「素晴らしい北海道を体験しに来て」吉田類さん、あふれる“北海道愛”と酒場の流儀を語る - BLOGOS編集部
※この記事は2018年10月17日にBLOGOSで公開されたものです
BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」が多くのファンを持ち、酒飲みであれば知らない人はいない吉田類氏。高知出身で東京を拠点に活躍する酒場詩人だが、北海道とゆかりの深い人物でもある。北海道胆振東部地震から約1か月、札幌市内で吉田氏を取材し「自分にとって特別」だという北海道の話を伺った。【取材:BLOGOS編集部 島村優】
店でまず全員と乾杯する理由
-早くも飲んでいますね。今は何を?
今はね、日本酒。さっきまでこのお店で北海道放送の番組を撮影していたんです。いや僕の仕事はね、有難いことにお酒を飲むことも含まれているんですよ。でもお酒は趣味と実益を兼ねているから、“仕事”って意識がないんだよね。
-なるほど。今回は類さんとも関係の深い北海道の話や、お酒の楽しみ方などをお聞きできればと思います。今日もお客さんと一緒になってお酒を飲んでいましたが、類さんは誰とでもすぐに仲良くなるイメージがあります。
やっぱり酒飲みって、親戚みたいなものです。番組だからみんなと乾杯しているわけじゃなく、昔から僕はそうやってきました。お酒があるとコミュニケーションを取りやすいと思いませんか?会ったその場で、コーヒーで乾杯して打ち解けるってなかなかできないでしょう。
-「酒場放浪記」では、毎回先にお店に来ていたお客さんに挨拶していますが、ああいったことも普段からやって…
周りのお客さんと乾杯するのは、いつもやっています。北海道だったら、札幌の「すすきの」によく行くんですけど、まずはお客さんと乾杯。テレビに出るようになってからは、写真をお願いされたり、握手を求められたりしますけど、自分のスタイルなので変えることはないですね。
-お酒を飲むようになったのは、いつ頃ですか?
お酒との出会いというと、若い頃に行ったヨーロッパです。当時僕はパリで絵を学んだり、周りの国を旅したりしていたんだけど、どんな土地でも毎日食事をしますよね。向こうはワイン文化があるので、食事をするときは必ずワインと一緒に楽しんでたの。
そういう時に、言葉が通じなくたってワインで乾杯できるわけ。僕は元々どんな人とも仲良くなれる性格だったんだけど、お酒って素晴らしいものだなと思うようになりました。今やっているお酒の番組も、そういう生活の延長ですよね。
30年以上前から続く北海道への思い
-もともと北海道との関わりはどのようにスタートしたんですか?
最初は35、6年前かなぁ。僕は若い時から山に登っていて、大雪山とかに来たのが初めだったかも。最初に来た時から、すぐ好きになりましたよ。
-北海道のどういったところに惹かれたんでしょうか。
やっぱり自然の美しさですよ。正直に言うと、僕は北海道が一番美しい場所だと思うの。北海道全体を自然遺産にしていいんですよ。
よく足を運ぶようになってから、北海道にも登山の拠点となる基地や、楽しく飲める店ができた。気がつくとこっちで番組をやるようになって、仕事でもプライベートでも北海道で過ごす時間が長くなっていったんです。
-そうだったんですね。
行きつけの店もたくさんあって、どこか北海道は僕にとって特別な場所なんですね。
「北海道の春から秋が過ごしやすくて好き」と話していたら、こっちの人に「北海道の冬を知らないんじゃないか」と言われたんです。冬を知ってこそ北海道だと。だから、冬にも来るようになりましたよ。
-北海道の冬はやはり想像と違いましたか?
いや全然違うね、自然の強烈さが。最初の冬だったかホテルからコンビニまで行って、帰りに遭難しかけたから!ちょっと買い物に行くつもりで普通の服装でホテルを出たら、コンビニを出る頃にはもう吹雪いてるわけ。
前が何も見えないまま必死で歩いてたんだけど、ひょっとしたらもうこのまま命を落とすんじゃないかと。そういう経験をして、さらに北海道について深く知っていったんです。
今こそ北海道の素晴らしさを体験してほしい
-北海道は面積が広く、地域によって風土や生活も異なりますね。
そう、場所によって違うのも面白い。でもね、どこに行っても自然が豊かで人も大らかなんです。料理やお酒も素晴らしいですよ。食事は十勝なら豚料理、網走ならカニ、とまずは地元の名産を食べるようにしているんですけど、外したことはないですよ。
-それはどうしてですか?
