとりではなく、それ自体がエンターテインメント。
ファイル転送を楽しくやりたいんです。それを貫いていくと、僕らの個性になるのかなと。転送サービスは競合する会社もたくさんあるんですけど、どこもデザインは無駄がないUI、レスポンシブ対応ですごくキレイに見えると思います。でも面白くはないですよね?
--そうですね。転送は面白いっていうか事務的な…
だから、僕らはユーザーにギガファイル便っていうサービス自体を楽しんでもらって、好きになってほしい。ファンを作っていきたいんです。そうすると競合がいてもオンリーワンのポジションを築いていけるかなと。
会社がスタートした時、すでに先行するファイル転送サービスはありました。最初は既存のものよりも良いサービスを作ろうという思いで出発して、少しずつ成長するにつれて、もっと面白いことをやろうという方向に進んでいって。でも社長は最初から「世界観を大事にしたい」って言ってましたね。
高速転送できる無料スペースをオープン
--今回、どうしてギガファイル便が転送スタジオをオープンすることになったんですか?
ユーザーがギガファイル便を使って送るファイルサイズは、年々大きくなってきています。家庭の回線だと帯域制限がかかったり、遅いとアップロードできなかったり、といった声をもらうことも多くなっていたので、そうした人たちが使えるスペースを作ろうかなと。
--秋葉原を選んだ理由はありますか?
理由はいろいろあるんですけど、やるなら直球どまんなかです。で、今回は秋葉原か新宿あたりに新しく作ろうと思って。
それに、やっぱりギガファイル便のユーザーって写真、映像、音楽、あとゲーム関係の人が多いんです。仕事で大きなファイルを扱うので、ギガファイル便を使わざるを得ない人たち。で、そういうジャンルを含めたサブカル好きの人って秋葉原に集まるので、この場所に決めたという理由もあります。
--利用したお客さんの反応はどうですか?
この転送スタジオに来る人は、回線の遅さにストレスを抱えている人がほとんどなので、やっぱり「かなり速い」という感想が多いです。あと「無料で使っていいんですか?」って驚かれる人もいます。
--1GBを30秒でアップロードできるって相当な速さですね。
これは有線並みに高速ですね。わかりやすく言うなら、LAN直結レベル、いやもうインターネットにつながってないレベルの…
--インターネットにつながってない速さ!?
いや、これはよくわからないですね、間違えた(笑)。家にギガファイルがあるくらいの速さだと思ってもらっていいです。
wifi環境は11acという規格でメッシュ化して入れています。通常はwifiの子機が複数あっても、中継機ごとにSSIDが変わって電波が変わってしまいます。でもメッシュ化していると複数台ある中継機が一個のものと認識されるので、端末が優先して早い経路を通してくれて、この通信速度が実現できたんですね。
--すごいですね。
一応、カタログスペックによると同時に100台以上は接続できるということなんですけど、そんなにお客さんが入りません。とにかく、やりすぎなくらいオーバースペックなので速さには自信があります。
1日中ワーキングスペースとして使って良い
--ほかにこだわりポイントはありますか?
喫茶店に入っているようなコーヒーマシンを入れていることですかね。
--一日一杯は無料でコーヒーが飲めるんですね。
一日一杯は無料…と書いてますけど、ぶっちゃけ何杯飲んでもいいですよ。飲み物も食べ物も持ち込みOK。餃子とかカップラーメンとか、あとはニンニク臭が半端ないやつとかは困りますけど、基本的は飲食はご自由にどうぞ。
--高速のwifiが使えて、コーヒーも飲み放題、電源も…使っていいんですよね?
もちろん。
--その上、電源も使い放題って、めちゃくちゃ環境が良いワーキングスペースが無料ってことですよね。至れり尽くせりすぎる。一日中居座っちゃいますよ。
ライターの方もこの間来ていましたけど、居座っちゃっていいですよ。そっちの方が仕事してる感が出ますし。あんまり人がいないと「精神と時の部屋」みたいになっちゃうんで。
あ、あとこだわりでいうと、220インチの4Kモニターもあります。これは社長の趣味で入れたんですけど、例えば今はスマホの画面をwifi経由のAirPlayでつないでます。
--社長の一声で。何かわからないけど、めちゃくちゃ迫力がありますね。
自動で何台も認識してモニターに表示するので、スマホゲームをみんなで一緒にやったり、告知的な使い方をしたりもできますよ。ライブペインティングとかに使っても面白いですね。複数台同時に接続するとパズルみたいに表示されるんです。ちょっとツムツムやってみましょうか。
--これは楽しい!
