ロンブー田村淳が語る、常識という「枠」にとらわれない働き方 - BLOGOS編集部PR企画

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※この記事は2018年09月21日にBLOGOSで公開されたものです

ロンドンブーツ1号2号の田村淳さん。今年2月、大学受験に挑んだことが話題を呼び、現在は仕事の傍ら、慶應義塾大学の通信教育過程に通う大学生だ。また昨年はアメリカ・カリフォルニアで起業するなど、異色のキャリアを描いている。彼はどのようにして「枠」にとらわれない働き方を作り上げていったのか?8月30日に行われた就活イベントでは、田村さんが学生たちに自身のキャリア観を語り、「夢をたくさん持ってほしい」とエールを送った。

8月30日午後、虎ノ門ヒルズ(東京都港区)の屋外広場で、人材サービス会社・パーソルキャリアが運営する若者向けキャリア教育支援活動「CAMP」のイベント『CAMP NIGHT 2018~はたらくを楽しむためにいま会いたい7人~』が開かれた。集まったのは、学生135人。ステージ上には、アウトドアチェアやキャンプファイヤーをイメージしたオブジェが置かれ、学生たちは芝生の上に座りながらリラックスしたムードで話に聞き入った。

イベントの第1部では、「大学受験に、起業。枠に囚われない田村 淳の“はたらく”とは?」をテーマに、田村淳さんと、CAMPのキャプテンで、パーソルキャリアの新卒採用部責任者を務める佐藤裕氏が対談を行った。

小学校の卒業文集で書いた夢は『総理大臣』

佐藤:淳さんの小さい頃の夢にはどのようなものがありましたか?

田村淳(以下、淳):小学生のとき、卒業文集で「夢」を書くことになったので、20個ぐらい書いたんです。そしたら学校の先生に「1個に絞りなさい」と言われ、「総理大臣」と書くことになりました。でも、今となっては、総理大臣というのは、その時に本当になりたいと思っていることではなく、その20個の夢をまとめたら総理大臣になっただけだったんですね。本当は、20個それぞれに僕なりの思いがちゃんとありました。そのとき思いましたね。「なんで夢を1個に絞らなきゃいけないんだろう」と。

誰かに「こうしなさい」と言われることに対して、「本当にそうなのかな?」「慣例でいっているだけなんじゃないかな?」と疑う価値観は、小学生の頃から持っていました。

中学生のときも、「廊下を走るな」と学校の先生が言うのを聞いて、「雨の日の部活ではめちゃめちゃ廊下を走らされるのに、矛盾しているな」と思ったんです。正しいのは、「走るな」じゃなくて「時に走っていい」なんじゃないかなと。なので、その1点だけを掲げて、生徒会長に立候補したら当選して。「みんなそう思っていたんだ」と思いました。校長先生が朝礼で「時には走ってもいい」と言ったときは気持ちがよかったですね。

今まで常識だと思っていたことでも、「実はこうなんじゃないの?」と誰かが声を上げた瞬間に「確かにおかしいよね」という流れができていきます。そういった疑問の声を一発目にあげるのは出しづらいけど、僕は気付いたときは言うようにしています。みんなの生きやすい、やりやすいものはやはり自分で切り拓いていくしかないと思っています。

「こうでなきゃいけない」は取っ払う

佐藤:そういった根っこの部分は、今の仕事にも影響していますか。

淳:そうですね。「お笑い芸人はこうでなきゃいけない」とか「テレビに出ている芸能人はこうしなきゃいけない」というのは、極力取っ払いたいと思っています。 「職業は何ですか?」という問いに答えられないとすごく不安がる人も多いかもしれませんが、僕は逆で、自分のことを芸能人とも、お笑い芸人とも思っていません。テレビの仕事もやるし、テレビ以外の仕事もやりますし。

吉本興業に入った当初からも、芸人や芸能人としてひとくくりにされて「変な狭い世界だな」と思っていたんです。ただ、やはりはじめのころは突飛なことをすると、先輩や事務所、テレビ局からも怒られるし、自分の意見はなかなか言えませんでした。ただ、だんだん力を付けて文句を言われない状態になってきたとき「あっ、今だ」と思い、起業したりバンドしたり、人生において小さい頃に掲げた夢を全部やってやろうと思うようになりました。