お酒を飲むときは、まずその土地を歩いてから最後に飲みに行くの。いきなり飲みに行くんじゃない。そうすると、その土地の美味しいものがわかって、飲むべきお酒もわかる。地元の人も教えてくれるしね。だから、失敗しないんです。
-北海道でもHBC北海道放送の「吉田類 北海道ぶらり街めぐり」という番組を持っていて、道内のさまざまな地域に行っているそうですね。
この番組で初めて訪れる町もあるけど、発見の連続ですよ。知ってると思っていた場所でも、こんな面白い場所があるんだ、こんな面白い人達がいるんだって。
お酒を飲むだけなら、正直なところ「すすきの」で飲んでいれば事足りると思うんですよ。でも、外に出ればそれだけ北海道の魅力を知ることができる。残る人生、思いっきり動いて、日本は良いところだよ、北海道はとても素晴らしいところだよ、ということをもっと多くの人に伝えていきたいですね。
-9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、胆振地方が大きな被害を受けました。この番組で訪れたことがある地域もあるそうですね。
うん、厚真町にも行ったことがあるんです。今回の地震では…。
…うまく言葉にできないですね。僕もできることをして、応援したいと思っています。
-それこそ、先ほどまで類さんが言っていたように、北海道のいろいろな地域を訪れるだけでも良いですよね。
ぜひ旅して、北海道の素晴らしさを感じてほしいなあ。美味しい料理を食べてね。地元でしか食べられないものも数え切れないほどありますから。こっちでしか飲めないお酒もたくさんあります。
-日本酒なんかもそうですね。
道外にはあまり流通していないけど、良い日本酒がたくさんあります。北海道は米どころで水がうまいため、美味しい道産酒がどんどん出てきているよ。ぜひ北海道で味わってみてほしいですね。
いい酔い方をできるよう心がける
-番組を見て一人飲みが好きになった、という人に会うことがあります。一人飲みを楽しむコツはありますか?
初めてのところでは、まずは挨拶をしましょうよってことかな。やっぱり乾杯なんですよ。これはどこの国でも一緒なんですけど、知らない客が入ってくると常連たちは入口の方をジロッと見るでしょ。
あれは見られた方は緊張するけど、常連たちも別に意地悪な目で見てるわけじゃないんです。そういう時に乾杯すればすぐに仲良くなれますよ。
-お酒を楽しむために気をつけた方がいいことはありますか?
一番は、泥酔するような飲み方はするな、ということ。若い時は、そういう飲み方をしがちなんですけど、酒を飲むならいい酔い方ができるのが前提。スマートな飲み方、酔っても自分を客観的に見られるような飲み方を身につけるべきですね。
まあでも、そういう無茶な飲み方って長く続かないんですよ。年をとると飲めなくなる。僕は半世紀同じ飲み方を続けているので、いい酔い方をしてるのかなって思います。
-ちなみに、普段友達との連絡はどのようにとっていますか?
僕は、今は友達や俳句仲間との連絡はだいたいLINEですよ。
-じゃあ、先日発売された自分のスタンプなんかも使うことがあるんですか?
LINEはずっと使ってるけど、自分のイラストを使ったスタンプを作るという発想はなかったですね。結構、普段から使うようなセリフがあるから、一緒に飲んでるような感じでいいかもね。
-お気に入りのスタンプはどれですか?
この「ナウ~~」っていうスタンプなんかは、飲んでいる時に使いますね。この店にいるよ、飲んでるよ、なんて時に。ぜひ使ってみてください。
-そうですね。今日はありがとうございました。
北海道を楽しんで行ってね。読者の皆さんも北海道で会いましょう。
プロフィール
高知県生まれ。酒場や旅をテーマに執筆。イラストレーター&エッセイスト、俳句愛好会『舟』を主宰。著書に『酒場歳時記』(NHK出版)、『酒場詩人の流儀』『酒は人の上に人を造らず』(共に中公新書)などがある。BS-TBS『吉田類の酒場放浪記』、HBC北海道放送『吉田類北海道ぶらり街めぐり』に出演中。
お知らせ
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HBC北海道放送「吉田類 北海道ぶらり街めぐり」
北海道内ローカル番組ですが、道外の方でもTVerで視聴することができます!
https://tver.jp/feature/f0026401