これは普通の家庭ではできないと思いますよ。ファイル転送に来て、このモニターがあっても正直「ん?」ってなると思うんですけど(笑)。
車で首都高を一晩中走らされる会社
--そもそもの話ですが、ユーザーはなぜギガファイル便を無料で利用できるのでしょうか?
それは、もう頑張りとしか言えないですよね。最初からタダであればライバルが生まれないってのがうちの哲学。変に有料のサービスにすると、もっと安い価格で他社が出てくると思うんですよ。でも、最初から無料で出せば価格はそれ以上下がらない。
ライバルとして参入するにはそれを覚悟してステージに上がらないといけないんです。だから、無料でやることで未来の競合相手の芽を摘んでいると言えるかもしれません。
--ビジネスモデルで言うとメインの収益源は広告なのでしょうか。
ですね。うちの会社はギガファイル便が一番大きなプロジェクトで、そこは広告がメイン。あとは個々人で色々とプロジェクトを進めていて、会社としては受託開発もやっているんですけど。
--ギガファイル便の広告はかなりインパクトがあります。
あれも僕らの世界観を演出するっていう思想に基づいてるんですよ。まず強制的にバン!と見せる。ぶっちゃけウザい広告だと思いますけどね。
--ウザいって言っていいんですか(笑)。
いや、いいんですよ。ウザいでしょう、スペースとりすぎだろうって。でも、使っているうちに段々慣れますよね。
--確かに、段々何も思わなくなりました。
最初は「使いにくい」とか「ジャマ」とか色々言われたんですよ。でも、慣れればこっちのものです。一度見たら忘れられないですから。
ひっそりと運営しているブログとかも同じで、気を使いながら世界観を崩さないようにやってます。結局、人と人とのつながりのサービスだと思ってるので、人が何かを感じられるものが愛着を持ってもらえて、思い出になると思うんです。
--ブログのタイアップ告知の紹介は、一見意味がわからないけど面白いですね。椎名林檎のトリビュートアルバムを紹介した「ここでギガファイルして」というタイトルがじわじわ来ました。
怒られないかなと心配しつつ、楽しみながらやってます(笑)。
--以前やっていた「GIGAFILE TV」はどういう経緯でスタートした企画なのでしょうか?
ギガファイル便の回線が一番使われるのが9時から20時のビジネスアワーで、それ以外の時間は太い回線を遊ばせている状態なので、それはもったいだろうってことで。ストリーミングサービスをやったら面白いんじゃないかっていう話になりました。社長の鶴の一声で。
--これも社長のアイデア。
夜中もコンテンツ流そうぜって盛り上がって、暖炉をずっと映したり、船の映像を流したりするスローTVがいいって話だったのに、「じゃあ面白いから首都高走って来い」って言われて!
--首都高走って来い(笑)。
カメラを載せた車で首都高をずっと走り続けるっていう。ホント、疲れただけですよ!結局GIGAFILE TVで一番ポジティブな意見が多かったのは、うちの水槽をずっと流している映像だったんですけど。癒されるのかな。
「ブラック」だけどフラットな職場
--会社はどんな雰囲気なのでしょうか。
変わったことばっかりやってると思われてますけど、会社の中では…全然喋らないですよ。全員エンジニアで、ごく一部の事務がいるくらいなので黙々と仕事してる感じです。
--全員エンジニアなんですね。
まあエンジニアじゃなくてもプログラムやれという会社なので。未経験で入ってくる人もいるし、経験がある人が中途で入社するパターンもあります。最終的には、やる気重視ですね。
--ブログなどでは「ギガファイル便はブラック企業」って言っていますけど、実はホワイトなんじゃないですか?