佐藤:今年2月に挑戦した大学受験もそういった中でのタイミングだったのでしょうか。

淳:青山学院大学の法学部を受験したのですが、「法律は誰のためにあるんだろう、どんな思いで作られているんだろう」と疑問に思ったのがきっかけでした。また、僕は高校しか出てないので、大学に行ったら何を学べるんだろうという好奇心もあって、大学受験をすることにしました。

結局、合格できなかったのですが、不合格になった翌日に他に入れる大学を探したら慶應義塾大学の通信教育過程が見つかったのですぐに動き、受験してみたら拾ってもらうことができました。

ただ、入学してみると、やはり僕みたいにスケジュールが不確定な人間だと単位が取りづらいというのを感じていて。また大学受験するか、違うところで学び直すかというのはいま過渡期で、迷っているところです。

夢はいくつあってもいい

佐藤:淳さんにとって、「働く」を楽しむコツは何でしょうか。

淳:僕のコツがみんなに当てはまるとは、絶対に思わないんです。僕はありがたいことに中学校くらいからやりたいと思っていたテレビに出て表現するということがお金を儲けるためにつながっているから楽しめていますが、趣味と仕事がなかなか一緒になるというのは、現実的にはなかなか難しいと思っています。

でも、楽しむことの一歩は、「夢をたくさんもつこと」なんだと思います。やりたいことをひとつに決められなかった僕が楽になったのが、5年くらい前、植松電機の植松努さんという社長との出会いでした。「淳君、夢はいくらでも持っていい。夢の数だけ、人との出会いがあるから、どんどんやりたいことを口に出して言いなさい。口に出していたらそれにまつわる人が、どんどん来てくれる。道がどんどんひらけるよ」と、彼に教わってから、色んなことをやっている自分を肯定できるようになりました。

やりたいことたくさん持つ。興味があることをたくさん持つ。そうすると、働くときに「この経験って自分がやるときに活かせそうだな」という視点が持てるようになり、どんな仕事も楽しめるようになると思っています。

佐藤:ただ、一方で「なかなか夢が見つからない」と悩む学生も多いのですが、夢を持つ・持たないということについてはどう考えていますか?

淳:夢というと「ひとつの大きな夢に向かっていかなきゃいけない」ってなるから、挫折しちゃうと思っていて。でも、いきなり大きな目標は、見つからないと思うんです。だから、「今、こんなことやりたいな」ぐらいでいい。例えば、「明日カレーがたべたい」というのも夢でいいんです。いろんな道があれば挫折もありません。どの道を選んでどの場所に行っても、“あなたらしく”生きていられたらそれで良いじゃないかって思います。

やれることは「寝るまで」にやる

淳:僕はいつもやりたいことを箇条書きにしています。今もテレビの仕事がなくなったらじゃあ次何しようかということも、常に10個ぐらい書いています。そうしていると、ノートに書いていた言葉が、人との出会いによって、ふとしたときに「あの時ノートに書いたことを実現できそうな人と出会った」とピンとくるんですね。

佐藤:今も書いているんですね。ひとつぐらいまだ出してないけれどやりたいことがあれば教えてください。

淳:今は、割れた器に漆を塗って継ぐ「金継ぎ」をやりたいなと思っています。代官山の蔦谷書店で本を眺めていたら、金継ぎの本がふと目に留まって。読んでみたら「欠けた器を新たな芸術作品として生み出すもの」だという説明を見て、面白そうだったので試しにやってみようと思い、店を出た瞬間にアマゾンで金継ぎセットを注文しました。

佐藤:お店を出た瞬間!たしかに、発想を形にしようとする人は皆さん、淳さんのように電話をしたりアポを取ったり、アマゾンで買ったりとすぐ動く傾向があるかもしれません。

淳:1日置いたりしないですね。すぐ動かないと気がすまないので、やれることは寝るまでにやります。例えば今回でも、「明日になったら金継ぎのテンションが下がってしまうのやだな」と思い、気持ちが熱いうちにすぐ注文しました。

3日くらい前にも、食事をした居酒屋さんの食器が欠けているのを見て、失礼だとは思ったのですが、金継ぎを始めたことを説明して「この欠けている食器を安く譲ってくれませんか?」とお願いしました。快く20個ほど譲ってもらえたので、練習用にいま自宅にストックしていますね。

熱量があると大人たちが動いてくれる瞬間が生まれる

対談の終盤では、淳さんの計らいで急遽、学生からの質問コーナーが設けられ、学生が「田村さんとともにやりたいこと」を書いた手紙を手渡す一幕もあった。

学生:実績を持っていない学生は、大人にやりたいことを話しても相手にされないことが多いと思うのですが、どうすればよいでしょうか。

淳:「はまらない」ときっていうのは熱量が足りてないときだと感じていて。何のスキルももっていないけれど熱量だけで生きている人を何人も見ているから、思いが届かないってときは相手が悪いんじゃなくて自分の熱量が足りないんだなと僕は感じるようにしているかな。

いま、他の学生さんからこの手紙をもらったけれども、僕は相当の熱量を感じたから絶対読むし、絶対返事をしようと思う。これって熱量でしかないじゃない。だから思いが届かなかったときは自分の熱量の問題だと思う。

学生:学生なのでお金などの資本がありません。やりたいことに大人を巻き込むにはどうすればいいでしょうか。

淳:お金に代わるアイデアを持つか、熱量が必要なんじゃないかな。「どれぐらいやりたい思いがあって、それが実現できそうなアイデアを持っているか」ということでしかないと思う。若くして起業している社長を何人か知っているけれど、やはり練りに練ったアイデアが圧倒的に優れているから、そこにお金を出してくれる大人がやってきている。そして、そのアイデアが未熟なアイデアだったとしても、プラス熱量があると、「この人だったらやってくれるだろうな」と、大人たちが動いてくれる瞬間が生まれるんだと思う。だから、動くしかないんだよね。一回の失敗くらいじゃ失敗が足りないと思って、100人に提案してみて断られたときにもう一回、今の質問を聞きたいな。

学生:失敗が怖いのですが、どう乗り越えればいいでしょうか。

淳:何で失敗したのかというのを他の人に言えるくらいの失敗であれば、僕はそこにすでに価値が生まれていると思う。だからどんどん失敗したほうがいい。ただ、失敗したことをノートにまとめておかないと、経験になっていかないから、自分なりの失敗論、データを持つことが大切。それを持っておくと他の人よりリードできる。

僕は今、失敗したいことだらけ。チャレンジしてみて僕の失敗の話を聞いてくれる人がいるんだとしたら、こんなにうれしいことはないから、失敗したことは他の人や友達に話すようにしている。そのとき、友達が聞いたときにちゃんと価値観を見出せるようなプレゼンができているかどうか。ただの失敗で終わりたくないっていう、強い気持ちは大切かなと思う。

佐藤:最後に一言メッセージをお願いします。

淳:今日ここで連絡先を色んな人と交換して、人の輪を広げていって欲しいと思います。出会いをひとつひとつ大切に。皆さんの時代は皆さんしか作ることができません。どうか、大人をうまく使いながら、自分たちの時代を切り拓いていってください。

今考えていることを全て取り払い、まず一歩踏み出してみてほしい

対談後、佐藤氏が活動に込める思いを語った。

佐藤:この活動は2015年にスタートしましたが、最初の3年間は僕が個人で行っていた活動でした。仲間にボランティアで活動を手伝ってもらいながら続けていたところ、海外を含めた色々なところから徐々にオファーが届くようになりました。そして、去年、社長にかけあってみたところ、会社のCSR(社会貢献)活動のひとつになったという経緯があります。

いま、学生さんの中では「働くことを楽しいもの」と思う人は約15%しかいません。働くというのはつまらないものと初めから諦めてしまっていて、それはとても残念なことです。

ただ、淳さんや今日のイベントに参加した社会人たちは働かされているという感覚はなく、むしろ楽しんでいます。

僕は、その秘訣は、“オリジナルを貫く”ことにあると思っています。一歩踏み出したり、失敗したりするとその人ならではのオリジナルが出てきます。だから、学生さんたちには、いま考えていることを全部取っ払って、まず一歩踏み出してほしい。

日本の若者が学生のときに「働くってわくわくするよね」と思えるような社会にすることができたら、この国は本当に変わると思うし、それを実現させるために、今後も活動を続けていきたいと思っています」。

イベント終了後の懇親会では “一歩を踏み出した”学生たちが佐藤さんをあっという間に囲み、たくさんの質問を投げかけていた。

・はたらくを楽しもう。 [CAMP]