いや、うちの会社はブラックですね(キッパリ)。
--そこは譲らない。
ギガファイル便を使う人って、大きなファイルを扱う映像、音楽、広告とかの人が多いじゃないですか。やっぱりそういう業界の人って、ブラックな会社も多いですよね。だから、こっちがホワイトじゃいけないんです。ホワイトじゃいけないって言うか、ブラックですよ(笑)。
--社長の思いつきに振り回されてる感じはしました。
もう無茶振りが多いです。社長は思いついたらやってみようという人なので、周りの社員が振り回されるという。だから自然と社員がブレーキ役になってます。入社して二、三ヶ月も経つと「いや、社長それは全然ダメだと思いますよ」「やめたほうがいいですよ」とかって言ってます(笑)。ホント、そうでもしないと何が起こるかわかんないですからね。
--そういう意味ではフラットな職場なんですね。
確かに、普通の会社とは社長のポジショニングが違うかもしれませんね。社長が社員にめちゃくちゃダメ出しされてますから。より良くするためには意見は言わないと。
--普段のメインの仕事はどういった内容になるんですか?
実はギガファイル便は、プログラマーレベルでやってることはそう多くないんです。細かいところでは、ハードウェアが故障した時に自動で修復するシステムとか、通知を出すシステムを作ろうと動いていますが、大きな修正は少なくなってきていますね。だから基本的には別の業務をしていますかね(笑)。
--サービスを運用する中で、エンジニアの一番の苦労はどんなものですか?
やっぱりハードディスクが壊れることですね。今はクラウドサービスを使っている会社が多く、ハードウェアの経験がない人が増えていますが、ギガファイル便は全部自社で管理しているのでハードウェアの障害が多いですね。年がら年中ハードディスクを交換していますよ。
--障害は結構起こるんですか?
裏では小さなことが起きていますね。最近は会社の規模が大きくなって、抱えているファイルマシンも増えているので、一台こけても影響があまりないんですけど。昔は、ヤバい障害が起きそうになって冷や汗をかく、っていうことも結構ありました。
初期は自社のオフィスビルで、サーバーも全て管理していたんですけど、一年に一度計画停電があったんです。その日は絶対に落ちることがわかってるので、別の拠点に割り振って乗り切るのがすごい大変でした。
--そういう苦労があって、ユーザーがファイルを送ることができるんですね。
ディスク交換とかマシンの入れ替えとか、アップデートのたびにやっているので、すごくしんどいです。なんのエンジニアかわからない。ハードウェアをひたすら組み立てて。
--ありがたいですね。これからは申し訳なさそうに使おうと思います。
そうですね、申し訳なさそうに使ってもらうと嬉しいです(笑)。
申し訳なくというか、わかっている人に大切に使ってほしいという思いはあります。詳しくない人からすると、ファイルがアップされない理由がファイルサイズが大きいからなのか、ネット環境に問題があるのか、意識しない人も多いんです。なので、わかってる人には有難がって丁寧に使ってほしいです。
--無駄にデカいファイルは送らないようにします。
でも、まあ今までどおり使ってもらえばいいですよ。むしろ、もっといろんな人にファイルを送ってくれれば嬉しいですね。
--ユーザーがセキュリティ面で心配するようなことはありませんか?
実際にどんな対策を取っているかはお話しできませんが、いろんな手を打ってかなり気を使ってやっています。なので、普通に使う分にはユーザーが心配するようなことは起こらないので安心してください。
--人には見られたくないファイルをやりとりしても大丈夫ですかね。
違法アップロードとかでなければ、そこは関知しません。他の人には絶対に見られたくないようなものでも、恥ずかしがらずに使っていいですよ。ただURLを知ってると誰でも見れる状態になってしまうので、そこは気をつけてもらって。
--誤送信は大変ですね。
「メールアドレス間違えちゃいました、どうにかなりませんか!」って人はたまにいますけど、こればっかりはどうしようもないですね。1週間、消えるまで待ってくださいとしか言えません。あとは間違えないように注意してもらって。
--今後、会社としてやっていきたいことはありますか?
今回、ギガスタっていうリアルな場を作ったので、リアルとネットを結びつけるサービスをいくつか考えています。ギガファイル便を使ってくれている人が、もっとサービスを好きになってくれて、もっと人に言いたくなるような企画を作りたいなと思ってます。実際に動いているものもあって、年末年始、コミケシーズンくらいまでに何か見せられればと思います。
--本日はどうもありがとうございました。
ギガファイル転送ラウンジ『ギガスタ』
住所:千代田区外神田3-16-13 AKIHABARA KADAN 3F
営業時間:12:30~17:30(予約不要)
料金:無料(コーヒー1杯サービス)